風の又三郎(宮沢賢治)のあらすじ

風の又三郎は年に発表された1934年に発表された宮沢賢治の童話です。 なお宮沢賢治の作品はほとんどが作者の死後に発表されたものであり、本作もその一つです。

物語は変わった風貌の三郎が小さな田舎の学校に転校してきた所から始まります。 三郎は変わった風貌と方言から好奇の目で見られ、風の神「風の又三郎」ではないかと生徒たちに噂される話です。

あらすじ

九月一日の朝、教室が一つしかない小さな小学校で二学期が始まりました。 一年生が一番乗りで登校して教室に入ると、教室の中には知らない赤毛の子が自分の席に座っており、びっくりして泣き出してしまいました。

そうしているうちに上級生たちもやってきて、なぜ泣いているのかと聞いても泣くばかりで要領を得ません。 そんな時に教室の中に見知らぬ子がいることに気付きます。 鼠色のだぶだぶの上着、白い半ズボン、赤い革の靴、熟したりんごのような顔、真ん丸で真っ黒な目と変わった風貌をしていました。

「天気の良い日の休み時間は外で遊ばないと先生に怒られるぞ、早く教室から出て来い」と言っても座ったままで、外国からの転校生ではないかと子どもたちはガヤガヤと言い合っていました。

そんな時に強い風が吹いて教室の戸はガタガタと鳴り、見知らぬ子どもは何だかニヤッと笑ったようでした。 「分かった、あいつは風の又三郎だ」と子どもたちは噂し、彼を好奇の目で見るのでした。

やがて先生がやってきて転校生の高田三郎だと紹介すると「やっぱり又三郎だ」と上級生は笑いましたが、下級生は怖いものを見るようにしんとしていました。 三郎は父の会社の都合で北海道から転校してきたそうです。

次の日の朝、三郎は生徒に「おはよう」と挨拶するも、生徒は友人同士で挨拶する習慣がなかったので気遅れして上手く答えられませんでした。 三郎は皆と一緒に遊びたい様子でしたが、皆は遠巻きに観察するばかりで三郎の方へ行くものはいません。 やがて三郎は困ったように歩き出し、その時勢いよく風が吹きます。生徒たちは「あいつが何かすると風が吹く、やっぱりあいつは又三郎だ」なんて話していました。

やがて授業が始まりましたが、ペンを忘れた佐太郎が妹のペンを取り上げる事件が起こります。 やがて妹がぼろぼろ涙をこぼし始めましたが、三郎が佐太郎にペンを差し出すことで事なきを得ました。 これを後ろで見ていた六年生の一郎は、何とも言えない気持ちになります。

その後先生が「本の分からない字をノートに書くように」と指示を出しましたが、三郎は一つも字を書いていませんでした。 本当に分からない字がないのか、それともペンをやってしまったため書けないのかは分かりません。 後の授業で再び三郎を見ると、小さな消し炭でガリガリとノートを取っていました。

次の日の朝、一郎は喜助、佐太郎、悦治と一緒に三郎と遊ぶことになりました。 一郎の家の近くの野原へ行くと、一郎の兄がいて「迷って危ないから土手の外には出るな」と忠告されます。

一行は一郎の家の馬たちと遊んでいましたが、二匹の馬が土手の外に逃げ出してしまい、皆は一生懸命馬を追います。 一匹は一郎が素早く捕まえましたが、もう一匹の馬を追いかけていた三郎と喜助は中々追いつけません。 さらに三郎と喜助も離れ離れになってしまい、喜助は自分が迷ってしまったことに気付きます。

喜助は彷徨いながら帰り道を探していましたが一向に知っている場所に出ることができず、やがて天気も悪くなってきて空は曇り非常に強い風が吹いてきました。 やがて疲労困憊した喜助は草の中に倒れて眠ってしまいました。

喜助は夢を見ました。 又三郎がいつもの服の上にガラスのマントを着てガラスの靴を履き、風がどんどん強くなって又三郎は空へと飛びあがっていきました。

ふと喜助が目を覚ますと、目の前に逃げた馬が立っていました。 そして後ろから三郎も出てきて、探しに来た一郎の兄によって二人は助けられました。 三郎と別れた後に喜助は「あいつはやっぱり風の神の子だぞ」と言いますが、クラスメート達はそれはないよと笑い飛ばします。

三郎とクラスメートたちはそれからも毎日仲良く遊んでいました。 ある日鬼ごっこをしていると、天気が崩れて空一杯の黒雲となり、野原の辺りでは雷が鳴っていました。 夕立ちに風まで吹いてきて、木の下に避難すると誰ともなく「雨はざっこざっこ雨三郎、風はどっこどっこ又三郎」と叫びます。 遠くにいた三郎もやってきて「いま叫んだのはおまえらかい」と聞きますが、一行は違う違うと一緒に叫びました。 やがて雨が上がるとめいめい家へと帰っていきました。

どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう
どっどど どどうど どどうど どどう

その夜、一郎は夢の中で三郎から聞いた歌を聞きます。 びっくりしてはね起きると、外は本当にひどい風が吹いていました。 一郎は又三郎が飛んでいったのかもしれないと思い、大雨の中を喜助を誘っていつもよりも早くに学校へと向かいます。

先生に「又三郎は今日来るのか」と尋ねると、家の急な都合で昨日引っ越していったこと、日曜なので挨拶する暇がなかった事を聞かされます。

「そうだな。やっぱりあいつは風の又三郎だったな。」嘉助が高く叫びました。 二人はしばらく黙ったまま、相手がどう思っているか探るように顔を見合わせました。 風はまだ止まず、窓ガラスは雨つぶに曇りながら、またガタガタ鳴りました。

感想

風の又三郎は9月1日から12日までの話であり、三郎がいたのはほんの10日ほどのことでした。 内容は基本的にほんわかした日常が淡々と進むだけですが、この不思議な体験を生徒たちがどのように捉えたのかは気になりますね。

この物語で一番気になるのは、やはり又三郎の正体でしょうか。 物語を読む限りでは人間だったとも風神だったとも取れ、もやもやしたまま終わったようにも思えます。

しかし閉鎖的な田舎にふと現れた異質な存在という意味では、三郎は紛れもなく風の又三郎だったのだと思います。 それは正体がどちらであっても変わらないことでしょう。

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