注文の多い料理店(宮沢賢治)のあらすじ
注文の多い料理店は1924年に発表された宮沢賢治の児童文学集にある短編です。 宮沢賢治の著書はその多くが死後に発表されたものですが、本作は唯一生前に出版されたものになります。 代表作のひとつに数えられ、絵本、演劇、映画化などもされています。
山中で迷った紳士たちが偶然レストランを見つけ、入ってみると扉に「当軒は注文の多い料理店です」と書かれていました。 紳士たちはこんな山奥でも流行っているのだなと期待して進みますが…
道に迷った紳士たち
二人の太った紳士は大きな二匹の猟犬と道案内の猟師を伴って山奥へ狩りに来ていました。 しかし道に迷って猟師とはぐれ、そのうえ二匹の犬は泡を吹いて死んでしまいます。二人は「あの犬は高かったのに大損害だ」と愚痴をこぼします。
狩りはできませんでしたが、二人はお腹が空いたので帰ることにします。 ここがどこか分からないけどあまり歩きたくないなと言っていると、ふと後ろに立派なレストラン「山猫軒」があることに気付きました。
扉には「どなたでも遠慮なくお入りください」と張り紙がしてあるので、二人は遠慮なく入ることにしました。
レストラン山猫軒
山猫軒の中に入ると「特に肥えた人は大歓迎です」と書かれた扉があり、太った二人は歓迎されていることに気を良くします。
奥の部屋へ行くと「当軒は注文の多い料理店です」と書かれた扉があり、二人は「こんな山奥でも流行っているのだな、さぞ美味しい店に違いない」と期待して奥へと進みます。
すると「髪を整えて靴の泥を落としてください」と書かれた扉があり、なるほどもっともだと指示通りにして奥へ進みました。
今度は「鉄砲と弾丸をここへ置いてください」と書かれた扉があり、銃を持って食事をする道理はないなと指示に従いました。
その先も「帽子と外套と靴を脱いでください」「金物類は置いてください」「壺のクリームを顔や手足に塗ってください」と指示の書かれた扉が続きました。 二人は「作法の厳しい料理店だな」と指示に従いながら、奥へ奥へと進んでいきます。
注文の多い料理店
そうして進んだ先の扉には「いろいろ注文が多くて失礼しました。これで最後なので体中に壺の中の塩をよくもみ込んでください」と書いてありました。 二人はこれを見て流石に立ち止まります。
レストランの言う「注文」は、今まで向こうが指示してきた事を指しています。 この店は客に食べ物を出す店ではなく、客を食べ物にしている店だったのです!
騙された事に気付いて逃げようとしましたが、元来た扉は開かず、先の扉の鍵穴からは化物の青い目玉が覗いています。 化物は「早くこっちに来い」と催促し、二人は恐怖で泣きわめいて顔がくしゃくしゃになりました。
二人が動けないでいると、なんと死んだはずの猟犬が扉を破って入ってきました。 犬は奥の扉の化物へと襲い掛かり、ネコの断末魔が上がります。
気が付くとレストランは消え、二人は裸で草むらの中に立っていました。 やがて道案内の猟師も戻ってきて、二人はようやく安心しました。
しかし家に帰って暖かい風呂に入っても、恐怖でくしゃくしゃになった顔は元には戻りませんでした。
感想
物語において二人の紳士は傲慢で嫌な奴に描かれています。 愚痴ばかり吐いているし、成金のようなセリフが目立つし、死んだ犬やはぐれた猟師を気に掛けない薄情者です。
そんな二人はレストラン山猫軒へと入りますが、その傲慢さ故に事態の異常に気付けません。 そうして最後の扉の前まで来た所でやっと過ちに気付いて怯えているところを、どこからともなく現れた猟犬に助けられました。
死んだと思った猟犬とはぐれた猟師は無事で、悪者のネコは退治され、紳士たちは命は助かりましたが顔がくしゃくしゃになりました。 勧善懲悪物語として分かりすいので、子どもの読み物におススメです。
なお冒頭で泡を吹いて死んだはずの猟犬が再登場したのは作中では明かされない謎です。 ヤマネコが幻覚を見せる能力を持っていて、犬が死んだのも幻覚だったと考えるのが自然でしょうか。