羅生門(芥川龍之介)のあらすじ

羅生門

羅生門は芥川龍之介の短編小説で、平安京の正門である羅城門を舞台とした物語です。 今昔物語集にある「羅城門の上層に登り死人を見たる盗人の語」を芥川の時代風にアレンジした作品と言えます。

仕事をクビになって羅生門の下で雨宿りをしていた下人が、老婆との出会いを通して心境が映り替わっていく、人間のエゴをテーマに描かれた作品です。

羅生門にて

京都は度重なる災害に襲われて洛中ですら荒れ果て、羅生門に至っては死体を捨てる習慣すらできました。 だから日が落ちると人々は気味悪がって門には近寄りません。

そんな羅生門で一人の下人が顔のニキビを気にしながら雨宿りをしています。 下人は主人に暇を出されて行く当てもなく途方に暮れており、生きていくには盗人になるしかないと考えながらも踏ん切りが付かないでいます。

とりあえずは寝る場所を探すため門の楼に上がった所、誰かが火を灯していることに気付きました。 雨の日のこんな場所にいるのはただものではないだろうと恐る恐る覗いてみると、そこにはいくつかの死体と痩せた老婆がいました。

下人と老婆

老婆は死体の毛を抜いているようで、許されないことをしていると思った下人には悪を憎む気持ちが沸き上がってきました。 先ほど盗人になるかどうか考えていた事など忘れ、太刀に手をかけながら老婆に歩み寄ります。

下人は逃げようとした老婆を取り押さえ、なぜ死体の毛を抜いていたのかを問い詰めます。 すると老婆は「かつらにしようとしていた」と答え、下人は存外平凡な答えに失望するとともに心に憎悪と侮蔑が沸き上がりました。

老婆は「この死体はろくな人間じゃなかったし、ワシはこうしなければ死ぬしかない。死体たちも大目に見てくれるはずだ」と弁明しました。 下人はニキビを弄りながら聞いていましたが、そうするうちに門の下にいた時には欠けていた勇気が沸き上がってきました。

老婆の話が終わると下人はニキビから手を離し「では俺が引剥ぎをしても恨むまいな。俺もそうしなければ餓死してしまうのだ」と言い放つと、老婆の着物をはぎ取って夜の闇へと消えていきました。 下人の行方は誰も知りません。

感想

人間のエゴがよく描かれた作品だと思います。

下人は悪たる老婆の前に正義の化身として現れるも、聞いてみると老婆の行動はただ生きるためのものでしかありませんでした。 二人の関係は正義と悪ではなくエゴとエゴだと気付いた下人は、己のエゴに従い生きるための選択をします。

下人のこの選択が正しいのかはさておき、生きるという事に善悪はなく全て個人のエゴに過ぎないではないのかと考えさせられる作品です。

この作品では下人の若さ・青さの象徴としてニキビが描かれています。 ニキビの描写を見ると下人の心境の変化が捉えやすいでしょう。

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