蜘蛛の糸(芥川龍之介)-あらすじと感想

the-spiders-thread

蜘蛛の糸は1918年に発表された芥川龍之介の短編小説です。 地獄に落ちた悪党のカンダタに、お釈迦様が蜘蛛の糸を垂らして地獄から抜け出すチャンスを与える物語です。

この物語はポール・ケーラスの「Karma: A Story of Early Buddhism」を基に書かれています。 Karmaの中では僧侶が罪人に対して説法する中で蜘蛛の糸の話があり、大筋は同じですがテーマや仏教観には違いがあります。 読み比べてみるのも面白いかもしれませんね。

あらすじ

お釈迦様が極楽から下を眺めてみると、地獄の底にカンダタという男が他の罪人と一緒に蠢いているのが目につきました。

カンダタは色々な悪事を働いた悪人ですが、たった一つ善い事をした覚えがありました。 道を這う小さな蜘蛛を見つけた際に踏み潰そうと思ったものの、「小さな蜘蛛にも命があり無闇に殺すのはかわいそうだ」と見逃したことがあったのです。

お釈迦様はカンダタが蜘蛛を助けた事を思い出すと、その報いとしてカンダタを地獄から救ってやろうと思い、極楽の蜘蛛から出ている糸を手に取り地獄の底へと降ろしました。

地獄の底でカンダタは地獄の責め苦に疲れ果てもがいていました。 そんなカンダタが何気なく顔を上げると、一条の蜘蛛の糸が垂れてくるではありませんか。

この糸を登っていけば地獄から抜け出せると考えたカンダタは糸を掴んで登り始めます。 しかし地獄から極楽への道のりは遠く、やがて疲れて一休みすることにしたカンダタはふと下を見ました。

すると下の方から数多の罪人たちが蜘蛛の糸を登って来ているではないですか。 カンダタは蜘蛛の糸がこんなに沢山の人々を支えられる訳がないと考え「この糸は俺のものだ!お前たちは下りろ!」と叫びます。 その途端に糸はカンダタの辺りからプツリと切れ、カンダタは真っ逆さまに地獄へと落ちていきました。

自分ばかりが助かろうとする無慈悲な心が相応の罰を受け、カンダタは元いた地獄へと落とされたのです。 一部始終を見ていたお釈迦様は悲しそうな顔をしながら、またぶらぶらと歩きはじめました。

感想

シンプルで短い内容ながら、色々と考えさせられる話です。

お釈迦様は紛れもなく悪人であるカンダタを救うために蜘蛛の糸を垂らしました。 蜘蛛を助けたぐらいでそんなチャンスを与えるなんてと捉える事もできますが、そんな甘い話ではありませんでしたね。 結局カンダタは元いた地獄に落ちてしまいます。

お釈迦様ならカンダタをもっと確実に助けることができたはずですが、か細い蜘蛛の糸のようなチャンスしか与えなかったのです。 しかしカンダタが蜘蛛の糸を登ってこれるような人間だったのであれば、そもそも地獄には落ちていないはずです。

最後にお釈迦様が悲しそうな顔をしたのも、カンダタの失敗を見て哀れんだというよりは、地獄の罪人が天国に上がってこれないことを再認識した哀しみなのかもしれませんね。 もし個人の問題だったのであれば、他の罪人にもチャンスを与えて然るべきだと思いますし。

カンダタは一体どうすれば天国へと辿り着くことができたのでしょうか? 他人を蹴落とそうとしたのは間違いだったようですが、あのまま見過ごしていても危惧した通り蜘蛛の糸は切れていたと思います。 お釈迦様が垂らしたものはまさしく蜘蛛の糸でしかなかった訳です。

この話は短いながらも示唆に富んでおり読み手によって感じる事も違うようです。 何か感じ入ることがあったなら、ぜひ原文に当たって頂ければと思います。

\share/

よく読まれている記事