葛飾北斎はペンネームのひとつで、生涯で30回以上変えている

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葛飾北斎は江戸時代の代表的な浮世絵師です。代表作の「富嶽三十六景」は日本で生活していれば美術に興味がなくともどこかで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

日本史の教科書にも載るほどで、アメリカの雑誌ライフの企画「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」においては日本人で唯一ランクインしたほどの人物です。

そんな葛飾北斎ですが、実はその名前は本名ではありません。 45歳から5年ほど使っていた号(ペンネームみたいなもの)であり、しかも北斎はこの号を生涯で30回以上変えているのです。

葛飾北斎の生涯と改号

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北斎は1760年に百姓の子・川村時太郎として生を受けました。 紆余曲折を経て18歳で浮世絵師・勝川春章の弟子となり画法を学び、翌年には初作品の「正宗娘おれん 瀬川菊之丞」を描きます。

この頃は師・春章とその号の旭朗井から一文字ずつ貰った「春朗」を号として使っていました。 改号多き北斎の記念すべき初めての号ですね。

しばらくの間は「春朗」として活動していた北斎ですが、34歳の頃に勝川派から破門されます。 理由は兄弟子との不仲とも師に隠れて他流派の技法を学んだためとも言われています。

その翌年、北斎は号を「北斎宗理」と改めます。 春朗は師から貰ったと言える号なので、破門されて変えるのはまあ分かります。 しかしここからの北斎は数年ごとに号を改め、どんどん名前が変わっていったのです。

有名な号「葛飾北斎」を使っていたのも1805~1810年の5年間だけです。 ちなみに代表作「富嶽三十六景」を手掛け始めたのは1820年の頃で、その頃の号は「為一」でした。 葛飾北斎としての作品じゃなかったんですね。

それでなぜ後世には「葛飾北斎」の名が残ったのかと言えば、北斎以降の号を使う際に「北斎改め○○」といった感じで元北斎として使われたためと言われています。 周りもコロコロ変わる号をいちいち覚えずに北斎の方で覚えていたのではないでしょうか。

その生涯で使った号は「春朗」「群馬亭」「北斎」「宗理」「可侯」「辰斎」「辰政」「百琳」「雷斗」「戴斗」「不染居」「錦袋舎」「為一」「画狂人」「九々蜃」「雷辰」「画狂老人」「天狗堂熱鉄」「鏡裏庵梅年」「月痴老人」「卍」「是和斎」「三浦屋八右衛門」「百姓八右衛門」「土持仁三郎」「魚仏」「穿山甲」などで、これらを単独または組み合わせて使っていました。いくつかとんでもないのが混じってますね。

引っ越し多き北斎

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北斎はその生涯において90回以上もの引っ越しをしたことでも有名です。 酷い時には1日に3回も引っ越しをしたようで、それ引っ越した意味あるのかって言いたくなりますよね。 住んでみたら気に入らないことに気付いたんでしょうか。

北斎はどうやら片付けが苦手だったようで、絵を描くごとに部屋が荒れ、その度に引っ越しして一新していたようです。 「引っ越しするぐらいなら片付けろよ」と現代の感覚では思いますが、どうやら当時は面倒なく散らかったまま家を出られたようで、ある意味で合理的だったのかもしれません。 北斎はその生涯において三万点もの作品を遺しましたが、彼が部屋が散らかる度に掃除するマメな人間であれば一万点ぐらいはなかった可能性だってあります。

また俳人・寺町百庵の影響を受けていた説もあります。 百庵は生涯で100回引っ越すことを目標にしており、北斎よりも短い生涯ながら100回の引っ越しを見事達成したようです。 私の感覚からすると割とどうでも良い話に聞こえますが、北斎は何か感じ入ることがあったんですかね?

そんな北斎が100回を目前にして引っ越しを辞めたのは、93回目の引っ越しが原因です。 その引っ越しにて回りまわって自分が元いた借家に戻ってきたのですが、家の中は自分が出ていった時そのままの荒れ放題のゴミ屋敷でした。

その有様を見た北斎は改心…したのかはよく分かりませんが、それを境に引っ越し生活を終えます。 ただちゃんと片付けるようになった訳ではなく、ゴミ屋敷に住み続けるようになっただけの疑いが強いです。

北斎はよく言えば芸術家肌、悪く言えば奇人としても有名です。 絵を描くことにのみ没頭し、ゴミ屋敷に住み、生活能力は低く、周囲とのトラブルも絶えませんでした。 画家としてはそれなりに成功していましたが、それらが災いして生涯を貧乏のまま過ごしたようです。

絵描きとしても自分では納得できなかったようで、臨終の際に「あと10年、いやあと5年生き永らえることができれば本当の画家になれたのに」と言っています。 しかしそんな彼だからこそ、常に進化を続けて後世に評価される作品を遺せたのでしょう。

北斎はその生涯を90歳にて終えています。 十分長生きなようにも思えますが、あと5年生きたら一体どんな作品を描いていたでしょうか。

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