ベートーヴェンの肖像画が怖い顔なのは朝飯が不味かったから

beethoven

ベートーヴェンは歴史に名を遺した偉大な音楽家です。 特に後年は聴覚障害を患ったにもかかわらず交響曲第9番やミサ・ソレムニスなどの大作を書き上げており、その才覚には驚かされるばかりです。

そんなベートーヴェン、音楽室に肖像画が飾られていますが睨みつけるような顔をしています。 その顔はとても怖く「深夜に見ると目が動く」なんて怪談話の題材にされることもしょっちゅうです。

この肖像画は50歳の時のものですが、40歳の頃には全聾となって他人とのコミュニケーションが上手く取れずに気難しくなったとは聞きます。 だからこのような鋭い視線を送ったのでしょうか? いいえ違います、こんなに不機嫌そうなのは朝飯が不味かったからなのです。

ベートーヴェンの肖像画が不機嫌なのは朝飯が不味かったから

Macaroni cheese

ベートーヴェンは高名な音楽家でウィーンの誰もが彼の音楽を愛していましたが、同時に気難しく変わり者の癇癪持ちとしても有名でした。 周囲に対して物を投げたり当たり散らしたりするのが日常茶飯事であり、ベートーヴェンと付き合えるのは忍耐強い人間だけでした。

部屋を片付けられない、代表作であるミサ・ソレムニスの楽譜が鍋敷きになっていた、近所の人に笑われたから引っ越す(生涯で70回以上の引っ越し)、服に無頓着で浮浪者と間違われて捕まったなど、まあこの類のエピソードに事欠かない人と成りでした。「彼の音楽は凄いけど、彼の人柄はちょっと…」といった感じです。

そんなベートーヴェンが50歳の頃のある日、肖像画を描いてもらう約束がありました。 その朝食にベートーヴェンの大好物である「マカロニチーズ」が出てきましたが、この出来が酷いものでした。 作った家政婦に当り散らしても機嫌は直らず、肖像画を描きに来た画家・フェルナンド・ヴァルトミューラーにも当たり散らします。 当然、肖像画を書いてもらっている間もずっと不機嫌でした。

そんな理由で50歳のベートーヴェンの肖像画はとても不機嫌なのです。 ベートーヴェンの肖像画は何枚もあるのに、最も目つきの悪いものが最も有名になるとは世の中分からないものです。

ちなみにこの話はベートーヴェンの弟子であるのシントラーの記録によるものです。 こんなベートーヴェンの弟子を続けることが出来た人物ですから、もしかしたら彼なりのフォローが入っているかもしれませんね。 いや、フォローするにしても「マカロニチーズが不味かった」は無いかな…

ちなみにシントラーの書いたベートーヴェンの伝記は「自分の都合の良いように改ざんしている」とあまり評判は良くありません。

ベートーヴェンの波乱に満ちた人生

beethoven

ベートーヴェンは芸術家肌の変人みたいなことを書きましたが、この性格は生来のものではないかもしれません。 家庭内のゴタゴタと鉛中毒でこのような人格になってしまった可能性があるのです。

ベートーヴェンは幼少の頃から音楽家として順調にキャリアを積み、20代の終わり頃までは順風満帆な音楽家生活を送っていました。 しかしその一方で家庭の事情はあまり恵まれたものではありませんでした。

ベートーヴェンの一族は音楽家の家系であり、父もまた歌手として宮廷に勤めていました。 しかし音楽家としては大成できず、酒が好きだったのかはたまた酒に逃げたのか、酷い飲んだくれでした。

そんな父はベートーヴェンに音楽の教育を施し、モーツァルトのような天才子供音楽家として売り出して収入の足しにしようとしました。 その教育は厳しく苛烈で、あまりの厳しさにベートーヴェンは音楽に対してやりきれない思いを抱くことになります。

幸いベートーヴェンは音楽家としての才能には恵まれており、13歳の頃にはお金を稼げるようになりました。 しかし16歳の時に母が死に、父はアルコール依存症になって失職するなど家庭の事情はますます混迷していきます。 ベートーヴェンは父に代わって一家の大黒柱となって2人の弟の面倒を見なければなりませんでしたが、弟達もあまり良い人物とは言えなかったようです。

順調なように見える音楽家としても行き詰まりもあり、一度は遺書を書いたことすらありました。 また30歳頃から患った耳の病は、彼の音楽家生活への多大なストレスとなったことは疑いようがありません。 耳が聞こえなくなってからはピアノに齧りついて振動で確認しながら作曲を行うなど執念でハンデを乗り越えますが、並々ならぬ努力の賜物でしょう。

更にベートーヴェンは鉛中毒に悩まされていました。 当時は鉛中毒に関する認識が恐らくなかったので原因不明だったのでしょうが、近年のベートーヴェンの毛髪鑑定では通常の100倍もの鉛が検出されています。

鉛は率直に言って毒であり、様々な健康被害をもたらします。 ベートーヴェンは聴覚障害、精神疾患、腹痛や下痢、内蔵がボロボロだったなど様々な症状が出ていましたが、これらは全て鉛中毒で説明できます。

鉛を摂取した経緯は当時の甘味料に使われていた「酢酸鉛」のせいだとか、医療行為による影響だとか言われますが確かなことは分かりません。 しかし鉛は確実にベートーヴェンを蝕んでいたことでしょう。

もしかしたらこれらの事情が彼を気難しい性格にしてしまったのかもしれませんね。 偉大な音楽家ベートーヴェンは生前から偉大な音楽家として支持され歴史に名を残しましたが、その人生は波乱の連続であり、幸せな生涯とは言えないかもしれません。

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