蟹工船(小林多喜二)のあらすじ

The Crab Cannery Ship Author

蟹工船は1929年に発表された小林多喜二の小説です。 過酷な労働やリンチ殺人による死者を出した博愛丸事件を元にしたフィクションで、資本家に搾取される様を生々しく描いたプロレタリア文学作品の代表作です。

北海道や東北の寒村から仕事を求め、冬の遠洋で蟹漁をする蟹工船へと人々が集まって来ます。 しかし蟹工船は劣悪な環境で、乗組員は非人間的な扱いを受けるのでした。

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  1. あらすじ
  2. 感想

あらすじ

遠洋へと向かう蟹工船

冬の遠洋で四か月の蟹漁をするため、博光丸へ労働者が集められていました。 その多くは北海道や東北の貧しい村から出稼ぎにきた人々であり、金を求めて船へとやってきました。

出港して遠洋へとたどり着いた船の労働者たちは非人間的な労働を強いられました。 休日もなく早朝から夜まで働かされて、風邪や怪我をしても容赦なく労働を強いられます。

この船は会社のもので労働者を法外に働かせて利益を搾り取ろうとしており、その監督として浅川が派遣されていました。 浅川は近くでSOSを出していた船を「保険をかけているから沈めた方が儲かる」と見捨て、乗務員425人を見殺しにする非常な男でした。

難破したロシアでの体験

ある日、博光丸に備え付けられている小型漁船で作業を行っていた一行が悪天候により遭難し、乗員はロシアの岸に打ち上げられました。 刑務所に収容されるのかと思いきや、そこでは意外にも手厚いもてなしを受けます。

一行は二日間そこで休んで体を治し、それから本船へと帰ることにしました。 その帰り際、ロシア人たちに興味深い話を聞きます。

「労働者が貧乏で苦しいのは、資本家たちが労働者を苦しめて私腹をこやすからだ。 しかし労働者同士で団結して抵抗すれば偉い人にも負けない。」

乗組員はこれが「恐ろしい」「赤化」ではないだろうかと考えましたが、一方で「当り前」のことであるような気もしました。 乗組員たちはこの話に感銘を受けながら、博光丸へと帰ってくるのでした。

団結する労働者たち

蟹工船での労働は日々過酷さを増し、食事に睡眠や風呂の時間まで削られて働かされます。 そしてついには死者が出ますが、浅川は碌に弔いもせずに死体を海へ投げ捨ててしまいました。

乗組員たちはこのままでは殺されてしまう、俺たちは立ち上がるしかない考えます。 そして九人が代表となってストライキを起こしました。

事態を収拾できなかった浅川は密かに海軍の出動を要請し、海軍によってストライキは鎮圧され、中心人物だった九人が逮捕されて失敗に終わります。 そして浅川はストライキの復讐とばかりに更に過酷な労働を強いるようになりました。

労働者たちは最初に海軍を見た時はてっきり浅川たちを何とかしに来たのかと思いましたが、しかし結局は国も資本家の味方でした。 ストライキは失敗しましたが、それによって本当の敵が誰かを皆が知り、労働者同士の団結はより一層高まりました。

俺たちには俺たちしか味方がいない。誰かが中心になるのではなく、全員でやらなければならならない。 そして彼らはもう一度立ち上がりました。

感想

低賃金で過酷な環境に置かれて誰も助けてはくれない。そんな労働者の悲哀が生々しく描かれたプロレタリア文学です。 しかし悲惨なままで終わるのではなく、最後は皆が団結して己の力で立ち上がったことに希望も見えます。

昭和初期に発表された作品で別の国の話かとも思えるような過酷な労働ですが、今日においても似たような話はそこかしこに転がっています。 近年では「ブラック企業」なんて言葉が定着し、蟹工船から100年近く経った現代においても未だ根絶できてはいません。

現代においても労働者を助けてくれる都合の良い存在がいないのは変わりません。 皆さんも社会でこのような酷い目に逢った場合、最も信頼できるのは会社でも上司でも労基でもなく、労働者同士の横の連帯であることは覚えておきましょう。

小林多喜二の作品は権力者を糾弾する作風のものが多く、共産党員として活動していたこともあって警察に目を付けられていました。 蟹工船の出版に際しても不敬罪で起訴されています。

多喜二は一連の活動によって勤めていた拓銀を解雇され、最期は警察に激しい拷問を受けて殺されました。 恐らくは自身も身の危険を感じていたのでしょうが、それでも労働者の自由と権利のために活動を止めなかったのです。

蟹工船はそんな小林多喜二の代表作です。 この本を通して彼の精神に触れてみてはいかがでしょうか。

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