最大の核保有国アメリカが核兵器を根絶したい理由
大量破壊兵器である核ミサイル。 日本は唯一の被爆国であり、その犠牲は何十万人にも及びました。
半世紀以上前の核兵器ですら甚大な被害を出せるものでしたが、今日の核はその殺傷能力を更に大きく上げています。 また現存する核の数も膨大な数に上り、人類が保有する核で自身を何度も滅亡させることができると言われるほどです。
最大の核保有国の1つであるアメリカは、同時に核軍縮・核不拡散を主導する国でもあります。 この一見矛盾した行動は、アメリカの心情を素直に表していると見ることもできるのです。
核兵器の効果
核兵器を保有しているのは2009年のデータでは8か国、怪しいのを入れると9か国です。 中でも保有数はアメリカとロシアが圧倒的で、その2国が世界の95%の核兵器を所持しています。
しかしそんなアメリカは核軍縮・核不拡散を主導する国家でもあります。 「ただのパフォーマンスだ」と見ることもできるのですが、少し考えてみてください。 仮にこの世から核を根絶できるのならば、アメリカにとってそれは国益にかなうことなのです。
仮に「核兵器をこの世から根絶できるボタン」があるとすれば、どの国がこれを押したいと思うでしょうか? まず核武装していない大抵の国は無条件に押したいですね。 それでは残りの核保有国はどう思うかの前に、なぜ核を作るのかを考えてみましょう。
核を使用した時には人類に甚大な被害をもたらし、報復の連鎖が始まれば人類滅亡まであり得るというのは常識であるかと思います。 それにもかかわらず、核保有国が核開発を進めるのはなぜでしょう?
核開発を進める理由の一つは、特定の国のみが突出した核技術を持った場合、抑えが効かなくなる恐れがあるからです。 核から身を守るために核技術開発が必要とは何とも皮肉な話ですよね。
そしてもう一つの理由は「核兵器を軍事力として見た時の費用対効果が非常に高い」からです。 例えば核開発でおなじみの北朝鮮を見てみましょう。 北朝鮮が韓国・日本・中国・ロシアなど周辺国のいずれかと戦争になった場合、まともにぶつかれば軍事力・技術力・国力の差で北朝鮮が負けます。しかし核兵器の使用を視野に入れた場合、一気に勝負は分からなくなります。特に核を持たず領土の狭い韓国・日本は一方的に負ける可能性すらあります。
核兵器とは軍事力に劣る国が格上の国に対して逆転を狙える兵器なのです。 もちろん軽々しく使えるものではありませんが、保有しているだけで軍事力評価が跳ね上がります。 北朝鮮なんて核さえ持っていなければ軍事的に大した国ではありません。しかし核を使用してきた場合、どう転ぶかは全く予測できないものとなります。
核は核から身を守るのと、格上の軍事国家に対して必要です。 そう考えると、超大国からしてみれば核なんてないほうが良い場合が多いことになります。 それこそがアメリカが核兵器を根絶したい理由なのです。
アメリカが核兵器を根絶したい理由
アメリカは世界最強の軍事国家であり、2位のロシアと比べてすらダントツの軍事力を持ちます。 アメリカが他国と正面からぶつかった場合、相手がどこの国だろうが10倍以上の損害を与えることができると言われているほどです。
核兵器がなければどこと戦争しても圧倒的な軍事力差でアメリカが勝ちます。 しかし核戦争になった場合はどう転ぶか分かりません。 核で軍隊が消滅したり、自国に核が落ちてきたり、最悪人類ごと滅亡してしまうかもしれません。
だからアメリカvs世界なんてことにでもならない限りは、アメリカは核兵器なんてこの世から消えてくれた方がありがたいのです。 もし「核兵器をこの世から根絶できるボタン」がこの世にあれば、アメリカが率先して押すでしょう。
なのでアメリカが核根絶を主導するのは綺麗ごとというだけではなく、アメリカの国益にかなった話なのです。 アメリカ以外の核保有国は程度の差はあれ格上の軍事国家がいるので、どう思うかは微妙なところです。
核根絶に向けて「核兵器のない平和な世界」というキャッチコピーがよく使われます。 しかし核兵器がない時代から常に戦争はありましたし、核兵器が開発された後も世界中で戦争・紛争が起きています。 むしろ核兵器のおかげで軽々と戦端を開くことができなくなり、戦争に対する抑止力となっていると見ることもできます。
日本も唯一の被爆国として核兵器根絶を世界に発信していますが、これはアメリカの同盟国であるからこそできる行動なのかもしれません。仮にアメリカの後ろ盾を失った場合、真剣に核武装を考えなければならない時が来る可能性もあります。「核兵器のない平和な世界」とは誰にとって平和な世界なのか、考えてみると面白いかもしれません。