「秘書が勝手にやった」の本当と嘘

偉い人が何かをやらかした時「秘書が勝手にやった」と言い訳することがあります。 胡散臭いセリフでとても信じられたものではありませんが、これが絶対に嘘とも限りません。

これは日本の秘書に求められる資質が法令遵守や倫理と別の方向を向いているからです。 全員がそうではないと思いますが、古い体質を引きずっている人が多いのかもしれませんね。

秘書の職務は?

秘書の職務を一口で言えば「上司の補佐」です。 何をどう補佐するかは秘書によって様々で、主業務を分担してバリバリ仕事をこなす秘書、庶務や雑務を担当する秘書、メンタル面を支える秘書という名の愛人など色々いますけどね。

そんな秘書の仕事のひとつに「上司に代わって泥を被る」ことがあります。 無茶な注文をする・融通を利かせる・賄賂を要求する・犯罪に手を染めるなど、ちょっとやり難いことを上司の代わりに遂行します。

なぜ秘書が代わるのかといえば、上司と秘書を利益共同体として見た時に秘書がやった方が取り返しがつきやすいからですかね。 言うことを聞いてくれればそれで良し、ダメなら「秘書が無茶を言ったようで…」とか「秘書が勝手に…」とか言って上司がフォローできます。

犯罪行為が発覚した時には最悪全て秘書のせいにすることも可能ですが、切り捨てると流石に離反するので後でフォローします。 ヤクザの上役がやった犯罪を若いのに代わりに自主させて、出所したら出世させて迎えるのと仕組みは同じです。

だから上司の中には秘書に無茶苦茶な指示を飛ばす人がいて、そんな人の秘書は無茶苦茶を言ってきます。 この文化こそが「秘書が勝手にやった」の土壌なのです。 こう言われてはいくら胡散臭く感じても、表向き上司を批難できませんからね。

そしてややこしいのは本当に秘書が勝手にやる場合もあることです。 なぜそんなことになるのかは「秘書検定」の参考書を一読してみると薄っすら理解できます。

秘書検定で問われるのは上司への忖度

日本には秘書の常識・能力・心構えを証明する資格「秘書検定」があります。 試験で問われる内容は大よそ常識的なものですが、中には「IT技術者には絶対に解けない」と言われる問題があります。

SNSで話題になっていた問題を出すので、どれが正しいか考えてみてください。

秘書検定2級の問題

上司から「K社から新製品発表会の案内状がまだ届いていない、漏れないようにしてもらわないと困る」と注意された。 しかし案内状のリストにK社は入っていない。どのように対処すればよいか。

  1. K社に電話で遅れた理由を説明してわび、会場や日時などを伝えておきすぐに送る
  2. K社はリストにないが送ってよいかと上司に確認し、よいと言われたらすぐに送る
  3. リストになぜK社がなかったのかを上司に尋ね、K社にはわび状を添えてすぐに送る
  4. 上司にすぐに送ると言って、送り状に詫びの言葉を書いて送り、リストに追加しておく
  5. K社には電話で不手際を詫びてすぐに送ると良い、リストに追加して良いかを上司に確認する

絶対に解けないIT技術者な私的には、K社は意図的に弾いた可能性があるのでまずはリストにない理由から確認すべきであり、回答は2か3となります。 一般的にもそう回答する人が多いんじゃないでしょうか。

しかし秘書検定における正解は4で、解説には「上司がそう言ったのだからK社は対象だし黙って送ってリストにも追加すべき」みたいなことが書かれています。 これ上司の想定外の事情があったら大変な問題になりかねないですよね。

秘書検定にはこのように「上司は絶対」「手を煩わせるな」「疑うのは失礼」「最大限忖度しろ」みたいな価値観があります。 秘書はこれで良いのかもしれませんが、一般的な社会人がこのような考えで仕事しているとそのうち大炎上します。

私の所持しているIT系国家資格の応用情報技術者にも秘書検定のような問題が出ますが、秘書検定とは違うロジックで考えます。 上記問題なら4は最初に除外するほどの間違いであり、だからこそIT技術者には解けないと言われているのでしょうね。

秘書検定の価値観は一般的ではない

秘書検定は何もかもダメと言う訳ではなく、基礎知識・マナー・心構えなどは大いに役立ちます。 また秘書という職務についてはよく知りませんが、その領域においてはこうあるべきなのかもしれません。

ただ秘書検定の価値観は年々厳しくなるコンプライアンスやガバナンスと衝突しており、一般的な社会人の価値観とズレが生じてきています。 SNSで「秘書検定ヤバい、昭和かよ」とたびたび話題になるのもそのためと思われます。

一般的な社会人が秘書検定の価値観を鵜呑みにすると問題になるケースも多々あります。 例えばIT業界に「上司の指示に不明点や疑問点があっても、確認せずに実行する」みたいな人がいた場合、逆に厳重注意しなければなりません。

そんな古臭い価値観を秘書やその上司が引きずっているからこそ、未だに「秘書が勝手にやった」なんて言葉が出てくるんじゃないかと思う今日この頃です。

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