好きな事に報酬を出すとやる気が失せる「アンダーマイニング効果」

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モチベーションの向上や維持は重要な問題です。 やる気があれば大抵のことはできるものですが、やる気がなければ何もかもやっつけになります。 学業、スポーツ、仕事、趣味、遊びと、何をするにしてもやる気は必要です。

モチベーションを喚起させるために報酬を出す場合もありますが、ただ出せば良いというものではありません。 場合によっては報酬を出したことによって、むしろやる気がなくなることもあるのです。 これを「アンダーマイニング効果」と言います。

アンダーマイニング効果とは

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まずはひとつ例を挙げてみましょう。

勉強が好きで自分から進んで勉強して、成績もトップクラスのA君がいました。 親が何も言わなくても勉強するなんて、とても素晴らしい子ですね。

そんな子を見た親は半ばご褒美のような形で「中間・期末テストの主要五教科で100点を取ったら100円あげる」約束をしました。 いくら頭が良くても100点を取るのは中々難しいことではありますが、今の成績でも狙えないことはないです。 貰えないよりは貰えた方が良いし、これがモチベーションとなってもっと勉強するようになるかもしれませんからね。

そんな約束をしてしばらくの間は変わりなく日が過ぎていきました。 テストの度に数百円の報酬があり、A君はそれでオヤツを買ったりしていたようです。

しかしやがてガタガタとA君の成績が落ちていきました。 あれだけ好きだった勉強も、いつの間にやらすっぽかすようになってしまいます。

A君が勉強嫌いになったことは分かりますが、これだけ見ても原因は分かりませんよね。 しかし「100点で100円」の報酬こそが、勉強嫌いになる切っ掛けを作ってしまった可能性があるのです。

自分が好きでやっていることは、何の見返りもなしに一日中やっていても苦になりません。 しかしそこに「100点で100円」という報酬が設定されたことにより、いつの間にか勉強の目的が「好きだから」から「報酬目当て」にすり替わってしまったのです。

そしてこの報酬は、苦労の割に報われない設定となっています。 どれだけ勉強しても100点を取るのは結構大変であり、それで貰える報酬はたったの100円です。 バイトできない年齢でも数百円を簡単に稼ぐ手段は沢山あり、何も膨大な時間がかかる上にリスクの大きい報酬を狙う必要はありません。

A君は元々好きで勉強していたのに、報酬が設定されたことによっていつの間にか勉強の目的が報酬にすり替わり、しかし報酬が渋いためにやる気を無くしてしまったという訳です。 このように内発的動機(やりたい)でやっていた事に外発的動機付け(報酬)をすることで、目的が内発的動機から外発的動機にすり替わってやる気を失うことを「アンダーマイニング効果」と言います。

モチベーションを効果的に向上させるには「内発的動機」と「外発的動機」を分けて考える必要があります。 モチベーション理論からこの時どうすれば良かったのかを考えてみましょう。

モチベーション理論

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モチベーションには外側からの刺激や報酬のために行う「外発的動機」と、自分の欲求や満足感を得るために行う「内発的動機」の二つがあります。 実際のモチベーションは内外の動機が入り混じったものですが、これらを分けて認識することでモチベーションを深く理解できます。

外発的動機

外発的動機とは、外側から刺激によるモチベーションです。 お金のための仕事や、親から強要されて嫌々やっている勉強などが当たります。 本来はやりたくないけど、何らかの事情でやらなければならないのが動機になっている訳です。

外発的動機は一時的な効果はあるけど長続きしません。 給料を払うのを止めれば働くのを止めますし、勉強しろと言うのを止めれば勉強を止めます。

内発的動機

内発的動機とは、心から湧き上がる感情によるモチベーションです。 満足感や充実感が得られるから、楽しいから、負けたくないからなどの自らの欲求がモチベーションとなります。

内発的動機は質の高い行動が長続きします。 何も言わなくても自発的に取り組みを続け、無報酬で一日中やっていることも珍しくありません。

モチベーションを向上させるには

無理矢理何かをやらされて長続きしない理由は、外発的動機の脆弱性にあります。 本来やりたくない事なんだから、やる理由がなくなればそりゃ止めますよね。 外発的動機よりも内発的動機の方が良いですが、やりたくもない事で内発的動機を喚起するのは難しいことです。

内発的動機は「有能性(認められる)」「自立性(思い通りにできる)」「関係性(関心を持たれる)」によって喚起されます。 質の高いモチベーションを維持できるかは、如何にこの三点が保てる状況を維持できるかに左右されます。

内発的動機を喚起する方法に、外発的動機付けにより内発的動機を高める手法があります。 あまり乗り気でないことをやった際に、その行動を称賛することで内発的動機を喚起するのです。 これを「エンハンシング効果」と言います。

エンハンシング効果の注意点として、賞賛するのは能力や結果ではなく努力した行為自体であること、賞賛は物理的な報酬ではなく言葉であることが挙げられます。 一歩間違えるとアンダーマイニング効果になりかねないので注意しましょう。

前述のA君の場合でしたら、失ったやる気を喚起させるためにまず外発的動機付け(報酬を大幅に引き上げる)し、外発的動機が続いているうちに内発的動機が喚起される環境を整え、並行してエンハンシング効果により内発的動機を育てるというのが一つの答えになるでしょうか。

モチベーションは「やりたいこと」「やるべきこと」「できること」が重なっているほどに向上します。 またモチベーションが上下する要因は他にも色々とあり、個人差も大きいです。

自分なりにどうすればモチベーションが上がるかを分析し、モチベーションを高める手法を確立させておくと便利です。 その際には外発的動機と内発的動機の両輪で回すことを意識すると良いでしょう。

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