ソシャゲ依存に学ぶモチベーション・マネジメント

スマホでソシャゲをプレイ

ソシャゲはネットの普及と共に裾野を広げ、その市場は今や1兆円を超える規模となりました。 企業やゲームが華やかに進化する一方で「ソシャゲ依存」と言われる闇も一際濃くなったように思います。

なぜソシャゲ依存が増えているのかと言えば、ソシャゲがモチベーションを喚起する仕組みを施しているからです。 ソシャゲがユーザーを依存に導くモチベーション・マネジメントについてお話したいと思います。

ソシャゲのプレイモチベーション換気手法

ソシャゲするゲーム中毒者

最初は成功体験を与える

序盤はゲームの仕組みをろくに知らない状態で適当にやっても快適に進めます。 もうボタンを押すだけでクリアして「やりましたね!」とか褒められるような状態です。

このように「簡単なところから始める」「成功体験を与える」のはモチベーションを向上させる上で大事なことです。 この循環を繰り返すことで「努力に対して報酬がある」と学習し、難しいことでも投げ出さずにチャレンジできるようになります。

毎日報酬を与えて継続プレイさせる

ソシャゲは毎日ゲームを起動することでログインボーナスが得られます。 他にも1日に1度だけできるボーナスミッションなどが用意されていることも多いです。

ほんの数秒でボーナスが貰えるのだからプレイヤーは毎日ログインし、ついでにボーナスミッションをこなします。 実はこれもモチベーションを喚起させる手法です。

人間の脳は「やっているうちにモチベーションが湧く」ようにできており、逆に言えばやらないと中々やる気が湧きません。 なのでやらせるための報酬を設定してモチベーションを喚起している訳です。

大して気乗りしない時でもボーナス目当てでゲームを始めると、いつの間にかやる気が湧いて長時間ゲームを続けてしまうのです。

スタミナ制で「やらなきゃ損」と考えさせる

ソシャゲはスタミナを消費して行動する「スタミナ制」になっているものが多いです。 スタミナは時間経過で回復していきますが、消費しきるとゲームを進められなくなります。

スタミナには最大値が設定されており、全快すればそれ以上増えることはありません。 なので効率よくゲームを進めるには「スタミナが全快する前にプレイを再開する」必要があります。

人間は無意識に損失を回避しようとする性質があり、この「やらなきゃ損」な状態を解消しようとします。 スタミナが全快になる前に消費しようとする結果、継続的にゲームをプレイするようになるのです。

努力の可視化

人は曖昧なものに対して努力するのは難しい生き物です。 特に自分では頑張ったつもりなのに評価されない/成長できないと、一気にモチベーションが失われてしまいます。

その点ソシャゲは保有キャラ・アイテム・Lvや能力値などの各種パラメタで努力を実感することができます。 分かりやすく「努力が可視化」されているのです。

大抵の物事では単純に努力しただけで成長するとは限りませんが、ソシャゲはやればやっただけ成長します。 この「単純な努力が評価される世界」を求めて、ソシャゲに熱中する人も多いのではないでしょうか。

習慣化される

ソシャゲには人間心理を利用した継続的・定期的にプレイさせる仕掛けがたくさん用意されています。 そんなソシャゲを気の向くままにプレイしていると、やがてそれは「習慣」として身に付きます。

習慣化されるともはやモチベーションがなくても自然とゲームを始めますし、むしろプレイできないと不安に駆られるようになります。 「面白くないのに続けてしまう」「辞めたいのに辞められない」などの現象も、ゲームが習慣になってしまっているのが原因です。

習慣化は内容や個人差がありますが、一般的に「20日」が目安とされています。 習慣にしたければ20日続ければ良いし、習慣を止めたいなら20日我慢すれば良いということです。

ソシャゲの課金モチベーション換気手法

課金するソシャゲ中毒者

ソシャゲは基本無料で広くユーザーを募り、キャラやアイテムに「課金」させることで集金するシステムになっています。 この課金を喚起させる仕組みも随所に散りばめられており、これが社会問題になっているほどにヤバいです。

初心者限定パックで課金への抵抗を下げる

ソシャゲには初心者限定のお得パックが用意されていることが多く、有用なアイテムが買わなきゃ損ぐらいの破格で大安売りされています。

これは課金への心理的抵抗を下げるために売られているものです。 一度課金すれば課金への心理的抵抗が薄れますし、課金による成功体験は次の課金への欲求となります。

ブレイクスルー

ソシャゲは進めるごとに難易度が高くなって行き詰まるようになります。 これを打破する一般的な手法が「課金」です。

課金によって得られる力は強力で、行き詰まりを打破する「ブレイクスルー」の原動力となります。 このブレイクスルーの瞬間が気持ち良く、課金の成功体験が形成され、再び行き詰まった時の課金欲求となってしまいます。

コンプ欲求

人には物を集めたがる「コンプ欲求」が備わっています。 本当に必要なもの・欲しいものだけではなく、コンプリートしたい欲求があるのです。

ソシャゲには期間限定を謳う商品が多いですが、これは特にコンプ欲求を搔き立てられる文句です。 こうしてガチャをガチャガチャと回すことになってしまうのです。

ガチャ依存症

ガチャは排出されるものがランダムで決まり、ラッキーな結果にもアンラッキーな結果にもなります。 このような射幸心を煽る仕組みは依存や中毒の危険性を孕んでいます。

脳は「良い結果を得られた時」に快楽を感じる物質「ドーパミン」を分泌します。 ドーパミンはやる気の原動力であり行動と報酬の好循環を作るのに欠かせない物質ですが、ガチャでドーパミンを出してしまうと依存症に繋がる恐れがあります。

陳腐化戦略

ソシャゲにはゲームクリアの概念が乏しく、シーズン毎に先のステージが実装されていきます。 難易度もインフレしていき「前シーズンは楽勝だったのに次シーズンで行き詰まる」なんてことも珍しくありません。

最新ステージに有効なアイテムやキャラを手にいれるには、多くの場合課金が求められます。 課金すれば行き詰まりをブレイクスルーできますが、次シーズンになるとまた行き詰まります。

つまり従来品をどんどん陳腐化させて、新しいものを買わせようとしているのです。 このような販売戦略を「陳腐化戦略」と言います。

優越感を得られる

ソシャゲを上手く進めるには課金が有効です。 無課金はキャラや装備が弱い、対戦で勝てない、見た目が貧相になるなど、課金者に対して何かしら劣ることになります。 ゲームの設計的に無課金者は「課金者の優越感を満たすために用意された下位者」なのです。

この優越感・劣等感も課金の原動力となっています。 この欲求を解決するには課金が有効な手段であるため、課金に走ってしまうという訳です。

課金の言い訳を用意

ネットには「ソシャゲ課金に対する言い訳」が沢山用意されています。 例えば「ソシャゲに課金しても何も残らないが、旅行や車もそれは同じだ」なんてよく言われていますね。

これは個人の価値観次第なので何とも言えませんが、誰かが用意した都合の良い言い訳に踊らされないよう注意が必要です。 費用対効果が釣り合っているかは冷静に見ましょう。

プレイヤー交流によるモチベーション喚起手法

ソシャゲ疲れしている女の子

ソシャゲには他プレイヤーとの共闘や対戦など、交流を促す機能が実装されていることが多いです。 この他プレイヤーとの関係によってもモチベーションが喚起されます。

自己実現

プレイヤーの交流はゲームを通しての自己実現、つまり「役立ちたい」「勝ちたい」「すごいと思われたい」「自慢したい」などの欲求を喚起します。 これらがプレイや課金へのモチベーションに繋がるのです。

ゲーム自体をさして面白いと思わない状態でも、自己実現のために重度のプレイや課金を続けるプレイヤーは珍しくありません。

交流

ゲーム内で他プレイヤーと交流する機会があり、長く続けていれば仲のいい相手もできます。 ソシャゲは場所を問わずプレイできるので、気付けば親友並みに同じ時間を過ごしていたなんてこともあるでしょう。

しかしゲームを通して繋がっていた関係なので、引退すると簡単に縁が切れてしまいます。 そのためゲームに飽きても辞めにくいし、飽きてからも従来通りのやり込みや課金を続けてしまう場合も少なくありません。

ゲームはほどほどに

このようにソシャゲにはモチベーションや課金を喚起する様々な仕掛けが施されています。 ソシャゲは構造的に「課金させる」ことが売上に繋がるので、心の隙につけ込むゲームになるのは必然なのかもしれません。

ユーザーが自制できる分には問題ありませんが、ソシャゲが社会問題化しているのは自制できていない人が多い証左に見えます。 依存傾向にある人はどれだけ課金して何を得られているのか、冷静に現状を見つめてみると良いかもしれません。

なお上述のモチベーション理論は、何もソシャゲにしか使えない訳ではありません。 勉強や仕事など何にでも応用できるので、やる気が起きない人はソシャゲを参考にモチベーション・マネジメントしてみてはいかがでしょうか。

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