自分に都合の良い情報ばかり集まる心理「確証バイアス」

インターネットはあなたの欲しい情報を提供してくれます。 Googleなどの検索エンジンに知りたいことをちょいと入力すれば、地球の裏側の情報を見ることだってできるのです。

しかしその情報が正しいのか、客観的なのかは怪しい部分があります。 ネットがくれるのは正しい情報ではなく、あなたが欲しい情報なのですから…

確証バイアス問題とは

酒好きの夫と酒嫌いの妻がいます。 お酒のことで喧嘩になり、ここは一つお酒の事をキチンと調べて白黒付けようということになりました。

夫が調べた結果、お酒は「人付き合いを円滑にする」「健康に良い」「リラックス効果がある」ものだと分かりました。 お酒って素晴らしいものみたいですね。

対して妻が調べた結果、お酒は「人との関係を駄目にする」「健康に悪い」「身を滅ぼす」ものだと分かりました。 お酒ってとんでもないものみたいですね。

同じ「お酒」について調べたはずなのに、二人の調査結果はまるで真逆のものになりました。 なぜこんなことが起きたのかと言えば、自分に都合の良い情報ばかりを集めたからなんですね。

人は何かを調べる際、あらかじめ自分に都合の良い情報を結論ありきで集めることが多いです。 この場合は夫はお酒に関するポジティブな情報を、妻はお酒に関するネガティブな情報を集めた訳です。

こういった自分に都合のいい情報を結論ありきで集めて自分の論を補強することを「確証バイアス」と言います。 この夫婦は分かりやすい例として書きましたが、人間は無意識に自分に都合の良い情報を選別して受け取るように出来ているのです。

例えばお酒のメリットとデメリットをしっかり説明する講義を行ったとします。 講義後に感想を聞くと、同じ講義を聞いたはずなのにお酒に関してポジティブに受け止める人もネガティブに受け止める人も出てきます。 何が起きたのかと言えば、確証バイアスによって自身に都合の良い情報を選別して受信したんですね。

メリット・デメリットの双方を説明されるとどちらも一応は記憶に残りますが、自分に都合の良い情報の方がより強く印象に残ります。 お酒について同じ事を聞いても、酒好きであれば大きなメリットと小さなデメリットと感じ、酒嫌いであれば小さなメリットと大きなデメリットと感じます。 そして都合の悪い情報は3日もすれば脳内から綺麗さっぱり消えてなくなります。

確証バイアスは普段生活する中で無意識下に働きます。 特にネットで情報を集めると意識しなくても都合の良い情報ばかり集まるので、この状況にとても陥りやすいです。

ネット社会にありがちな確証バイアス問題

検索エンジンのアルゴリズムに見る確証バイアス

インターネットはあなたに様々な情報をもたらしてくれます。 総数10億サイト1兆ページ以上の情報群は、世界中の誰よりも多くの知識を有していると言えます。

しかしその内容は玉石混交で、必ずしも精度の高い情報とは言えません。 また1兆ページの情報のどこに何があるのか、正確に把握するのは不可能です。

そんな時に役に立つのが検索エンジンです。 あなたの知りたい情報を検索すると、膨大なウェブページの中から欲しい情報を探して表示してくれます。 しかし検索エンジンは「あなたの欲しい情報」を提示しているに過ぎず、それが正確で客観的な情報とは限りません。つまりモロに確証バイアスの影響を受けます。

検索エンジンは普段のあなたの行動を分析して、あなたの欲するような情報を上位表示し、あなたの見たくない情報は表示しません。 またサイトがリンクなどをしている場合、リンク先の情報も似たような属性を持つ場合が多いです。 こうやって普通にネットをしているだけであなたの取得する情報が偏っていき、それに従ってあなたの認識も偏っていくのです。

ちなみに検索エンジンがユーザーの見たくない情報を遮断するアルゴリズムを「フィルターバブル」と言います。 検索エンジン側がフィルターバブルを導入している理由は「ユーザーとユーザーの欲する情報をよりよくマッチングさせるため」ですが、そのせいで反対意見が目に入らなくなって自分が正しいと勘違いしてしまうんですね。

ネット社会の村化

人は自分と似た嗜好・思想・属性の人とコミュニティを形成する傾向が強く、距離の制約のないネットにおいてこの傾向は顕著に出ます。

自分に合ったコミュニティは価値観が似た人間が集まりやすいので、自分と同じ意見が多く、自分の意見を補強するような情報が多く集まり、あなたは自分が正しいことを確信していきます。 これを「エコーチェンバー現象」と言います。

しかし実はその意見はコミュニティ内でしか通用しない独りよがりなもので、一歩コミュニティの外に出ると全く支持されていないなんてこともあり得るのです。

広大で多様な情報にアクセスできるはずのネットにおいても人々は結局自分の見たい情報しか見ません。 そうしてネットでは似たような価値観の人々が集まってコミュニティを形成し、そこに閉じこもるようになりました。 これを「ネット社会の村化」なんて表現したりします。

自分と違う意見に触れよう

確証バイアスの作用はネットに限ったことではありません。 普段の付き合いや友人、購読している雑誌や新聞、所属しているコミュニティなど、何にしてもこういった問題は起こります。 ただネットはそういった状況に陥りやすく気付きにくい場所ということです。

認識が全く歪んでいない人は存在しないかもしれませんが程度の問題はあります。 常識から外れるほど周囲との摩擦が大きくなり、厄介な問題を引き起こしがちです。 常識に必ずしも従う必要はありませんが、常識を知らないのはとても危険なことです。

なるべく色々な人との交流を持ち、自分の認識を常に刷新していきましょう。 多くの人との触れ合いを通してこそ、自分が洗練されていくのですから。

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