牛乳を飲むとお腹が下るのはなぜ?
学生時代、給食には必ず牛乳が付いてきました。 パンの時にはともかくご飯の時にも牛乳だったので「そこはお茶にしろよ」なんて思ったものです。 実は学校給食法で牛乳を付けるのが義務付けられているんですよね。
牛乳と言えば飲むとよくお腹を下す子がおり、かくいう私も牛乳と胃腸の相性はあまり良くない感じでした。 でもそれは哺乳類として正常な反応なんですよ。
なぜ牛乳でお腹が下る?
哺乳類は赤ちゃんが産まれると母親からお乳を貰います。 しばらくはお乳を飲んで育ちますが、大体自然に乳離れをします。
人間でしたら子どもに歯が生えてきてお乳を吸われるのが痛くなるって理由もありますが、もう一つ理由があるのです。 それはある程度成長すると、お乳を飲むとお腹が下るようになるからです。
お乳に含まれる乳糖は小腸にあるラクターゼという酵素によって分解されます。 産まれたての哺乳類の腸内ではラクターゼが活発に活動しているため、お乳を飲んでも平気です。
しかしある程度成長すると、ラクターゼが減少したりなくなったりしてしまいます。 そうなると乳糖を分解できなくなり、お乳を飲むとお腹を下すようになるのです。 何度か飲むうちに「お乳は飲めないもの」と学んで、乳離れして他のエサを探すようになるという訳です。 生物の長い歴史の中で、上手いこと乳離れのメカニズムを獲得したものだと感心させられます。
人間も例外ではなく、ある程度成長すると体が乳離れを促しラクターゼが減少します。 だから学校給食に出る牛乳でお腹を下すのは自然の摂理なのです。
なぜ学校給食に牛乳が出る?
人の歴史の中で成長後にも家畜の乳から栄養を得ていた地域も多く、そういった場所に住む人は腸内にラクターゼを獲得しています。 反対にアジアなどではそういった文化がなく、多くの人が「乳糖不耐症」といって乳糖を分解する機能が低いです。
日本人も多くが乳糖不耐症なのですが、それでは何でそんなもんを学校給食に出すのかというと、戦後のアメリカの援助物資が理由です。
戦後日本は食料不足が深刻であり、特に経済困窮している児童の救済が必要でした。 そこでアメリカに援助を受けて給食を始めたのですが、その中に「脱脂粉乳(水に溶かして飲む乳の粉)」がありました。 「栄養満点の脱脂粉乳を飲んでアメリカ人みたいにでかくなろう」と思ったのかは知りませんが、脱脂粉乳は給食の定番メニューとなりました。この流れで後にできた学校給食法に「給食にはミルクを付けろ」と制定されたのです。更に後に給食の脱脂粉乳は牛乳に変わって今に至ります。
乳糖不耐症と一口に言っても程度があり、飲むと絶対に腹を下すという訳ではありません。 また乳糖は分解できなくても他の栄養は吸収できるので、給食の牛乳が貴重な栄養源となっていることもまた事実です。 昔飲んだ牛乳のおかげで骨が丈夫になったのかもしれませんしね。
しかしいくら栄養豊富でも腹が下るもんは下るのです。 お腹の調子が悪い時は無理して飲まず、先生に腸内のラクターゼのことを話してみてください。 そしてお茶に変えて貰ってください。