日本史上の女性天皇は8代6人いるけど、女系天皇はいない
日本では紀元前660年頃から、王様である「天皇」の家系が続いています。 令和の今上天皇はなんと126代目にもなる、歴史深い由緒正しい家系です。
長い歴史の中で女性が天皇として即位することもありました。 なので伝統的に女性が即位しても問題ないのですが、しかし今の皇室から女性が天皇となると少し困ったことになります。 詳しく見てみましょう。
日本の歴代女性天皇
まずは歴代の女性天皇を見てみましょう。 女性天皇は8代6人で、重祚(一度退位した天皇が名前を変えて即位)が二度あります。
代目 | 天皇 | 在位 |
---|---|---|
33 | 推古天皇 | 592-628 |
35 | 皇極天皇 | 642-645 |
37 | 斉明天皇(皇極天皇が重祚) | 655-661 |
41 | 持統天皇 | 686-689、690-697 |
43 | 元明天皇 | 707-715 |
44 | 元正天皇 | 715-724 |
46 | 孝謙天皇 | 749-758 |
48 | 称徳天皇(孝謙天皇が重祚) | 764-770 |
109 | 明正天皇 | 1629-1643 |
117 | 後桜町天皇 | 1762-1771 |
女性天皇の多くが6~8世紀
歴代女性天皇のうち6代4人が592-770年までの時代に固まっています。
日本初の女性天皇である推古天皇、日本初の譲位を行った皇極天皇、日本初の重祚を行った斉明天皇、優秀な政治家だった持統天皇、平城京に遷都した元明天皇など、日本史の教科書で見かける名前が多いです。
元正天皇は実権を握っていた藤原不比等の方が有名で、ややマイナーでしょうか。
明正天皇は徳川幕府への当てつけ
称徳天皇が退位してからしばらくの間は男性天皇が続きました。 時が流れる中で天皇制は存続こそしていましたが、鎌倉幕府との勢力争いに敗れて失墜し、江戸時代になると徳川幕府の統制下に置かれました。
そんな中で859年振りの女性天皇となったのが明正天皇です。 明正天皇はわずか5歳の時に父・後水尾天皇から譲位されて天皇に即位しています。
突然の譲位は徳川幕府が朝廷を軽んじていたことに対する当てつけと考えられています。 この時点では皇子がいなかったため、皇女に譲位されたと思われます。
最後の女帝・後桜町天皇
今のところ最後の女性天皇となっているのが、1762年に即位した後桜町天皇です。 「最後の女帝」とも言われています。
先代の皇子が幼かったため中継ぎとして即位し、9年間勤めた後に後桃園天皇へ譲位しました。 しかし後桃園天皇は22歳の若さで崩御してしまいます。
その後は光格天皇が9歳の若さで即位し、後桜町上皇はそんな幼い光格天皇を導き、また良き相談役でありました。
女系天皇と女性天皇の違い
皇位継承の話の際に「女性天皇はダメだ」と主張する人がいます。 女性天皇は過去にもいたのにおかしな主張に見えますよね。
これは天皇家の事情を端折ったもので文字通りではありません。 正確には「女系天皇はダメ」という主張です。
天皇は父親が皇族でなくてはならない
日本では天皇や皇族に関する法律「皇室典範」が定められており、その第一条にこうあります。
第一条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する
今のところは法律で女性は天皇になれないことになっています。 そしてもう一つ注目してもらいたいのが「男系」という言葉です。
「皇統に属する男系」とは、父親が皇族であることを意味します。 「女系」はこの対義語で、母親が皇族であるという意味です。
伝統的に天皇の父親は全て皇族であり、父親をひたすら遡っていくとやがて初代・神武天皇に辿り着くようになっています。 更に遡ればスサノオや天照大神に辿り着くのかもしれません。
そのため皇族として生まれた女性が皇族ではない男性と結婚した場合、妻は皇族ではなくなり、夫も子も皇族にはなりません。 これは男系の伝統を守るための仕組みと言えます。
なお伝統的に男系が天皇となっている理由は定かではありませんが、天皇家の権威や政治力を維持するために作ったシステムと考えられます。 女系が天皇になると外威が権力を持ち、天皇家が排斥されてしまうかもしれませんからね。
皇統存続の危機
将来的に皇統が断絶してしまうのではないかと危惧されています。 若い皇族が沢山いるのにこう言われるのは、男系システムを前提とした話だからです。
女性が天皇に即位してしまうと、男系システムを存続させるには皇族の男子を婿に迎える必要があります。 しかし現状、皇族同士での結婚は血が近すぎるので、そういう訳にはいきません。
そのため男子が天皇になるしかないのですが、そうなると令和の次世代の候補は悠仁親王殿下ただ一人しかおられません。 更に次の天皇は悠仁親王殿下が男子を授からなければならず、確実とは言えません。
そのため皇室規範の改変が度々議論されており、「女系天皇の容認」や「旧皇族の皇籍復帰」などが議論されています。 皇室の伝統を考えると、前例のない女系天皇誕生よりは、旧皇族の皇籍復帰の方がありそうでしょうか。