お金持ちとピアノ趣味は関係ないが、あるように見える「疑似相関」
お金持ちにはピアノ経験がある人が少なくありません。 少なくとも全体平均と比べると経験者は多いです。
それではピアノ経験に何かしらお金持ちになれる要素があるのかと言えば特にありません。 単にお金に余裕のある家庭が子どもに教育費をたっぷりかけて色々な習い事をさせ、その一環でピアノを習わせているだけです。
こういった子は評判の学習塾で勉強し、良い学校に進学し、給料の良い会社に入るからお金持ちになる訳です。 ピアノ経験とお金持ちには直接の相関関係はなく、別の要因によって相関があるように見えているだけなのです。 このような相関を「疑似相関」と言います。
相関と疑似相関
脂ぎったギトギトのラーメンが健康に与える影響を調べるため、お客さんの健康に関する統計を取ってみたとします。 するとこのラーメンを週に3回以上食べている人の1年内の疾病率は、平均と比べてかなり低い水準に抑えられていることが分かりました。
この統計は今考えた私の創作ですが、実際に統計を取っても多分似たような結果が得られると思います。 さて、この統計から何が読み取れるでしょうか?
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まず信じ難いことに「脂ぎったギトギトのラーメンが健康に良い影響を与えている」可能性が考えられます。 これが正しければ「ラーメンと健康には相関関係がある」ことになりますが、普通に考えればそんな訳ないですよね。
他にも考えられることがあるのは分かるでしょうか?
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もう一つは「健康状態の悪い人は脂ぎったギトギトのラーメンを食べていない」可能性です。 こんなラーメンを好んで食べるのは若くて健康状態の良い人が多いと考えられ、であればラーメンが健康に多少の悪影響を与えても元が健康なだけ疾病率は低く抑えられます。 このラーメンを食べている人の平均年齢が25歳だったら、そりゃ全体平均に比べて疾病率が低いのは当たり前ですよね。
これが正しければ「ラーメンを常食している人の属性と健康に相関関係がある」ことになります。 この時のラーメンと健康には一見相関関係があるように見えて、実際の所は別の要因が相関関係にある訳です。 このラーメンと健康の関係のように直接の相関関係はないものの、別の要因によりまるで相関関係があるように見えることを「疑似相関」と言います。
このケースで統計を取る場合、食べている人の年齢や健康状態などの詳しい属性までセットで調査しなければ本当の所は分かりません。 率直に言って無意味な統計なのですが、しかし世の中にはこういった「疑似相関」が満ち溢れています。 プロモーションやマーケティングのために確信犯的に疑似相関を相関関係にあるかのように喧伝しているケースも少なくありません。
世に溢れる疑似相関の例を見てみましょう。
世に溢れる疑似相関と思われる話
夕張市が破綻したら住民が健康になった
北海道夕張市は2007年に財政破綻し、街から救急病院が無くなりました。 早い話が医療崩壊したのですが、それによってむしろ夕張市民が健康になって死亡率が下がったというのです。
一説には市民が医者に頼れないことを自覚して健康に気を付けるようになったのではないかとも言われています。 しかしもう一つ考えられることがありますよね。市内の重症者が市外へ引っ越していった可能性です。
定期的な通院が必要な重症者は、夕張市に住んでいたら通院が不便な上に病状が急に悪化したら救急車が間に合わず死ぬ可能性もあります。 そんな状態で夕張市に住み続けるのは自殺行為なので、死にたくない人は市外へ引っ越していきますよね。
死亡率まで低下していることからも、単に重症患者が市外へ引っ越して行っただけという見方が強いです。
小説家はお金持になる
明治から昭和ぐらいの小説家にはお金持ちが沢山いました。 それを見た人々は小説家が儲かる職業だと思ったそうです。
しかし実態は「お金持ちじゃないと小説家になれない」だったようです。 食うに困る貧乏生活でしたら小説なんて書いてる場合じゃないですからね。
明治から昭和ぐらいまでの文豪はとんでもない高学歴揃いですが、これも実家が太いことに関係しているように思います。
増える10代のサイバー犯罪
肌感覚としてサイバー犯罪に手を染めている人は高齢者を除いた全世代で増加傾向にあるように思います。 そんな中で10代のサイバー犯罪だけが増えているように見えるのは、警察が摘発できるのが未熟な技術しか持たない10代が多いせいではないかとも言われています。
実際サイバー犯罪が摘発されたニュースでは、ちょっとITに詳しい人から見れば「こんな対策もしなかったのか」程度で捕まっている人が多いですよね。 大した知識のない私でも同じ犯罪をやるなら捕まらないようにもっと上手くやれる気がします。
「お金持ちがやっている趣味」などの特集
ニュースや雑誌を眺めていると「お金持ちがやってる趣味」やら「出世できる人の習慣」やらの特集がよく組まれています。 しかし最初に挙げたピアノの話のように、疑似相関の疑いが強いものも多いです。
この類の特集が頻繁に組まれるのはそれだけ需要があるからでしょうが、「○○な人の××」の類の話は本当に相関関係があるのか疑似相関に過ぎないのかは冷静に見るべきでしょう。 お金持ちにピアノ趣味が多いからって、いくらピアノを頑張ってもお金持ちにはなれません。
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疑似相関の事象をいくら頑張った所で期待した結果は得られません。 巷に溢れる疑似相関に振り回されないように、冷静に事象を見極めましょう。