宇宙にも重力があり、国際宇宙ステーションは0.9Gぐらいある

宇宙は無重力のイメージが強く、宇宙に出た途端に重力が無くなると考えている人もいます。 しかし惑星に近い場所は重力の影響にそれほど変わりはなく、地球の上空数百km程度では重力は10%ぐらいしか減りません。

国際宇宙ステーション(ISS)も地球の重力の影響をモロに受ける場所にあり、何もしないと地球に落ちていきます。 なぜ重力のあるISSで無重力のように振舞えるのかと言えば、とんでもない速度で地球を回って遠心力を付けているからです。

宇宙空間にも重力の影響はある

地球から真上に飛ぶとやがて宇宙に辿り着きます。 どこから宇宙なのかは明確には決まっていませんが、大体は上空100kmよりも上を宇宙と呼びます。

そんな宇宙にある各種物体の地上からの距離は大体こんな感じです。

高度名称
宇宙100km~
スペースシャトル200~1000km
人工衛星200~35,786km(※10万kmを超えるものもある)
ISS400km
38万4400km
太陽1憶5000万km

月や太陽と比べると人工物は地球のほんのすぐ側にあることが分かりますね。 それらと比べて遥か遠くにある月や太陽ですが、その引力は地球まで届いて潮の満ち引きなどの形で影響しています。

スペースシャトル・低軌道の人工衛星・ISSなどは地球の至近距離にあると言っても過言ではなく、普通に地球の重力の影響下にあるため無重力ではありません。 例えば上空400kmにあるISSには地球の90%程度の重力があり、体重100kgの人が90kgになる程度の差しかありません。

しかしテレビで中継されるISSの様子は無重力ですよね。 一体何が起きているのかと言えば、無重力ではありませんが「無重力状態」になっています。

重力と遠心力を釣り合わせて無重力状態にしている

ISSを上空400kmに静止させた場合、そのままでは地球の重力に捕まって落っこちてきます。 それでは困るので落ちないように高速で地球を周回し、ちょうど重力と釣り合うように遠心力を生み出しています。 その速度は28000km/hというとんでもない高速で、90分で地球を1周できるほどです。

ISSに限らず地球を周回するような円軌道を描く物体は、その高度での引力に釣り合う遠心力を生み出す速度で地球を周回しています。 その遠心力のおかげで無重力状態となり、地球に落っこちなくて済んでいるという訳です。

ニュートンは「月もリンゴと同じように落ち続けている」と言ったとか言ってないとか諸説ありますが、そんな月が地球にぶつからないのは重力と遠心力が釣り合っているからですよね。 地球を周回している人工衛星が落ちてこないのも同じ原理です。

ちなみに月は毎年3cmぐらい地球から離れているそうで、現状は重力よりも遠心力が若干優っているようですね。

重力の影響が強い低高度であるほどに速度が必要で、高度が上がるごとに速度が必要なくなっていきます。 高度に対して速度が遅すぎると地球の引力に引かれて落っこちますが、逆に速すぎると地球の引力を遠心力が上回って宇宙の果てに飛んで行ってしまいますからね。 地上400kmのISSは地球を90分周期で周っていますが、地上35,786kmにある静止衛星はほぼ24時間周期でISSに比べると大分遅い速度です。

地表からh(km)上空を周回するのに必要な速度の公式

V(km/h)=(398600/(6378+h))の1/2乗

ちなみに重力は距離の2乗に反比例して無限に届きます。厳密には何か色々あるみたいですが、おおよそは逆2乗の法則のようです。 上空200~400kmの低軌道衛星やISSの重力は90%、36000km離れた静止軌道衛星の重力は2%、40万km離れた月における地球の重力は0.025%ほどになるでしょうか。

そんな訳で地球の周囲には強い重力があるものの、人工衛星やISSは遠心力によって釣り合いを取っているため無重力状態になっているという話でした。

周回軌道を外れる場合は、速度≒遠心力を変える

スペースシャトルが地上に戻る時や役目を終えた人工衛星を廃棄する時には、速度を落として遠心力を弱めることにより地球へと降りていきます。 とんでもない高速で降りてきた物体は前方の空気を強烈に圧縮して膨大な熱を発し、人工衛星はその熱で燃え尽きてしまいます。 スペースシャトルは燃え尽きたら困るので、その熱に耐えられるように作られています。

ただし高高度にある静止衛星は地球に降ろすのが物凄く大変なので、役目を終えたら高度を更に数百km上げて現役の衛星とぶつからない高度を周回させます。 この軌道を「墓場軌道」と言います。

墓場軌道には数千機の人工衛星が周回しており、半永久的に地球を周り続けると考えられています。 しかし墓場軌道に移動させるのも結構コストがかかる上に難しいため、実際は移動せずにそのまま周り続けているものも多いそうです。 そのうちスペースデブリ問題が深刻になりそうで嫌ですね。

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