停止しているかのような0km/hのボールを投げる方法
野球には色々な球種が存在しますが、止まる魔球は存在しません。 普通はそんなボールを投げるのは無理なのですが、条件を整えればそれっぽいことができなくもありません。
何をするのかと言えば投球者と観測者との速度差を利用してそんな魔球を作ります。 相対速度ってやつなのですが、理解を深めるために問題を出しながらお話したいと思います。
何問解ける?相対速度の問題
問題1
100km/hで動く電車の中で、電車の進行方向にいる相手に100km/hでボールを投げました。 電車の中の二人から見て、ボールは何km/hで飛んでいるでしょうか?
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正解は「100km/h」です。
同じ速度で動いている二人から見れば、ボールの速さは電車の中だろうが飛行機の中だろうが止まっていようが同じですね。
問題2
問題1と同様にボールを投げました。 電車の外で静止している人が真横から見た場合、ボールは何km/hで飛んだでしょうか?
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正解は「200km/h」です。
電車の中と外では速度が違うので、ボールの速度はそれらを合算した100+100=200km/hになります。
問題3
100km/hで動く電車の中で、軽く真上に30cmほどボールを投げました。 電車の外で静止している人が真横から見た場合、ボールは何km/hで飛んだでしょうか?
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正解は「100km/h」です。
考え方は問題2と変わりませんが、問題2は正解しつつ問題3を外す人もいるようです。
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さて、全問正解できたでしょうか? 間違えた方は難しく考えすぎたのかもしれませんね。
それではここからが本番です。 以上を踏まえて次の問題を考えてみて下さい。
問題4
100km/hで動く電車の中で、電車の進行方向とは逆にいる相手に100km/hでボールを投げました。 電車の外で静止している人が真横から見た場合、ボールは何km/hで飛んだでしょうか?
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正解は「 0km/h 」です。
考え方はこれも問題2と変わらないのですが、問題2・3は正解しつつ問題4を外す人もいるようです。
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さて、正解できたでしょうか? この問題4が0km/hのボールを投げる方法という訳でした。
問題4も今までと同様に簡単に解けるものですが、正しい答えに辿り着けたしても本当にこれで良いのかと悩まされる問題ですよね。 「何か分からないけど知らない力が働いて微妙に違う答えになるのでは?」とか疑心暗鬼になります。
しかしながら答えは単純で、問題4は外から見ればボールは0km/hで文字通り止まって見えます。徐々にボールの高度が落ち、やがて地面にポテンと転がることでしょう。 実際に0km/hのボールを実現するのは中々難しい話ですが、走行中の乗り物から進行方向と逆にボールを何度か投げれば、観測者から見てほぼ停止状態の球を投げるができるでしょう。 走りながら逆方向に軽くボールを投げるなどでも近い結果を出すことができるかもしれませんね。
それにしても走行速度と同じ速度で逆方向に物を投げると、外からは止まって見えるってのは不思議な話ですよね。 いや何も不思議なことはないはずなのですが、いざ目の当たりにすると妙な気分になります。
何だかゲームのバグを見つけたような気分になる、不思議な投球の話でした。