儲かる話に皆が飛びつくと儲からなくなる

Profitable

日本人は他人と同じことをしようとする傾向が強いとされています。 船で日本人に「みなさんはもう飛び込みましたよ」と言えば海に飛び込んでいくという沈没船ジョークは有名ですよね。

こんな国民性が良し悪しのどちらに作用するかは状況次第ですが、皆と同じことをした結果失敗することも当然あります。 「儲かる話に皆が飛びつくと儲からなくなる」のもその一つです。

儲かる話に皆が飛びつくと儲からなくなる理由

convenience store

コンビニに見る儲け話に皆が飛びついた結果

簡単な話の例えとして、あるニュータウンのコンビニの話をします。

街にマンションが出来て人が沢山引っ越してきたとします。 今までは閑散とした地域でしたが、街の人口は一気に増え、それに伴って色々な需要が増えました。 今回はコンビニ需要に絞って考えてみましょう。

一か月目はコンビニは街に1件しかなく、コンビニ需要はその1件に集中しました。 商品は飛ぶように売れるようになり、今月の売上は従来の3倍を記録しました。 コンビニオーナーは大儲けで笑いが止まらず、人々は「コンビニは儲かる」と考えました。

二か月目には新たなコンビニが2件増え、街のコンビニは3店となりました。 客の取り合いが発生して先月ほどの売上はありませんでしたが、まだまだコンビニの売上は上々です。 コンビニオーナーはそれなりに儲けてニコニコしており、人々は「コンビニはやはり儲かる」と考えました。

三か月目には新たなコンビニが更に2件増え、街のコンビニは5店となりました。 地域のコンビニ需要を上回る店舗が出来たことにより客の取り合いが発生し、コンビニの売上は激減して1店舗当たりの売上はマンション建設以前よりも低くなってしまいました。コンビニオーナーの儲けは激減して採算を取れるか怪しくなり、人々は「コンビニは儲からない」と考えるようになりました。

一か月目にはコンビニは大儲けできていたのに、月が経つごとに儲けが減り、最後は今後どうなるか分からない状態になりました。 やっていることは変わらないのになぜこんな変動が起きたのかと言えば、説明するまでもなく単純な需要と供給の問題です。 小学生でも分かるような単純な理屈なんですが、しかし現実で同じような事をやらかす人は後を絶ちません。

ブルーオーシャンとレッドオーシャン

経営戦略用語において、競争相手のあまりいない市場を「ブルーオーシャン」、競争相手の多い市場を「レッドオーシャン」と言います。 ひと月目はブルーオーシャンで入れ食いだったのが、新規店舗の出店により市場が徐々にレッドオーシャン化して採算が取れなくなってしまった訳です。

これが「儲かる話に皆が飛びついて儲からなくなった」状態です。 ブルーオーシャンでなら儲かるかもしれませんが、皆がそこに飛び込んだら市場はレッドオーシャンと化します。 そんな市場の変化によって、儲かる話もまた割に合わない話に変化してしまったのです。

日本人がよく評される「右に倣う」性質は、ブルーオーシャンをレッドオーシャンにして、更にレッドオーシャンへさえも飛び込んでいく危険性が高いものです。 新しいことや前例があまりないことこそがブルーオーシャン市場な訳で、「みんながやってるから私も」なんて言ってたらそこはもうレッドオーシャンです。

この類の話は「何が儲かる、何が儲からない」ではなく「ブルーオーシャンは儲かってレッドオーシャンは儲からない」でしかありません。

ブルーオーシャンのレッドオーシャン化例

皆で同じことをやって皆で市場をレッドオーシャンに変えるのは何も珍しい事ではありません。 前述のコンビニのような例はそこかしこに溢れています。 いくつか見てみましょう。

ブームに追従したお店の開業ブーム

何か特定のお店が流行ると、追従して同じようなお店の開業ブームがおこります。 近年でしたらそば屋、古民家カフェ、猫カフェなどですかね。

こういったお店が地域の需要以上に作られてしまった場合、前述したコンビニのような競争が当然起こります。 特に一過性のブームに頼ったお店はブームが過ぎるとお客さんの数自体も激減するので、数年後には閉店ラッシュが起きます。

副業ブーム

近頃は本業以外にも稼ぎ口を作る「副業ブーム」が起きています。 テレビでも「儲かる副業はこれだ!」なんて特集が組まれますよね。

しかしこれも沢山の人が一気に飛びつくと供給だけ増えて値崩れを起こす性質のものが少なくありません。 そもそも会社や個人が本業にするほどの需要や利益性がないから副業として存在しているのですからね。

プロジェクションマッピングブーム

観光地にてプロジェクションマッピングを導入した所、評判は上々で観光者数は激増しました。 そしてその効果を知った他の観光地もそれに追随し、そこら中でプロジェクションマッピングブームが起きました。

最初は珍しいもの見たさでお客さんが集まりましたが、そこかしこで放映されるようになったのでこれ目当てで遠くまで行くことはあまりなくなりました。 もちろん有名観光地の壮大なプロジェクションマッピングの出来は素晴らしく見に行きたいと思いますが、大して興味のない施設でやっていてもわざわざは観に行きません。 導入には少なくない費用がかかりますが、どこまでペイできたのでしょうか。

仮想通貨ブーム

「仮想通貨が儲かる」という話を聞いた日本人が仮想通貨に殺到しました。 その結果一時は日本人の仮想通貨保有率が世界最高の11%になったこともあります。

しかし多くの日本人が購入しようとした時点で既にバブルは膨れ上がっていて、ほどなくして弾けました。 かつては200万円以上の価値があったビットコインも40万円を切り、多くの日本人の仮想通貨収支はマイナスになる結果となりました。

仮想通貨で儲けるには自分が買ったよりも高く誰かに売らなければなりません。 右に倣って後からノコノコ参加した頃には、高く買ってくれる誰かなんてのは希少種になっています。 つまり「仮想通貨が儲かる」って情報は、仮想通貨を高く売り抜けたかった人が流したものなのです。

レッドオーシャンに飛び込むのも間違いではない

fishing

この記事を読んだ皆さんは「レッドオーシャンでは戦わずブルーオーシャンで戦うべきだ」と思ったかもしれません。 それはその通りなのですが、しかし話は言うほど簡単なものではありません。

ブルーオーシャンの創造は誰もいない広い大海原で魚が釣れるポイントを探すようなものです。 運よくそんな場所が見つかれば良いですが、そもそもそこには魚がいなかったなんてことも考えられます。

対してレッドオーシャンは魚の取り合いは激しいですが、魚は確かにそこにいます。 そういった意味では「右に倣う」のも間違いとは言い切れないのです。レッドオーシャンでは基本的に資本力に物を言わせた大企業が有利ですが、独自の工夫で成功している小規模勢力も確かに存在しています。

ブルーオーシャンのうちに参加してレッドオーシャンになったら撤退する戦略も、レッドオーシャンであることを理解した上で進んで飛び込んでいく戦略もあります。単純な話ではないのですが、とりあえず言えることは「需要と供給と戦略を見極めましょう」ということです。皆が儲けているという噂を聞いてもすぐに飛びつかず、その市場がどう推移していくか、その中で自分はどのように立ち回れるかを考えてみましょう。そして勝算があるならレッドオーシャンに飛び込んでいくのもアリなのです。

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