ムンクの「叫び」で叫んでいるのはムンクではない?
ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンク作「叫び」は世界で最も有名な絵画の一つです。 高額の美術品としても有名で、2012年のサザビーズオークションにて1億2000万$で落札さています。
「叫び」は美術に興味のない人でも、絵を見れば作者とタイトルが分かるほどの知名度を持ちます。 そんなムンクの叫びは中央の人が叫んでいる光景と思われていますが、実は違う可能性もあるのです。
ムンクの「叫び」の謎
「叫び」はムンクが感じた幻覚を元に描かれています。 以下はその体験を記した日記の一節です。
私は2人の友人と歩道を歩いていた。太陽は沈みかけていた。突然、空が血の赤色に変わった。
私は立ち止まり、酷い疲れを感じて柵に寄り掛かった。それは炎の舌と血とが青黒いフィヨルドと町並みに被さるようであった。
友人は歩き続けたが、私はそこに立ち尽くしたまま不安に震え、戦っていた。そして私は、自然を貫く果てしない叫びを聞いた。
この日記からムンクが幻聴の叫びを聞いたことが読み取れます。 絵は実体験を元にしているので、中央の人物がムンクだろうが架空の人物だろうが、同じ叫びを聞いていることでしょう。 両手で耳を塞いでいることからも、その不安と恐怖が見て取れますね。
なので「叫び」とはムンクの聞いた幻聴を指しているように受け取れます。 ただこの幻聴を聞いた中央の人もまた叫んでいるかもしれない訳で、やっぱり中央の人の叫びである可能性もあります。
ムンクは「叫び」が何の叫びなのかを明言しておらず、鑑賞者の想像に任されています。 そんな事情もあってこの作品は見た人の想像を掻き立てます。
「戦争の悲惨さを訴えている」なんて意見を聞いたこともありますが、そう言われるとそのように見えてくるから不思議ですね。 だからこそこんな不気味な絵なのにも関わらず、多くの人に知られ高い評価を受けるようになったのかもしれません。
ムンクの叫びは五枚ある
ムンクの「叫び」は世界に五枚存在します。 画家の中には同じテーマ・構図・題名などで似た絵を何枚も描く人が珍しくなく、ムンクもその一人です。
特に有名なのは油彩画のものですが、他にテンペラ画が一点、パステル画が二点、リトグラフが一点制作されています。 一般的に叫びと認識されているのは油彩画のものですが、残りの四枚もすべてが真作です。