オシドリがオシドリ夫婦なのは、ヒナが孵るまでの間だけ

泳ぐ色鮮やかなオシドリ

仲がいい夫婦のことを「オシドリ夫婦」と表現します。 この言葉はオシドリの夫婦がいつも仲睦まじくしている様子から生まれました。

しかしこのオシドリの夫婦、実は同じペアでいるのはワンシーズンだけです。 それも一緒にいるのはヒナが卵から孵るまでで、オスは子育てもせずにいなくなってしまいます。

オシドリ夫婦の実態

寄り添うオシドリの夫婦

オシドリはカモの一種で、アジアに広く生息しています。 もちろん日本にも生息していて、夏は北方・冬は南方で生活しています。

オシドリのオスは繁殖期になると色鮮やかな羽毛に身を纏います。 派手な方がオスで地味な方がメスです。一目でオシドリと分かる目立つ外見ですね。

オシドリは繁殖期になるとペアを作り、オスはメスを甲斐甲斐しく守ります。 これはまさにオシドリ夫婦と言うにふさわしい姿です。

しかしオシドリ夫婦でいる期間はそう長くありません。 卵からヒナが孵ると、オスは役目は終わったとばかりに去ってしまいます。 夫婦仲は解消され子育てはメスだけで行い、翌年は別の個体がペアとなります。

これを聞くと果たしてオシドリ夫婦とは何なのか疑問に思ってしまいますよね。 出産後に旦那が出て行ったシングルマザーを指す言葉のようにも聞こえます。

夫婦仲をワンシーズンで解消する動物は珍しくありませんが、逆に何年も同じペアで繁殖活動する動物も少なくありません。 中には一生同じペアの動物もいるぐらいなのに、なぜ仲睦まじい夫婦の例えにオシドリを選んでしまったのか疑問に思いますよね。

これは中国の捜神記の一節に由来します。

オシドリ夫婦は「捜神記」が由来

枝にとまるオシドリの夫婦

中国4世紀頃の書物「捜神記」にこんな話があります。

鴛鴦の契り

韓憑は妻があまりに美しかったため、暴君・康王に妻を奪われてしまいます。 そして韓憑は追放され、失意のうちに自殺してしまいました。

ほどなくして妻も韓憑の後を追い、遺書には「夫と同じ墓に埋めて欲しい」と書かれていてました。 怒った康王は隣り合った2つの墓に別々に埋葬して「そんなに愛し合っているなら2つの墓を1つにしてみろ」と言いました。

するとそれぞれの墓から梓の木が伸びてきて、十日で交差するまでに成長します。 そして樹上ではオシドリの夫婦が日夜物悲しく鳴き続けたのでした。

この話からオシドリは夫婦の生まれ変わりと考えられるようになり、オシドリ夫婦の由来である「鴛鴦の契」という慣用句ができました。 ここからオシドリの夫婦仲が良いかのようなイメージが広まったのかもしれませんね。

ただ一度オシドリの生態を知ってしまうと、この言葉には何か別の意味があるような気がしてなりません。 オシドリ夫婦と評されていた夫婦が実は…なんて話をよく聞く気がするのは、果たして私の気のせいなのでしょうか。

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