マングースはハブをあまり襲わない

mongoose

かつて沖縄ではハブとマングースを戦わせるショーを行っていました。 2000年に動物愛護法によって禁止されて今は見れませんが、それ以前は沖縄における代表的な興行のひとつでした。

ショーではマングースがハブと戦って倒してしまうので、マングースは「ハブ殺し」としてのイメージが強くあります。 しかし実は沖縄にいる野生のマングース、ハブを襲うことは滅多にないんです。

沖縄にマングースを導入した経緯

mongoose

沖縄には野生のマングースが多数生息していますが、最初からいた訳ではありません。 人の手によって導入されて増えた結果今に至ります。

ハブは沖縄を代表する危険生物で、噛まれると人も死ぬほどの強力な毒を持っています。 血清のなかった時代はハブによる死亡事故が現在と比べ物にならないほど多く、血清が完備された今日においても時々死亡事故が起きているぐらいです。

そんなハブは沖縄の生態系の中でもかなり上位にいる動物です。 犬や猫でも戦えば勝てはしますが、強力な毒牙で反撃されると大怪我するので捕食者にとってリスクが高いのです。

沖縄にハブを積極的に狩ろうとする動物はいません。 そこでハブを捕食してくれるだろう動物を沖縄に輸入することになりました。

イタチを導入するも全滅

まずヘビの天敵として名高いイタチに白羽の矢が立ちました。 3000頭ものイタチを沖縄に輸入して放ちましたが、しかし早々に全滅してしまいます。

原因ははっきりしていませんが、全滅が早すぎたことからハブを襲って逆にやられたのではないかと推測されています。

そうして沖縄県は、別のハブの天敵の導入を考えることになるのでした。

マングースを導入するもハブと戦わない

次はインドにいるマングースに白羽の矢が立ちました。 マングースは当時ヘビの天敵であるイメージを持たれていた動物で、ネズミやハブを駆除してくれることを期待されて沖縄に輸入されました。

そうしてやってきたマングースですが、ハブを襲うことはほとんどありませんでした。 マングースは肉食でヘビも獲物のひとつではありますが、他にも昆虫や動物を襲って食べています。 別段好んでヘビを襲うような習性は持っていなかったのです。

もちろんハブを襲って食べることもあって勝率もそれなりに高いですが、逆にハブにやられて食べられることもあります。 食糧事情が余程悪ければともかく、普段からそんな危険な相手をわざわざ狙わないですよね。

そんな訳で沖縄に輸入されたマングースは、食べやすい動物を狙って食べました。 その結果ニワトリやアヒルなどの家畜、ヤンバルクイナに代表される沖縄の固有動物を食べて繁殖し、肝心のハブの数は一向に減りません。

沖縄県民のアテは完全に外れたどころか、厄介な害獣が増えてしまう結果となったのでした。 今ではマングースは逆に沖縄固有の生態を見出す特定外来生物として目の敵にされており、根絶に向けた作戦が展開されています。

沖縄の自然が豊かなのはハブのおかげ

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ハブは畑だろうが人家だろうがどこにでもいますが、主な生息地はやはり自然豊かな山の中です。 特に森林やヤブの中に多く、地上はもちろん樹上にもいるため迂闊に分け入ると噛まれて酷いことになります。

そんなハブを恐れてか、人々は積極的に森林を切り開いて入植することはありませんでした。 重機でも持ってくれば話は別なんでしょうが、小さい島の多い沖縄をそうまでして開発する理由はありませんからね。

おかげで沖縄の山林は人の手が入っていない場所が多く、豊かな生態系を保ち続けました。 もしハブがいなければ普通に開拓されて、今頃は人の街になっていた場所も多いことでしょう。

ハブは人から見れば恐ろしく厄介な害獣ですが、それ故に人を遠ざけているのです。 ハブは人から沖縄の自然を守る救世主と言えるのかもしれません。

ちなみに鹿児島県の奄美大島では、島民がハブを保健所に持っていくと3000円で買い取ってくれます。 良いお小遣い稼ぎになりそうですが、商売としてはどうなんでしょうか。

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