ラクダのコブは脂肪の塊

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コブが特徴のラクダ。コブがひとつのヒトコブラクダとコブがふたつのフタコブラクダが現存します。 ちなみに2種をかけあわせるとヒトコブハンラクダが生まれるそうですが、子孫が残せない一代限りの変種になるようです。

そんなラクダの特徴と言えば背中のコブですが、中には何が詰まっているのかといえば数十キロもの脂肪です。 昔は水が詰まってるなんて言われていましたがそれはデマですよ。

ラクダがコブを持つ理由

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ラクダは砂漠付近(ステップ)で生活している動物です。 砂漠は人がイメージするほど砂ばかりという訳ではありませんが、生物が生存するのが難しい環境なのは間違いありません。

ラクダはそんな砂漠に適応した動物です。 砂から目を守る長いまつ毛、砂を吸い込まない開閉できる鼻、砂に足を取られない平らな足底など、砂漠で生きるのに有利な特徴を沢山持っています。

そしてラクダの最大の特徴といえば背中のコブです。 実はこのコブの中身は脂肪です。

ラクダは栄養と水を体にため込む能力がとても高いです。 水と食料が乏しい砂漠地帯では水や餌場の距離が遠く、今は食事にありつけても次の食事がいつになるか分かりません。 そんな環境で生きてきたラクダは血液中に水分・背中のコブに脂肪をため込めるように出来ています。

ラクダは一度に100ℓもの水を飲むことができ、更に体から4割の水分を失っても生存が可能です。 体重が60kgの人間で例えるなら一度に10ℓもの水を飲めて20kgもの水分を失っても活動できると言っているようなものです。 ラクダ以外の哺乳類にはそんな芸当はできず、人間がこんなことをすれば比喩ではなく死にます。

ラクダの食事は様々な植物です。ただでさえ植物の少ない砂漠では選り好みはしません。 サボテンのような針だらけの植物でも、分厚い唇のおかげで難なく食べることができます。 余分な栄養は背中のコブに脂肪としてため込み、栄養状態が良い時は脂肪が50kgに達することもあります。

たっぷり補給した後は、数週間から1か月もの間飲まず食わずで活動することが可能です。 ちなみにラクダの栄養状態はコブの盛り上がりで判断できます。 盛り上がっていればバッチリで、平らになってきたならそろそろ何か食べたい状態です。

ラクダと人の関わり

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実は野生のヒトコブラクダは存在せず、フタコブラクダもゴビ砂漠付近に千頭ほどを残すのみとなっています。 しかし家畜として飼われているものは世界中に存在し、その数はなんと一千万頭を超えます。

ラクダは少なくとも3000年前、ひょっとすると6000年前には人に飼われていたのではないかというほど人との歴史が深いです。 その理由は砂漠を越えることができる唯一の使役動物だったからです。

ラクダは砂漠の船とも言われ、人や荷物を乗せて砂漠を歩きました。 ヒトコブラクダは細めで機動力に優れているため乗用に向き、砂漠地帯でも時速60kmで走る俊足を持ちます。 フタコブラクダは太めで力持ちなため荷物運びに向き、一度に200kg以上の荷物を持つことができます。

砂漠には兵隊として騎兵ならぬラクダ騎兵がおり、少なくとも紀元前7世紀には存在していた記述があります。 ラクダ騎兵はアッシリア、ローマ、十字軍など著名な軍隊を叩き返した頼れる砂漠の軍事力です。 現代においてもラクダ騎兵は存在し、銃を装備した人を乗せて砂漠地帯の兵隊として重宝されています。

またラクダは皮や毛を衣類や縄にしたり、糞を燃料として使ったり、肉を食料にしたりと砂漠地帯での貴重な資源となっています。 そういえば世界一大きな料理はラクダの丸焼きでしたね。イスラム教のイード祭では最上級の生贄としてラクダ料理が振る舞われます。 砂漠地帯に住む人にとってラクダはなくてはならない存在なのです。

ラクダは家畜としてだけでなく野生種としても繁栄しています。 砂漠の多いオーストラリアなどではその昔ラクダが家畜として持ち込まれたのですが、現在では野生化したラクダが100万頭にまで増加して外来種として問題になっています。

ちなみにラクダは湿潤な場所で生きていくのにあまり適しておらず、疫病に対する免疫がなかったり砂漠以外を歩くのに適していなかったりします。 砂漠で素晴らしいパフォーマンスを誇る一方で、砂漠以外に住むのはあまり適していないのです。 厳しすぎる環境に適応してしまった結果、肥沃な場所で生活できないとはなんとも皮肉なものです。

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