うつは心の風邪=脳の異常。だから気合では治らない。

feel down

「うつ」になると身体的には異常はなく熱も出ていないにもかかわらず、全身がだるい・意欲がない・頭がぼーっとする・運動能力が落ちるなど、まるで風邪のような諸症状が出ます。 そんなところからか「心の風邪」と例えられたりします。

心の風邪と言われると、強い心を持てば治ってしまうようにも聞こえます。 実際「うつになるのは心が弱いからだ、気合を入れろ」と言う人を見かけたりもします。 しかしこれ、大きな誤解なんです。

うつは一部の脳内物質が不足している状態を指します。 心の病気なんて言われますが、心とは要するに脳の事を指しているんですね。

そもそも心の病って何?

heart

あなたは「心とは何か」と言われた時に、具体的に説明できるでしょうか?

大昔には心は心臓やその周辺の臓器に宿っていると考えられていました。 その名残なのか、現代でも心と言われてハート(心臓)を思い浮かべる人が多く、実際ハートマークは心臓の形をしています。 しかし心臓は心ではありません。人工心臓に付け替えても心がなくなったりはしませんよね。

心が何なのかは哲学的なところもあって答えるのは難しいですが、心とは「おおよそ脳」であると言えます。 「おおよそ」としているのは脳以外の各所も心の形成に何らかの関わりをしていると考えられているからですが、この辺は本題ではないので脇に置いて「心=脳」であると考えます。

つまりうつ病=心の風邪=脳の風邪=脳の異常なのです。 うつ病をもう少し具体的に言うと「脳内物質であるセロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンなどの分泌が不足している状態」と考えられています。

これらの脳内物質は三大神経伝達物質と呼ばれ、人の精神・運動・思考などに深く関わっています。 つまりは不足するとこれらの能力が下がり、症状が重くなると日常生活すらまともに送れなくなってしまいます。

うつ病の症状

depression

人は強いストレスを受け続けると、脳内物質セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンの生成量が減ります。 これらは人の活動に必須の物質であり、不足するとやがては身体と精神に異常をきたし、症状が重くなると日常生活を送ることすら困難になります。 これがうつ病の基本的な仕組みです。

ちなみに気合を入れた時に出る脳内物質は主にアドレナリンとドーパミンです。 微妙に効果的である辺りがまた誤解される元なのですが、うつ病は特にセロトニン不足が要因と考えられており、気合は根本的な解決にはなりません。 というかそんな状態でそもそも気合は入りません。

私は職業柄(業界柄?)うつ病の人を見かける機会が他業種の方よりも多いと思いますが、最初に見た時はそれなりに近しい人だったこともあり衝撃を受けました。 優秀で何事もキッチリ仕上げる尊敬できる先輩に、ある時期からミスが増えてきました。 最初は時間に余裕がないからなのかと思いましたが、周囲でフォローするうちに「どうもおかしい」となってきました。

弱音こそ吐きませんでしたが無理しているように見え、社交的だったはずなのに塞ぐことが多くなり、一体何があったのかと見ていて辛くなるような状態でした。 作業が遅くミスも目立つようになり、打ち合わせした事は記憶から抜け落ち、気晴らしとして一緒に運動した際には足が縺れて転んでいました。

上司の命令で病院へ行くことになり、内科で「異常なし」精神科で「うつ病」と診断され、休職する運びとなりました。 私自身も実際に目の当たりにするまで「うつは心の風邪で気合の問題、いざ症状が出ても少し寝れば治る」ぐらいの認識でした。 しかし一連の症状を見て「もしかして深刻な病気なのでは」と認識を改めることになったのです。

幸いその先輩は3か月の休職の後に復帰し、少し時間はかかったものの元の状態に戻ることができました。 しかし同じような状況でリミットまでに復帰できず、そのまま退職になった人もいます。うつ病は数か月~1年経っても治らないこともある恐ろしい病気なのです。

決して自分でどうにかしようとせず、お医者さんにかかって言われた通りにしてください。 気合で治ったりはしないし、放っておくとどんどん病状が悪化していきます。 初期症状であれば休まずに薬で対処できることもあるので、おかしいと思ったら先送りせずにすぐに病院へ行った方がいいです。

またうつ病は責任感が強い人がかかりやすいと言われています。 つまり自分がうつ病であることを認めなかったり、自分で何とか治そうとして悪化させることが多いです。 周囲の人も「何だかおかしい」と感じたら、どうか気にかけてください。 特に症状が一時的でなく何日も続いた時には、無理矢理にでも病院へ行かせてください。

病院へ行く際にはまず内科で身体的な病気のチェックをしてもらうといいでしょう。 その際に症状を伝えるとともに「うつ病の疑いがある」と一言添えれば話がスムーズに進みます。 身体的な異常に起因するものであればそのまま内科で治療となりますし、そうでなかった場合は精神科を紹介してくれることもあります。

「うつ病ではないか」と感じたら、とにかく早く病院へ行くことを覚えておいてください。 自分にしろ周囲の人間にしろ、うつ病にしろ違うにしろ、それが一番良い結果となるでしょう。

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