白鯨(ハーマン・メルヴィル)のあらすじ

白鯨は1851年に発表されたハーマン・メルヴィルの長編小説で、白鯨への復讐に魅入られた捕鯨船の船長エイハブとその乗組員たちの物語です。

本作はサマセット・モームが選んだ世界十大小説の一つにノミネートされており、海洋ホラーの原点として評価されています。 ドラマや映画にもなっており、21世紀になっても今なお語り継がれる名作です。

あらすじ

イシュメールは海に出て世界を見て回るため捕鯨船の船員になる事にしました。 ナンターケット島に向かう連絡船を待つため安宿に入ると、あいにくの満室で相部屋に泊まることとなりました。 亭主によると同室の男は南洋から来た銛手で、人間のクビを売っている野蛮人という話でした。

男はクイークェグという名で黒い肌に入れ墨をしており、その姿は恐ろしい悪魔のようにも見えました。 しかし付き合ってみると意外に礼儀正しく、クイークェグは遠い南西の島の王族で、キリスト教国について学んで国を発展させたいと考えていると話します。 クイークェグに好感を抱いたイシュメールは運命を共にすることを誓い、二人は共にナンターケット島へと向かいます。

二人はピークオッド号と契約することになり、三年の太平洋への航海へと出港しました。 義足と噂の船長のエイハブ船長は船長室に籠っていたようで見当たりませんでしたが、出港から数日経つと船上に姿を見せるようになりました。

エイハブ船長の登場

それからしばらく経ったある日、エイハブ船長は乗組員を船尾に集め「白鯨を見つけたものには金貨を与える」と言い放ちます。 船員が「そいつはモビーディックのことじゃないか」と尋ねるとエイハブ船長は肯定し、かつてモビーディックに船と片足を奪われ義足になったことを話し、航海の目的が憎きモビーディックへの復讐にあることを明かしました。

モビーディックの伝説は船乗りの間で語り草になっていました。 孤高の白鯨は捕鯨船の前に時々姿を現し、狩ろうとした人々は手酷い反撃にあって多くの者が命を失いました。 その伝説は果敢な海の男たちですら肝を潰してしまうほど恐ろしいものでした。

エイハブ船長はモビーディックへの復讐に燃え、狂気に陥っていました。 しかしエイハブの精強さや心の精緻さは失われておらず、それ故に正気だった時以上の力が白鯨に向けられていました。 その狂気は船員たちにも伝搬し、白鯨を不俱戴天の仇と考えてエイハブ船長の復讐に応じたのでした。

しかし白鯨探しと並行して通常の捕鯨も行われました。 エイハブ船長自身はその全てを白鯨への復讐に注ぎ込んでいましたが、その実現には道具が必要です。 移ろいやすい船員の気持ちを金で釣る必要があることを知っていたのです。

ある日「潮吹き!」と声が上がり、クジラの大群がいると分かると船は大騒ぎとなります。 そんな中で叫び声がした方に振り向くと、エイハブ船長の周りに5人の黒ずんだ怪物が立っていました。 彼らはエイハブが密かに乗せていた乗組員のようで、エイハブ船長と共にボートに乗ってクジラへと向かっていきました。

他に三艇のボートが降ろされましたが、エイハブ船長の乗るボートの速度は抜きんでていました。 そして霧の中をクジラの群れへと向かってボートは襲い掛かりましたが、かすり傷を与えただけで逃げられてしまいます。 イシュメールとクイークェグの乗るボートは転覆して霧と嵐の中をしばらくの間漂い、遺品探しに来た本船に発見されることとなります。

イシュメールはクイークェグに「こんなことがよく起きるのか」と聞くと「よく起きるなあ」と答えが返ってきます。 イシュメールはクジラ漁がまるで死神が口を開けている所へ飛び込んでいくようなものだと感じ、更にモビーディックという凶暴な白鯨を追う運命にあることに愕然とします。 しかし遺言を書くと心のしこりは取れ、何だってやってやる気になってきました。

エイハブ船長と白鯨への狂気

それから数週間後の静かな夜のこと、船から遥か先に月光に照らされたた白銀の潮吹きが見えました。 船は潮吹きの方へと進みましたが二度とは見えずにクジラを見失いました。 それから数日おきに同じことが起き、まるでモビーディックが我々を死の淵へと誘導しているようにも思えました。

ある日、遠方に白い大きな塊が頭を上げているのを見て「白鯨だ」と騒ぎになりましたが、ボートを向かわせた先にいたのは大イカでした。 大イカに出会って港に無事帰れた捕鯨船はいないという噂話があり、不気味な見た目もあって一行はどこか不吉なものを感じるのでした。 しかしクイークェグは「イカが見えたらクジラが出て来る」と言います。

その翌日、クジラを発見したピークオッド号はボートを出して追い、槍を打ち込んでクジラを倒したのでした。 エイハブ船長はクジラを追い立てていた時には活発でしたが、倒した後はどこか不満気でした。 まだ見ぬモビーディックのことを考えているのでしょう。

ある晩、拝火教の船員フェダラーはエイハブ船長のことを予言します。 曰くエイハブ船長が死ぬ前に棺を二つは見て、一つは人間の手で作られたものではなく、もう一つはアメリカ産の木で作られていると言うのです。 そしてフェダラーが先に死んでエイハブ船長の水先案内人を務め、麻縄だけがエイハブを殺せると予言しました。

ある日、同郷の顔なじみであるレイチェル号が近づいてきて、昨日白鯨と遭遇したことを聞かされます。 船長の息子が行方不明になっているとエイハブ船長に捜索の手伝いを願い出ましたが、エイハブ船長は時間の無駄だからと船長を追い返して航海を続けます。 去り際に見えたレイチェル号が子を探す姿は、まるで聖書の失われた子を探すレイチェルのようにも見えました。

白鯨との戦い

それから数日後、自ら見張りをしていたエイハブ船長はついに白鯨を発見します。 急いで三艇のボートを降ろして銛を打ちこもうとしましたが、モビーディックはこちらの戦術を見抜いたかのように動きエイハブ船長の乗るボート破壊してしまいます。 モビーディックは難破した船員の周りをグルグルと回り、残りの二隻も手を出しあぐねていました。

そこに本船が駆け付けてモビーディックと船員の間に入り込み、何とか救助に成功しました。 エイハブ船長の気迫は衰えていませんでしたが、日が暮れたため勝負は翌日に持ち越されることとなりました。

二日目、モビーディックを発見した一行は再び三艇のボートを降ろし、白鯨に向かって突っ込んでいきました。 モビーディックは尾を振って応戦しましたがボートは間一髪でかわして銛を打ちこみました。 しかし白鯨は銛から伸びた縄を手繰り寄せると二艇のボートを打ち付けて転覆させ、エイハブ船長のボートを下から突き上げて空中に放り上げてしまいます。

再び母船が割り込んで救助に入りましたが、エイハブ船長の義足が食いちぎられ、拝火教の船員フェダラーが行方不明となる結果となりました。 船員からは白鯨狩り攻撃を中止するよう要請が出ましたが、エイハブ船長は聞き入れませんでした。

三日目、エイハブ船長は死を予感し、船員と握手をしてからボートで降りていきました。 モビーディックには昨日打ちこんだ銛が残っており、その側面には行方不明になっていたフェダラーが絡みついていました。 フェダラーの預言した人間の手で作られたものではない棺とは、モビーディックのことだったのです。

白鯨は三日間の立ち回りに疲れたのか動きが鈍っているように見えました。 しかしボートを引っくり返すと母船へと突っ込んで船の側面を叩きつけ、それで割れた穴に海水が流れ込んでいきました。 エイハブ船長はピークオッド号こそがアメリカ産の木で作られた第二の棺だったことを知ります。

エイハブ船長は銛を打ち込みますが、白鯨が疾走すると麻縄が首に巻き付きボートから吹き飛ばされ、海底深くへと沈んでいきました。 船は沈みボートは渦巻きに捕らえられ、全ては海底へと沈んでいきました。

イシュメールのみが救命ブイによって浮き上がり、一昼夜さ迷った後にレイチェル号に拾い上げられました。 聖書のようにレイチェルは自分の子を探しあぐねて孤児を見つけたのです。

感想

白鯨のメインストーリーは復讐に燃えるエイハブ船長と白鯨の戦いです。 その流れは王道海洋ホラーと言った所ですが、しかしながら本作の魅力はそれに留まらない所にもあります。

本作は冒険譚だけではなく、捕鯨や航海のうんちく、クジラの生態、旧約聖書、歴史、異国の文化や風習などの様々な話が詰め込まれた作品です。 あらすじでは本筋に関係の薄い部分はカットしていますが、それらに割かれている文量は相当なものです。 一冊読み終わる頃には色々な知識が身についていることでしょう。

その本筋とあまり関係ない部分こそが本作の醍醐味であると評する人もいます。気になる方はぜひ本編をどうぞ。

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