ジキル博士とハイド氏の怪事件(スティーヴンソン)のあらすじ

二重人格の顔が向かい合う図

ジキル博士とハイド氏の怪事件は1886年に発表されたスティーヴンソンの怪奇小説です。 この小説が発表されたのは大分昔ですが今なお色あせない名作で、最近にも映画やドラマになったりミュージカルが上演されたりしています。

人柄の良い紳士のジキル博士が乱暴で不快なハイド氏をなぜかやたらと厚遇し、いくつかの事件を通して弁護士のアターソンが二人の関係を知る物語です。

目次 [閉じる]

  1. あらすじ
  2. 感想

あらすじ

ジキルとハイドの奇妙な関係

日曜の散歩を楽しんでいた弁護士のアターソンは、一緒に歩いていたエンフィールドに数か月前にあった奇妙な出来事について語ります。

醜悪で不快なハイドという小男が、ぶつかって転んだ少女を踏みつけ立ち去ろうとしました。 騒ぎになって少女の家族が駆け寄ってくると、ハイドは争いごとは御免だから慰謝料を払うと家族の要求通りに小切手で100ポンドを支払いました。

その小切手の署名はアターソンの顧客である大柄な紳士ジキル博士のものでした。 アターソンはジキル博士から「私が死亡または失踪したらハイドに全ての財産を相続する」という遺言書の保管を依頼されていました。

ハイドの人柄を知ったアターソンは、遺言はハイドに恐喝されて書かされたのではないかと疑い、ジキル博士に確認することにしました。

ジキル博士は屋敷内でもハイドを自由にさせていて、使用人にもハイドに従うよう申し付けていました。 しかし優遇されている割にはジキル博士とハイドが一緒にいる事はないそうで、アターソンはますます脅迫されている疑いを強めます。

しかしジキル博士に問いただしてみると至って平静に「ハイドを気にかけているだけ」としか言わず、アターソンは引き下がるしかありませんでした。

ハイドの殺人と失踪

それから1年ほど後、ハイドが老紳士をステッキで撲殺する姿が目撃されます。

アターソンは刑事と共にハイドの住所へ行ってみると、本人は留守でしたが室内からは折れたステッキが見つかりました。 このステッキは事件現場に残されていたものと一致し、そしてこれはかつてアターソンがジキル博士に贈ったものでした。

アターソンは再びジキル博士を訪ねて問いただすと、ジキル博士は「ハイドとの関係は断った」と言い、ハイドが書いたトラブルの謝罪と別れの挨拶のメモを見せてくれました。 このハイドのメモの筆跡はジキル博士のものととても良く似ていました。

ハイドがいなくなって数か月後、ジキル博士は突然訪問者を拒むようになりました。 その理由を知ったラニョン博士はショックを受けて調子を崩し、ジキル博士が死ぬか失踪するまで開ける事を禁じた手記をアターソンに託して死にました。

ジキルとハイドの最期

ある日アターソンはジキル博士の研究室に通りがかったのでジキル博士と会話を試みました。 ジキル博士は「中には入れられないが窓越しになら話はできる」と言った刹那、突然恐怖の表情をして窓を閉めて引っ込んでしまいます。

その数日後「ジキル博士が書斎に籠って出てこない、様子がおかしいから来て欲しい」と使用人から懇願されたアターソンは屋敷に向かいます。 書斎の中へ問いかけると返ってきた声はハイドのものであり、ジキル博士はハイドに殺されてしまったと思い突入しました。

しかし中にはハイドの服を着たジキル博士が自殺して死んでいたのみで、ハイドの姿はありませんでした。

机の上にはアターソンへの遺言状と手記があり、アターソンはラニョン博士とジキル博士の遺した手記から事件の真相を知りました。 手記にはこう書かれていました。

ジキルの手記

私は普段紳士的に振舞っていましたが、その内面には快楽への欲望が渦巻いており、それを満たすための二重生活をしていました。 心の悪を分離して別人格になる薬を開発し、ジキルとハイドの間を薬で行き来して卑しい欲望を解放させて楽しんでいたのです。

しかしそのうちに薬を飲まなくてもハイドが表に出て来るようになりました。 恐ろしくなって薬を控えるようにしましたが、堪えられなくなって使ってしまい、抑圧された欲望が爆発して老紳士を殴り殺すに至ったのです。

恐怖した私はもう薬を使わないよう心に決めたのですが、しばらく経つと薬なしでもハイドへと変身するようになりました。 この時はラニョン博士の協力で薬を調合して元に戻れましたが、秘密を知ったラニョン博士はショックで死んでしまいました。

私がハイドへと変身する頻度はどんどん多くなり、ジキルに戻るための薬の量は増える一方でした。 やがて薬の材料が切れ、ハイドからジキルに戻る薬は無くなってしまいました。

私がハイドとして処刑されるのかジキルとして自殺するかは分かりませんが、この手記の終わりが私の人生の終わりでしょう。 私は不幸なヘンリー・ジキルの生涯を閉じます。

感想

人の二面性や二重人格を「ジキルとハイド」と表現することがありますが、その由来はもちろんこの小説です。

あまりに有名になりすぎて、本編を知らない人でもジキルとハイドが二重人格だと知っているほどです。 私も始めて読んだ時に既に二重人格設定を知っていて、かなり序盤の方でトリックに気付いてしまっていました。

ただこの話は二重人格というよりも人の二面性を描いたものです。 作中では善のジキルと悪のハイドが別々に独立して存在していたように見えますが、ハイドが出来る前からジキル博士の中にはハイドの素養があった訳ですからね。

最後には薬なしでもジキルがハイド化するようになりましたが、これはハイドに侵食されたというよりも、人の善悪がとても曖昧なものだからのように思います。

ジキル博士は薬がなくて元に戻れなくなることに絶望していましたが、ハイドとしてずっと活動していれば案外普通にジキルに戻れたような気もします。 まあ犯罪がバレて捕まっちゃいますけどね。

ジキル博士ほどではないにしろ、人は誰しもこのような二面性を抱えています。 だからこそ誰もがジキルとハイドの事を他人事とは思えず、この話を面白く感じるのかもしれませんね。

オチが分かっていても単純に読み物として面白いので、怪奇小説好きはぜひ一度読んでみてください。

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