マグロは常に泳いでないと窒息して死ぬ
「マグロは泳ぎ続けていないと死ぬ」という話を聞いたことはあるでしょうか。 こう言われるとマグロは寝ないで24時間泳ぎ続けているのかとか、なぜ泳ぎ続けなければならないのかとか、色々疑問が浮かびますね。
マグロは24時間泳ぎ続けています。 なぜなら泳ぐことで大量の酸素を取り入れられる仕組みの呼吸をしているから、止まると窒息して死んでしまうのです。
マグロは泳ぎながら呼吸している
魚はエラ呼吸をしています。 簡単に仕組みを説明しますと、口を開けて海水を吸い込み、口を閉じてエラから海水を排出し、その際にエラから海水に溶けた酸素を取り込んでいます。
あまり運動しない魚ならこれで良いのですが、活発に動き回る魚の酸素は賄いきれません。 エサが乏しい外洋を泳ぐ回遊魚はエサを探して泳ぎ回らければならず、特にマグロのような大きな魚が動き回るには大量の酸素が必要となります。
そこでマグロは口を開けたまま泳ぐことで、エラに新鮮な海水を送り続けて酸素を確保しています。 これを「ラムジュート換水法」と言います。
泳ぐのを止めてしまうとエラへの新鮮な海水の供給が止まってしまうので、やがて酸欠になって死んでしまいます。 だからマグロは泳ぎ続けないと窒息死するという訳です。
マグロは24時間泳ぎ続けている
マグロは24時間休みなく泳ぎ続けていますが、いつも同じ速度という訳ではありません。 エサを追いかける時や危険が迫った時は時速20kmほどで素早く泳ぎますが、普段は時速5km程度ですし夜になると更にゆっくりした泳ぎになります。
魚は哺乳類のように完全に眠ることはなく、ゆっくり泳いだり停止したりすることで休息しています。 暗い夜に休息する傾向があるのは動物と同じで、夜になると動きが緩慢になる魚も多いです。
マグロは回遊魚なので停止することはありませんが、ゆっくり泳ぎながら休息している訳です。
回遊魚の体は泳ぎ続ける前提の仕組みになっている
回遊魚に分類される魚の多くは、マグロと同じように常に泳ぎながらラムジュート換水法によって呼吸をしています。 マグロ以外にはカツオ、ブリ、アジ、カジキ、ホオジロザメなどが挙げられます。
回遊魚が泳ぎを止めると、呼吸以外にも様々な不都合が生じます。 広い外洋で泳ぎ続けられるように進化した結果、泳ぎを止められなくなった訳ですね。
人間の感覚では不便に聞こえるかもしれませんが、死ぬまで泳ぎ続ける回遊魚にとっては何の問題もありません。 我々が生きている限り心臓を動かすように、回遊魚は生きている限り泳ぎ続けるのです。
回遊魚とそうでない魚が混在する種もいる
魚によっては同じ呼び方でも回遊魚とそうでない魚が混在する種もいます。 例えばホオジロザメは回遊魚ですが、ジンベイザメはそうではありません。
「サメは動き続けないと死ぬ」と言われますが、これは回遊魚のサメに限った話になります。 ホオジロザメはマグロのように泳ぎ続けないと窒息死しますが、ジンベイザメは止まっても噴水孔を使って新鮮な海水を取り込んで呼吸できます。