ウミガメは産卵の時に泣いている訳ではない
ウミガメは産卵の時に涙を流しているのは有名な話です。 このウミガメを見て人間は、産卵に際して苦しんでいるとか、感動しているとか想像しました。
まあ有名な話なんですが、別に泣いている訳じゃないんですよね。 目にある「塩類腺」という器官から塩分を排出しているだけで、日常的にやっていることなのです。
ウミガメが産卵時に流している涙は何?
ウミガメは一生のほとんどを海で過ごします。 肺呼吸なので時々海上に呼吸しに行く必要がありますが、産まれた直後と産卵時以外は全て海中で生活しています。
海で暮らす動物は暮らしの中で海水から塩分を沢山取り込んでいます。 ウミガメは海藻・魚・甲殻類などを食べるのですが、食事の時も海中にいるためその際に海水も一緒に飲み込みます。
海水の塩分濃度はかなり高く、人間なら200ml飲んだだけで一日の塩分摂取量を満たしてしまうほどです。 ウミガメにとっても海水が塩分過多なのは同じで、体内に取り込んだ塩分をどうにかしないと死んでしまいます。
そこでウミガメは目にある「塩類腺」という器官から塩分を排出しているのです。 具体的には塩分濃度の濃い水を塩類腺から涙のように流すことによって、体内の塩分を排出しているのです。 これは普段は海中で行っているので人間は観察できません。
そんな塩類線から塩分を排出する行為を人間が確認できるのが、ウミガメが陸上に上がる産卵時という訳です。 だから「ウミガメは産卵時に涙を流す」という話が広まったのですが、実際の所はウミガメが涙を流すのは産卵時に限った話ではなく日常的な行為です。
ちなみに海鳥や海に住む爬虫類にはウミガメのように体外に塩分を排出する仕組みを持つものが多くいます。 排出器官が鼻の近くだったり口の横だったりするので鼻水やよだれのようにも見えますが、もちろん風邪をひいてる訳でもなければおいしい物が目の前にある訳でもありません。
ウミガメは絶滅危惧種
ウミガメの産卵は5~8月頃に行われ、メスは砂浜に穴を掘って1度に数十~100以上個もの卵を産みます。 産卵後は砂をかけて穴を埋め、メスは海へと戻っていきます。
砂浜の卵は2か月ほどで孵化し、中から子ガメが出てきます。 子ガメは産まれてすぐに海を目指しますが、体が小さいうちは天敵が多く、大人まで成長できるのは100匹に1~2匹程度です。
近年はウミガメのほとんどの種が絶滅の危機に瀕しています。 人口増加による乱獲、砂浜の開発による産卵場所の減少、環境汚染やゴミ問題、気温上昇による問題など原因は様々ですが、大体人間のせいですね。
近年では保護活動も活発になっており、メキシコなど一部地域では活動の甲斐あって生息数が増えつつあるようです。 日本にとってもウミガメは馴染みの深い生物ですので、メキシコに続きたいものですね。