風邪薬で風邪は治らない
風邪をひいたら風邪薬を飲みます。 飲んだら症状が楽になりますし、飲んで寝れば風邪が治ることも多いですよね。 風邪を引いたら風邪薬を飲むのは半ば常識だと思います。
しかし実は風邪薬は風邪に効きません。 風邪薬が効いているのは風邪の症状に対してで、風邪の原因であるウイルスに効いている訳ではないのです。 だから風邪薬を飲んでも治りが早くなったりはしません。
風邪とは
風邪とは様々な原因で発熱・のどや鼻の粘膜の痛み・せきやくしゃみなどの諸症状が出る「風邪症候群」の事を指します。 特にウイルス性上気道炎を総称する言葉として使われることが多いです。
症候群とは
症候群とは原因は分からないけど共通の病態を示す患者が多い症状の集まりに名前を付けたものです。
風邪は色々な病気の初期症状として出ることが多いので、病状が進んで特有の症状が出るまでは原因特定が困難です。 そして多くの場合は病状が進む前に風邪が治ります。
例えば発熱とせきの症状が出ていたら、風邪症候群のいずれかの病気だろうと推測できるので病名は「風邪」です。 それが病院で診てもらってインフルエンザウイルスが原因だと分かったら病名は「インフルエンザ」になります。 簡単に言えば病原が特定できるまでは風邪、特定できたら病名という使い分けをします。
風邪の原因は9割がウイルスなので、多くの場合の治療にはウイルスをやっつける抗ウイルス薬が必要となります。 インフルエンザ治療薬のタミフルやリレンザが有名ですね。
抗ウイルス薬は特定のウイルスに対して効果を発揮する薬で、言い換えると特定のウイルスにしか効果を発揮しません。 例えばライノウイルスが原因の風邪にかかっている人にインフルエンザ治療薬のリレンザを飲ませても意味はありません。
何のウイルスが原因か分からない風邪症候群の人に対して有用な抗ウイルス薬は分かりません。 だから風邪を治療する薬はないのです。
風邪薬は風邪の症状を抑えるためのもの
結論から言うと風邪薬は風邪を治療する薬ではなく、風邪の症状を抑える薬です。 なので風邪薬を飲んだからといって風邪が治る訳ではありません。
それでは風邪薬は無意味なのかと言えばそうではありません。 風邪の症状が重いと辛くてまともに休息できない、ご飯を食べられない、発熱し過ぎて激しい消耗や命が危険な場合もあります。 こういった時には風邪薬を飲んで症状を抑えてしっかり休息を取るのが風邪の治療に繋がります。
ただし風邪薬が症状を抑えた結果、風邪の治療に逆効果になる場合もあります。 発熱・せき・鼻水などの症状はウイルスをやっつけ外に出す効果があるので、これらを抑えると風邪が治るのに余計に時間がかかるのです。
なので風邪薬は症状が重くて休息や栄養補給に支障が出る場合に飲むのが基本となります。 軽い風邪程度ならむしろ薬を飲まない方が好ましい場合も多いです。
なお風邪薬で風邪の症状を抑えても体内では増殖したウイルスが暴れまわっています。 この状態で外に出ると周囲にウイルスをまき散らすことになり風邪が感染してしまうので、風邪をひいたら外に出るのは止めた方が良いです。 薬を飲んで授業や仕事に出るのは周囲からすればはた迷惑でしかありません。
抗ウイルス薬の効用
抗ウイルス薬は特定のウイルスをやっつける薬です。 ウイルス性の病気の根本原因を退治し治療する薬であると言えます。
ただし抗ウイルス薬は原因となっているウイルスが特定されていないと使えないため、原因になり得るウイルスが200種以上もある風邪に効果的な薬を特定するのは困難です。 またウイルスを特定しても何百パターンも型が存在してどれが効くのか分からない場合もあります。
例えばインフルエンザにはA型、B型、C型があり、A・B型にはタミフルやリレンザが効きますがC型に効く薬はなく、またA型・B型それぞれに薬効が高い薬も違います。 同じウイルスでもパターンによって抗ウイルス薬も変わるのです。
またウイルスのパターンが多すぎて治療のための抗ウイルス薬を作るのが困難だったり、そもそも有効な抗ウイルス薬が存在しないウイルスもあります。
抗生物質の効用
抗生物質とは特定の細菌をやっつける薬で、主に細菌性の風邪と診断された時に処方されます。
ウイルス性の風邪に対して処方されることもありますが、これはウイルスによって粘膜の機能が落ちた所に取り付いた細菌の二次感染を防ぐことが目的で処方されます。
患者を安心させる意味で処方されることもありますが、この場合の効果は疑問視されています。