絶対になっていはいけない「連帯保証人」の恐怖
連帯保証人という制度をご存知でしょうか。 「親兄弟でも連帯保証人にはなるな」という格言でお馴染みのアレです。
以前は連帯保証人がバンバン破産するほどのヤバい制度でしたが、法改正により若干マシになりました。 しかしそれでも厳しい制度なのには変わりないので、連帯保証人とは何なのかを知っておきましょう。
3つの権利がある保証人
連帯保証人の前にまずは「保証人」についてお話します。 保証人とは契約者が債務を返済できなくなった場合に代わりに払う人のことです。
例えばAさんが賃貸契約する際にBさんに保証人になってもらうとします。 この時Aさんが家賃を払わないと、Bさんに請求がいくようになる訳です。
しかし契約者が払い忘れたり確信犯的に払わなかったりした時に保証人に請求されるのはおかしいですよね。 そうならないように保証人には3つの権利があります。
催告の抗弁権
債権者はいきなり保証人に請求できません。 まずは契約者に請求し、どうしても払えない時にだけ保証人に請求します。
なお契約者が行方不明または破産するとこの権利は使えなくなります。
検索の抗弁権
契約者に取立て可能な財産がある場合、保証人は抗弁して返済を拒否できます。
たとえばAさんが高級車を保有している場合に「俺に請求する前に、まずはAさんの高級車を差し押さえろ」と主張できる訳です。
分別の利益
保証人は複数人がなることも可能で、その場合は債務を人数で割った均等割り分しか請求されません。
請求額が100万円で保証人が2人いれば、1人あたり50万円しか請求されない訳です。 なので保証人が多いほど一人当たりの負担は軽くなります。
3つの権利がない連帯保証人
連帯保証人も契約者が債務を返済できなくなった場合に代わりに払う人という点は同じです。 両者の違いは保証人の3つの権利が連帯保証人にはないことにあります。
連帯保証人は債務の返済に関して、契約者本人と同じ責任を持つと言えます。 保証する側からすれば、責任が重いくせに何のメリットもないのが連帯保証人なのです。
催告の抗弁権がない
いつでも契約者を飛び越えて連帯保証人に請求が可能です。 契約者に一度も請求しないまま連帯保証人に督促がくる可能性すらあります。
実際のところは契約者が破産や行方不明にでもなっていない限り、まずは契約者に請求が行きますけどね。 なお契約者に請求するのは大した手間ではないので催告の抗弁権も大した権利ではありませんが、ないと気分が悪いのは確かです。
検索の抗弁権がない
連帯保証人が契約者に資産や財産があることを知っていても抗弁できません。 契約者が豪邸に住み高級車を乗り回して遊んでいるのを知っていても、請求がきたら連帯保証人が支払わなければならないのです。
ただし連帯保証人が支払った場合「求償権」という権利を得て、契約者に請求したり、他の連帯保証人に頭割り分を請求できるようになります。 もっとも契約者は払える状態にないことが多いですが…
分別の利益がない
債権者は連帯保証人の誰に対してでも全額の請求が可能で、しかも一括払いで請求されることが多いです。
請求額が100万円で連帯保証人が2人いた場合、債権者はどちらにでも100万円を請求できます。 保証人は人数が増えるほど負担が軽くなりましたが、連帯保証人は何人いても全く安心できません。
代わりと言っては何ですが、個人の場合に限っては連帯保証人1人あたりが負担しなければならない最大額である「極度額」が設定されます。 債務額が大きくても極度額を超えて請求されることはありません。
極度額が設定されたのは2020年のことで、それ以前は無制限に請求される恐ろしい制度でした。
連帯保証人まとめ
- 契約者の状態に関係なく連帯保証人に全額請求できる
- 連帯保証人は請求に抵抗できない
連帯保証契約には要注意
連帯保証契約は連帯保証人からすれば、債務者と同等の責任を負う割に何のメリットもありません。 「親兄弟でも連帯保証人にはなるな」という格言があるほどです。
しかし貸主からすれば貸倒れしにくくなるため、連帯保証契約を結ばせようとすることも多いです。 前述の通り連帯保証契約は重い契約なので、軽々と連帯保証契約を結ぶのは止めましょう。
契約時には保証契約・連帯保証契約のどちらかを注意してください。 そしてやむを得ず連帯保証契約を結ぶ場合は、極度額を捨てる覚悟で挑みましょう。