都市ガスやLPガスは本来無臭で、事故防止のために臭い付けしている
ガスを使う際にガス漏れがすると凄く嫌な臭いがして吐き気がこみ上げてきます。 このことからガスは酷い臭いがするものってイメージがありますよね。
しかし実は我々が日常生活で使っているガスは本来無臭で、あの嫌な臭いはわざわざ人の手で付けています。 ガスが漏れにすぐ気が付けるようにワザと悪臭をさせているんですよ。
我々が使う天然ガスの多くは本来無臭
都市ガスやLPガスなどの我々が日常生活で使っているガスの多くは本来無臭です。 当初は臭いを付けたりせずにそのまま使っていたのですが、そのせいでガス漏れに気付かずに大事故に繋がった事件がありました。
無臭の天然ガスに臭いを付ける契機となったのが、ニューロンドン学校爆発事故です。
ニューロンドン学校爆発事故
1937年にアメリカのテキサス州ニューロンドンの学校においてガス爆発による事故が起きました。
学校は暖房費の経費削減のために石油会社が廃棄していた天然ガスを使うことにして、天然ガスの廃棄ラインに配管を繋げて天然ガスを引っ張ろうとしました。 (当時は廃棄される天然ガスは廃棄物と見なされており、節約のためこのような手法で引くことがままあったようです) しかし接続作業が上手くいっておらず、接続部からガス漏れが発生する事態となりました。
天然ガスは無臭なため、ガスが学校中に充満していっても誰も気づくことはありませんでした。 頭痛を起こした生徒はいたようですが、それがガス漏れによる一酸化炭素中毒の症状だとは気付かれませんでした。
やがて電気を付けた時に発生した火花から引火したガスは大爆発を起こし、300人以上の死者を出す大事故に繋がりました。 この事故を教訓としたテキサス州はガス漏れにすぐに気付けるようにガスに臭いを付けることを義務化し、それが世界中に広がっていったのです。
臭い付けに使われたのはチオールという有機化合物で、生物が腐敗した時などに生成されます。 我々はチオールをとんでもない悪臭だと認識し、空気中にほんの少し混じっているだけでその臭いに気付きます。
ガス会社はそんな人間の習性を利用して、ガス漏れをすぐに検知できるような臭いを付けた訳です。 それによってガス濃度が空気中の1/1000程度でも我々は悪臭を感知し、ガス漏れだと気付くことができるようになったのです。
進化する付臭剤
天然ガスに臭い付けをする付臭剤は大よそ以下の要件で作られています。
- 人体に毒ではない
- 一般に存在する臭い(生活臭)と明瞭に区別できる
- 危険を知らせるためにやや不快な臭いを有し、微量でもガス漏れと分かる
- ガスが燃焼した後に臭いが残らない
- ガス管などを腐らせない
しかし付臭剤には微量ながら硫黄が含まれているため、環境への若干の悪影響がないとは言い切れません。 なのでなるべく環境にクリーンな成分となるよう研究が進められています。
例えば東京ガスでは2009年に付臭剤成分を変更したことで、不快な悪臭はそのままに含まれる硫黄成分を半分に減らしています。 環境にやさしい悪臭物質とは何だか矛盾しているように思えなくもないですが、まあそんな感じで研究が進められて付臭剤は日々進化しているのです。
都市ガスとLPガスの違い
ガスと言えば我々の周りには都市ガスとLPガス(プロパンガス)があります。 一体何が違うのかをついでに見てみましょう。
都市部にお住まいの方はそもそもLPガスの存在自体を知らないかもしれませんが、ガス管が整備されていない田舎などでは、ガスは専用の容器に詰められて各家庭やお店に配送されています。
都市ガスとLPガスの違いは色々ありますが、利用者目線での違いを中心に紹介します。
供給方法
都市ガスとLPガスの最大の違いは供給方法です。 都市ガスはガスホルダー(大きな球体)に貯められガス管を通って各家庭に供給されるのに対し、LPガスは容器に詰めて各戸に配送されています。
都市ガスを供給するには配管の整備が必要であるため、ある程度人口密度が多い都市でないとコストの関係で導入が難しい事情があります。
料金
LPガスの方が割高で、ガス料金は5~8割ほどの差があります。 ガス料金を安く抑えたいなら都市ガスが整備されている物件を選んだ方が良いです。
都市ガスは公共料金として安く抑えられる一方で、LPガスの料金は事業者が任意に設定します。 LPガスは運用コストがかかるのに加えて人口の少ない田舎で利用されているので、それが価格に転嫁されて割高となっています。
熱量
LPガスの方が熱量が強く、およそ2倍の違いがあります。 そのため飲食店などでは都市ガスが整備されていても好んでLPガスが使われることもあります。
重さ
都市ガスは空気より軽く、LPガスは空気よりも重いです。 なのでガス探知機は都市ガスは天井付近に、LPガスは地上付近に設置します。
またガス漏れが発生した場合、都市ガスは窓を開けて拡散させれば良いのに対し、LPガスは床付近に貯まったガスをほうきで外へ掃き出す必要があります。
以上、ガスの豆知識でした。