服が水に濡れると色が変わるのは光の動きが変わるから

真夏に汗をかくと汗で服が濡れて色が変わります。 特に灰色の服は汗染みが目立つので、夏はなるべく汗染みが目立たない白や黒の服を買うことが多いですね。

そういえば汗で色が変わると言っても、大きく変わるものと大して目立たないものがあります。 それに白いシャツなどは濡れると地肌が透けて見えるのも変な話です。

これは一体なぜなのかと言えば「光の屈折率」が関係しています。 濡れることで光の反射・吸収作用が変わり、それによって色が変わっているのです。

そもそも色とは何か

我々が認識している色とは、物体に当たって跳ね返った光のパターンです。

光には波長があり、その長短で我々の目は色を認識しています。光の波長が長ければ赤く、普通なら緑に、短ければ青く見えます。 赤と緑の間ぐらいの波長ならその中間である黄色に見え、赤と緑の光を同時に見たら混ざった色である黄色に見えます。

この赤・青・緑の3色は「光の三原色」と呼ばれ、これを混ぜることで人間が認識できる全ての色を作ることができます。 ちなみにウェブサイトの色も赤・青・緑を混ぜて表現しているんですよ。

なぜ光の波長を色として認識しているのかと言えば、人間の目がそうなっているからです。 人間の網膜には「錐体」という光の波長を色として認識する細胞があり、赤錐体(L錐体)は長波長の光を赤く、緑錐体(M錐体)は中波長の光を緑に、青錐体(S錐体)は短波長の光を青く認識します。

太陽の光には色々な波長を持った光が含まれており、そのまま見ると全ての色が混ざった白色に見えます。 この白い光が赤いリンゴに当たった時、リンゴは長波長の光を反射し、中・短波長の光を吸収しています。 これによりリンゴからは赤い長波長の光線が反射され、我々の目は「リンゴが赤い」と認識する訳です。

これが中波長を吸収して長・短波長を反射すれば赤と青を混ぜた紫色に見えますし、全ての光を吸収すれば黒色に見えます。 なので色とは「物体に光を当てた時に長・中・短波長の光をどのように跳ね返すか」であると言えます。 「白は光を反射する」「黒は光を吸収する」なんて言いますが、これは「光を反射しているから白い」「光を吸収しているから黒い」の方が実態に即しています。

服が濡れると色が変わる理由は光

前項で色とは物体が光をどう反射させるかと言いました。 服が濡れると色が変わるということは濡れることで光の反射・吸収作用が変化したということです。

服が濡れると黒くなるのは乱反射が抑制されるから

例えば灰色のシャツを着ている時に汗をかいた場合、水に濡れた場所が黒っぽくなります。 黒く見えるようになったということは、光を吸収するようになったということですね。 これは乱反射しなくなったことが要因です。

物体の表面は人からすれば平らに見えるものでも、拡大してみるとかなりデコボコになっています。 デコボコなものに光が当たると色々な角度で反射し、これを乱反射と言います。 乱反射には物体の色を本来よりも白く見せる働きがあります。

表面がデコボコの物体を水に濡らすと表面がコーティングされてデコボコが抑制されます。 すると乱反射せずに正反射される光が多くなり、物体の本来の色が浮かび上がってきます。 つまり灰色のシャツは濡れると黒くなるというより、乱反射で白く見えていたものが本来の色になると言えます。

乱反射で色が変わる分かりやすい例にかき氷があります。 削る前の氷は透明ですが、細かく削ってかき氷にすると白くなりますよね。これも光の乱反射による作用です。 物体を細かくすると光を乱反射しやすくなり、そのため白く見えるんですね。

他にも牛乳、雲、雪なども乱反射によって白く見えています。

白い肌着が濡れると透けるのは散乱が抑制されるから

白い肌着は水に濡れると透過して地肌が見えるようになりますが、これは光の散乱(反射)が抑制されるために起きる現象です。

シャツは拡大して見るとすき間だらけで、繊維のすき間には沢山の空気を含んでいます。 これが濡れると繊維の間にあるものが空気から水になりますが、水の屈折率は空気よりも高いです。

繊維⇔空気よりも繊維⇔水の方が屈折率の差は少なく、屈折率の差が少ないと光の散乱が生じにくくなります。 しかし白は光を吸収しないので、吸収も反射もされなかった光は透過します。 透過した光はシャツを貫通して地肌に当たって跳ね返ってくるので、肌が透けて見えるようになる訳です。

汗ばむ時期には濡れても目立たない色の服を選ぼう

服が濡れると基本的に白は透過して黒は変わりません。 だから服の色が白か黒なら濡れてもあまり目立ちませんが、それを混ぜて作った色はよく目立ってしまいます。 灰色の服を濡らすと目立つ濃い色になるのは、白い繊維が透過して黒い繊維が目立つようになった結果です。

濡れた部分が最も目立つのは灰色で、他にも白以外の明るい色の服は濡れると目立ってしまいます。 暑い日の汗染みが気になる時期は、白または暗めの色の服を着た方がいいかもしれませんね。

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