マラソンが42.195kmなのは「ドランドの悲劇」があったため

marathon

寒くなると長距離走の季節となります。 長距離走は20℃ぐらいの気温でも暑すぎるため、冬になってから始まるのです。

長距離走の花形とも言えるのがフルマラソンで、その距離は42.195kmと結構な距離です。 一般人なら6時間、一流選手でも2時間以上の長丁場であり、完走は一種のステータスでもあります。

しかしこの距離、なんとも中途半端な距離ですよね。 どこからこんな細かい距離が出てきたのかと言えば、第4回大会のロンドンマラソンです。 つまりはロンドンマラソンの距離を正式距離として採用しているのです。

ではなぜロンドンマラソンの距離が正式距離となったのかと言うと、世界的に有名な出来事である「ドランドの悲劇」による部分が大きいです。

マラソンの歴史

Marathon War

マラソンはギリシャのマラトンで起きた「マラトンの戦い」に由来します。 アケメネス朝ペルシアの強大な侵攻軍に対するは、アテナイ・プラタイアの2都市国家。 マラトンの地にてアテナイ・プラタイア連合軍はペルシア軍を迎え撃ちます。

戦力に劣るアテナイ・プラタイア連合軍でしたが、ギリシャお得意の重装歩兵陣で中央戦線を支えつつ両翼からの突撃で大勝利を収めます。 連合軍の兵士エウクレスは勝利の報を一刻も早く届けるため、武装したままマラトンから40km離れたアテナイまで全力で駆け抜けます。 そして「我々が勝利した!」と伝えて絶命したと言う話です。

これに倣って第一回オリンピックでマラトン古戦場からアテネ競技場への競争が出来たのがマラソンの始まりです。 しかし当初は距離の規定は「大よそ40km」とされており、第7回大会までは40km前後のコース設定でした。 またマラトン-アテネ間も42.195kmという訳ではありません。

それでは42.195kmがどこから出てきたのかと言えば、7回までの歴代大会で2番目に長い第4回のロンドン大会の距離に当たります。 この大会に起きた「ドランドの悲劇」により、マラソンの正式な距離が決まったと言っても過言ではありません。

London Marathon

ドランドはイタリアのマラソンランナーで優勝候補筆頭でした。 他のランナーをグングン引き離し、ダントツのトップで競技場に入り残り400mという所まで来ました。 しかし限界まで体を酷使していたドランドは正しいゴールが分からないほど疲労し、そこがゴールと思って倒れてしまいます。

運営委員に指摘されほうほうの体で進むドランドは、疲労困憊して何度も倒れながらも進み、運営委員の手を借りてフラフラの体ながらもゴールします。 最後の400mに10分以上かかったものの、それでも一位でゴールとなりました。 しかし2位のアメリカから「運営委員の助けを借りて走った」と異議申し立てがあり、ドランドは失格となってしまいます。 こうして「ドランドの悲劇」となったのです。

しかしこの最後400mのやり取りは世界中に感動をもたらし、一大ムーブメントとなりました。 そして第8回大会以降に「距離を統一しよう」と話が出た際、ロンドンマラソンの距離である42.195kmがマラソンの正式距離として採用されたのです。

なおこのロンドンマラソン「元々の距離はもっと短かったが、宮殿スタート-競技場の皇室用席前をゴール地点とするようイギリス女王より要請があった」という説があります。 真偽のほどは分かりませんが、もし話が本当だったらマラソンの距離は「約40km」のままだったかもしれませんね。

マラソンコースによってもタイムは左右される

Scorchingsun-marathon

マラソンには色々なコースがありますが「コースによってタイムが変わったりしないのだろうか」と誰もが一度は考えると思います。 一応タイムがばらつき過ぎないように規定はあるものの、良いタイムが出やすいコースはあります。 どんなコースが走りやすいか、少し掘り下げてみましょう。

マラソンコースは正確に42.195kmにするのは無理なので誤差が許されており、長くなる場合に限り誤差0.1%内に収めれば問題ないとされています。 42kmの0.1%は42mぐらいなので、トラック1/10周ぐらいは違うかもしれない訳です。 なお42.195kmに1mmでも足りなければ非公認となるため、全てのコースは余裕を見てちょいと長めに作られています。

またスタート地点とゴール地点の標高の減少は1/1000以下、スタート地点とゴール地点の距離は直線で競技距離の半分以下とされています。 これは下り坂だらけや追い風だらけだと良いタイムになるので、それを防ぐためのルールという訳です。 ただ高低差は帳尻が合えばOKなので、アップダウンのあるなしはコースによりけりです。当然平坦なコースの方が良い記録が出やすいです。

また同じコースだとしても天候・気温によってもタイムが左右されます。 雨が降ったら走り難いのは当然ですが、晴れていても湿度が高いと汗が乾きにくく、低すぎると喉が渇きやすくなります。 気温は10℃±5ぐらいが最適で、そこから離れるほどタイムが落ちます。

2016年時点では男子マラソンの上位9記録はベルリンマラソンとロンドンマラソンの記録です。(記録保持者は全員違います) 女子マラソンもおよそ似たような傾向があり、野口みずき選手が日本女子マラソン記録を作ったのもベルリンマラソンです。 なのでベルリンかロンドンが好タイムを出しやすいコースなのではないでしょうか。

得意コースやコンディションは個人差もあるので「これがベスト」とは断言できませんけどね。 中には炎天下や氷点下のフルマラソンもありますが…当然記録は通常のものと比べて随分遅いです。

ちなみにマラソンの起源であるギリシャでは毎年11月にアテネクラシックマラソンが開催されています。 厳しい登り坂のあるコースで走り難く、優勝者のタイムも他の大会と比べて遅めです。 こんなコースを装備そのままで走ったマラトンは偉大ですね。

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