ゴルフボールがボコボコしてる理由は「よく飛ぶ」から
世の中には色々な球技がありますが、大抵のボールは表面が滑らかです。 そんな中でゴルフボールはボコボコだらけで異彩を放っています。
ゴルフボールだけがボコボコしている理由はその方がよく飛ぶためです。 このボコボコで空気抵抗を抑制することで、遠くまで飛ぶ仕組みになっています。
ゴルフボールはくぼみがある方がよく飛ぶ
ゴルフボールのくぼみのことをディンプルと言います。 英語でえくぼや小さなくぼみのことを表す言葉ですね。
ゴルフボールの表面には300~500個ほどのディンプルがあり、これはボールの空気抵抗を減らす目的で付けられています。 ボコボコの表面だとむしろ空気抵抗が増えそうなイメージがありますが、半分正解で半分間違いです。
滑らかな表面のボールだとボール側面の空気抵抗は少ないです。 しかしボール後方にできる空気の渦がボールを後ろに引っ張って飛距離を縮めます。
ボコボコの表面のボールだと空気がまとわりついてボール側面の空気抵抗は増えます。 しかし側面にまとわりついた空気の渦がボール後方の空気の渦を抑制し、後ろに引っ張られにくくなります。
結果としてボコボコしているボールの方がよく飛ぶ訳です。
ディンプルの歴史
新品よりも使い古しのボールの方がよく飛んだ
ディンプルが作られるようになったのは19世紀中頃です。 当時のゴルフボールは天然ゴムを加工して作られており、表面にペンキを塗って滑らかにしていました。
人々はこのボールを使ってゴルフをプレイするうちに、使い古したボールの方がよく飛ぶことに気付きました。 表面がツルツルの新品よりも、傷だらけの使い込んだボールの方がよく飛んだ訳です。
それならば最初から傷をつけて新品でもよく飛ぶようにしようと、新品のボールに縦横の傷が付けられるようになりました。 これがディンプルの始まりです。
よく飛ぶゴルフボールの開発競争が起きた
それからゴルフボールメーカーは表面に色々なパターンの掘り込みを付け始めます。 「我が社のボールこそが最もよく飛ぶ傷を掘り込んだボールである」と競争を始めたのですね。
当初はゴルフボールを傷つけて表面にデコを作っていましたが、やがてデコよりもボコの方が効果が高いことが分かります。 それからはボール表面をボコボコにする加工が施されるようになり、大よそ今のゴルフボールの形になったのです。
ゴルフの技術は長い歴史の中で洗練されてきましたが、同時にゴルフ道具もまた進化を続けているのです。 ついでなのでゴルフボールの歴史についてもお話します。
ゴルフボールの歴史
木製ゴルフボール
ゴルフが始まったのは1400年頃と言われており、最初は固い木を丸めたものがゴルフボールとして使われていました。
ボールは手作りで完全な球体ではなく、それを固い木で作ったクラブで打っていました。 同じように打ってもあっちに行ったりこっちに行ったりで、精度の高いプレイは不可能だったことでしょう。
革製ゴルフボール
17世紀になると羽毛を革で包んだ革製のボールが作られます。
これは従来のものと比べて狙った方向に遠くまで飛ぶ優れたボールで、やがてこちらのボールが主流となりました。 しかし作るのに時間がかかり、壊れやすい上に高価という欠点がありました。
天然ゴム製ゴルフボール
19世紀中頃になると、天然ゴムを加工したボールが作られるようになります。
更に遠くまで飛ぶようになったのはもちろんのこと、価格も手ごろになってゴルフが大衆に広まるきっかけとなりました。 ゴルフボールの表面に傷を入れるようになったのはこの頃です。
ハスケルボール
そして19世紀の終わり頃、ひと昔前のゴルフボールの原型と言える「ハスケルボール」が開発されます。
ハスケルボールは芯に糸ゴムを巻いてバラタ製カバーで覆う「糸巻きバラタボール」とも呼ばれ、1990年代頃まで使われていました。 しかしハスケルボールは安定性に難がありスピンがかかり過ぎるのが欠点でした。
ソリッドボール
やがてハスケルボールは、ゴムで組成されたソリッドコアにカバーをした「ソリッドボール」にとって代わられます。
ワンピースとかツーピースとか色々ありますが、頭の数字はソリッドコアを何重のカバーで覆っているかを表しています。 ソリッドボールが台頭した頃はツーピースが主流でしたが、段々と数字が増えて今はファイブピースなんてのもありますね。
進化し続けるゴルフボール
メーカーはより遠くより正確に飛ばせるゴルフボールを開発するため日夜しのぎを削っています。 ゴルフボールは今もなお進化し続けているのです。