究極の省エネ動物ナマケモノの驚きの生態
ナマケモノと言えば、普段木の上でじっとして動かない「怠け者」です。 観察してこれほどあくびが出る動物は他にいないでしょう。
どうしてこんなのが今日まで生き残ることが出来たのかと言えば、究極の省エネ生物だからなんです。
ナマケモノの驚きの省エネ体質
ナマケモノは最も睡眠時間の長い動物で、1日のうち18時間を寝て過ごします。 1日中木の上で起きている間も特に何をする訳でもなく、葉を数枚ちぎっては食べるぐらいです。 トイレすら数週間に1度しかしません。
体質もかなり気合が入ったナマケです。 ナマケモノは頭が小さく、脳みそも同じく小さいです。おかげで無駄に物を考えてカロリーを消費することがありません。 人間なんて脳だけで1日400kcalも消費するので、ナマケモノが人間の脳を持ったら飢え死に待ったなしです。
食べ物の消化も大部分はバクテリアに分解してもらい、自分ではあまり消化しません。 体の大きさの割に筋肉が少なく、体温も30℃ぐらいで、とにかく基礎代謝が低いです。
この驚きの省エネ体質で、1日に必要な食料はわずかに葉っぱ数枚です。 同じく省エネ動物であるコアラと比べても、必要な食料は数十分の1程度しかありません。
この省エネ体質でナマケモノは厳しい生存競争を勝ち残ってきたのです。 もしもナマケモノの知能や身体能力が高かったら、その分余計にエネルギーが必要になってこのような生態は成り立たず、とっくに絶滅していたかもしれません。
あんなに怠けてて自然界で生きていけるの?
ナマケモノの体は木の葉と同じ保護色でほとんど動かないことも相まって、捕食者がナマケモノを見つけるのは容易ではありません。 また大抵は樹上にいるため、天敵のオセロットやジャガーなどは見つけたとしても手が届きません。
そんなナマケモノが捕食される危険が高いのは排便時です。 ミツユビナマケモノなどは排便の際に、木の幹の辺りまで降りてきます。 その際に落下したり肉食動物に襲われる危険性があり、死因の半分はトイレ関連死となっています。
なぜわざわざエネルギーを使って危険を冒してまで低所で排便するのかと言えば、共生関係にある蛾と関わりがあります。 ナマケモノの糞の中に蛾が卵を産み、蛾は成長するとミツユビナマケモノの毛の中で交尾します。 その際にナマケモノの体に栄養分が蓄積され、それを使って体に苔が生え、苔はミツユビナマケモノの貴重な栄養になります。 その蛾に自分の近くで繁殖して貰うために、狙った場所に排便すべく降りてきているんですね。
なおナマケモノはワシなどの猛禽類も天敵であり、こいつらに見つかると樹上にいても割とどうしようもありません。 ナマケモノの生息地付近にいるワシの主食はナマケモノです。
怠けで天敵も多いナマケモノですが、それでも今日まで生き延びています。 ナマケモノが怠けているのはダルいからではなく、生存する上で最適な行動が怠けという訳なのです。