経験のない方が自己評価が高くなる「ダニングクルーガー効果」
誰もが一度は「自分は大成できる」「自分の方がうまくやれる」と考えたことがあると思います。 何の経験もない分野で自分が取り立てて優れた能力を持っていなくとも、なぜか「自分はうまくやれる」と思ってしまいます。
「何の能力も経験もないのに自信がある」のは一見矛盾した事のように見えますが、普通の人間が持ちうる心理なのです。 「根拠のない自信」という言葉がありますが、むしろ「根拠がないから自信がある」と言った方が正確かもしれません。 これを「ダニングクルーガー効果」と言います。
ダニングクルーガー効果とは
ダニングクルーガー効果とは、経験がない人間の方が自己を高く評価することを表したものです。 勉強・仕事・スポーツ・芸術・政治・プログラミング・ゲーム・容姿・性格・コミュニケーション能力・トークスキル・印象・子育て・女子力など、とにかく何にでも当てはまります。
この錯覚はどんな能力が必要かすらよく分からない無知なものほど起きやすいです。 例えば野球の能力を過大評価する順に並べると「スポーツ未経験者>サッカー経験者>ソフトボール経験者>野球経験者」と野球に関する経験が低いほど実力の過大評価が起きやすいです。 しかし野球に関する能力は「野球経験者>ソフトボール経験者>サッカー経験者>スポーツ未経験者」と真逆ですよね。
野球と言うとメジャー過ぎて未経験者でも錯覚し難いですかね?じゃあカーリングならどうでしょうか。 何となく自分にもできそう・秘められた能力がありそう気がしませんか?実際は真っすぐ投げるのも結構難しいんですけどね。
自分の知らない分野の事はどのような能力がどれだけ要求されるのか全くわかりません。 つまりは自分の立ち位置も他人とどれだけ能力に開きがあるのかも理解できません。なので自分の能力を錯覚して過大評価してしまうという訳です。以上がダニングクルーガー効果の話です。
そして意気揚々とチャレンジしてみると自分に秘められた才能なんてものはなく、それどころかまともな処理能力すらないことに気付かされます。 やる前は高い位置にあった根拠のない自信が底まで落ちてしまう訳ですね。
しかしある程度経験を積むと、自信はまたジワジワと伸びてきます。 これは経験に応じて能力が向上していくからです。そしてやがては能力相応の自信を持つようになるという訳です。
ただし上級者となってもなお自己評価が低いこともあります。 これは上級者であるが故に自分のできない事や自分よりも上手の人が明確に分かり「自分は大したことない」という評価に落ち着いてしまうからです。
近所で抜群に凄い人が地区大会に集まり、地区大会で抜群に凄い人が県大会に集まり、県大会で抜群に凄い人が全国大会に集まり、全国大会で抜群に凄い人が大陸大会に集まり、大陸大会で抜群に凄い人が世界大会に集まり…とまあ、どれだけ凄くても世界チャンピオンでもない限りは上には上がいるものです。全国大会の出場選手なんて近所ではその道において無敵の存在ですが、それでも上を見れば何十何百と更なる強豪がひしめいています。
一般人から見ればとんでもなく能力がある人でも、大抵はどこかしらで挫折を味わうことになります。 学校で一番野球が上手でもプロ野球選手になるのは難しいですし、プロとして大成するのは更に難しいです。 そんな人が「自分は大した事ない」と思ってしまうのも分からない話ではないでしょう。
逆に大した能力がない人でも「俺はやればできるんだ」と密かに思って根拠のない自身に溢れている事も珍しくはありません。 大した成績でもないのに「俺は真面目に勉強すれば東大にだって入れる」なんて自分の学力に自信を持っている人、クラスに1人はいませんでしたか?
それを考えると自信の有無だけで相手の能力を測るのは難しいのかもしれませんね。 自信満々の人の話を聞くときは、それが能力に裏打ちされたものなのか、はたまた無知による根拠のない自信なのかは冷静に見るべきでしょう。
根拠のない自信と上手く付き合おう
「根拠のない自信」は悪い言葉のように聞こえますが、決してその限りではありません。 チャレンジ精神やモチベーションに繋がるし、自信がある状態で取り組んだ方が成果も上がります。
逆に「根拠のない自信」がネガティブに働くこともあります。 未熟なまま周囲を見下すのは滑稽ですし、慢心して努力を怠れば成長できません。
「根拠のない自信」は上手く使えば薬に、下手に使えば毒になります。 「根拠のない自信」と上手く付き合って「根拠のある自信」に変えましょう。