ナマズは全身が舌の機能を持っている
のっぺりした顔とヒゲが特徴のナマズ。 日本では数少ない淡水に棲む大型の肉食魚で、とても大食らいです。
このナマズ、実は全身が舌の機能を持っています。 我々が目や鼻で感じていることを、代わりに味で感じているのです。
ナマズは味で獲物を探す
食べ物の味を確かめる器官を味蕾と言います。 これが多いほど味に関して敏感です。
人間の味蕾は舌に約1万個あり、加齢とともに減少していきます。 それでナマズはというとなんと20万個もの味蕾を持っており、しかも体表にも持っています。
ナマズは夜行性であるため、あまり目を頼りにできません。 そこで全身の味蕾を使って「味」を頼りに獲物を探すのです。
エサとなる小魚、昆虫、爬虫類の出すアミノ酸やカルボン酸を探知して大まかな方向を割り出し、更に全身の味蕾に味が届く時間差で獲物までの距離も割り出します。 ナマズの味蕾は高性能なレーダーなのです。
ナマズは成長すると体長60~70cmとなり、日本の淡水における食物連鎖の頂点に君臨しています。 そんな巨大肉食魚のエサを探す手段となっているということからも、味蕾レーダーの優秀さが見て取れます。
動物の味蕾の数
味蕾の数は動物にとっての「味」の重要性で変わります。 例えば草食動物は植物が毒を持っていることがあるので、味蕾によって食べられるかどうかを判別するために味蕾が多いです。 逆に獲物を丸のみするようなヘビなどは味を感じる必要があまりないため、味蕾が少ないです。
以下が代表的な動物の味蕾の数です。 草食動物に多く、肉食動物に少ない傾向があります。
- ナマズ:20万個
- ウシ:2万5千個
- ウサギ・豚・ヤギ:1万5千個
- 人:1万個
- 犬:2000個
- 猫:500個
- ヘビ・魚:200個
味蕾が多いほど味がよく分かり、逆に少ないと味オンチです。 人間の味覚は「甘味・塩味・酸味・苦味・うま味」の5つですが、犬や猫はうま味を感じることができません。 犬に昆布だしを舐めさせても「うーん、しょっぱい!」としか思わないのです。
味蕾が少ない動物は生きていくのに味を感じる重要性が比較的低かったり、他の感覚器官で補ったりしています。 例えば犬や猫は味よりも臭いで食べられるかどうかを判断します。
逆に味蕾が多いと人間が感じていないような味の違いまで分かるということです。 人間は舌だけで食べられるかどうかを判断するのは難しいですが、草食動物はきっちり毒草を避けます。 牧場でウシが食事をした後に毒性の植物だけが残されていますが、これは味で食べられるかどうかを判断して食べるのを避けているのでしょう。
ナマズの味蕾は人間や草食動物よりも遥かに多いですが、どのような世界が見えているのでしょうか。 でも全身に味蕾があると味わいたくもないものまで感じてしまいそうで、なんだかあまりうらやましくはありませんね。