好き嫌いの最初は本能。好みは経験と学習で変わる

cake

子どもはケーキなどの甘いものが好きでピーマンやニンジンなどの苦い食べ物が苦手です。 イヌやネコには可愛いと近づき、ヘビやハチは気持ち悪いと嫌います。

中にはそうでもない子もいますが、大体の子の好き嫌いはおおよそ似通ったものになります。 子は特に本能的な行動が強く出るので、本能が欲するものには近づき、拒絶するものは受け付けないようになっているのです。 しかしこの本能的な取捨選択は、経験と学習により克服できます。

人類の本能と歴史

Vegetables

乳離れしたばかりの2人の子どもがいるとします。 片方は好き嫌いが全くなく、子どもが嫌うピーマン、ニンジン、トウガラシなども平気で食べます。もう片方は苦いものや辛いものは大嫌いで食事の際にはきっちり避けて食べます。 さて、どちらの子が好ましいと思いますか?

食物が管理されている現代社会においては、好ましい子は何でもよく食べる子です。 しかし生物として見た場合、苦いものや辛いものを気にせず食べてしまうのは危うさを孕んでいるのです。

苦味や辛みに反応して吐き出すのは、要は毒を飲み込まないための防衛機能です。 そういったものでも平気で食べてしまう子は、言うなれば毒を気付かずに食べてしまう子でもあります。 だから子どもがピーマンやニンジンを嫌いなのは自然なことなのです。

食べ物だと実感が沸きにくいかもしれませんが、大きな熊、毒を持つヘビ、高い場所などを恐れない子だったらどうでしょうか。 こういったものは近づくことすら危険であり、本能的に嫌うべきものなのです。

かつて人類は進化する歴史の中で、本能的に大型肉食獣を恐れないもの・毒蛇を何とも思わないもの・高い場所を恐れないものが生まれてきました。しかしそれは危険を危険と認識できないことを示し、子孫を残す前に死んでしまったものが多くいました。そして危険なものを嫌う本能を持つ人間ほど多く生き残ることができ、多くの子孫を残して繁栄しました。

人類がイヌやネコの事を好きな人が多いのも、かつてはイヌネコの存在が人類の繁栄に有利に働いていたからです。 今は愛玩動物のような立ち位置のものが多いですが、かつてはその存在が人類の繁栄に大きく寄与していたんですよ。 特にイヌなんて、他のヒト属と競争のさなかにあったホモサピエンスの繁栄を決定づけた存在なんて言われているぐらいです。

色々な本能を持つ人間が生まれ、環境に適応できないものは淘汰され、より環境に適応できるものが繁栄していきました。 苦いものを何とも思わない人間は毒を食べて死に、毒蛇を恐れない人間は毒蛇に噛まれて死に、高い場所を恐れない人間は落ちて死にました。 逆にそれら危険なものを拒絶する本能を持つものが今日まで生き残って繁栄を築きました。

そうして長い歴史の中で醸成された、自分に都合の良いもの・悪いものを「好き・嫌い」として本能に刻み込んだのが今日の我々なのです。

本能を学習で上書きする

instinct

本能的な好き嫌いにより、人はそれが自分にとって都合が良いのか悪いのかを判断できます。 変な本能を持っていれば今までに淘汰されているはずですし、ある程度の信頼は置けます。

しかし本能による分別はかなり大雑把なものであり、全てを本能で片付けてしまうのは損になります。 例えば甘い食べ物ばかり食べていれば太って不健康になりますし、苦い野菜には豊富な栄養が含まれており食べないのは栄養面で見て損です。

そんな先天的に持っている「好き・嫌い」をより高い次元の「損・得」に昇華するのが「経験と学習」です。 例えば苦い食べ物であれば、習慣的に食べ続けることによって脳が「食べられるもの」と判断し、味覚が苦味を受け入れてくれるようになります。

ヘビを見ても猛毒を持つヘビでなかったら必要以上に恐れなかったり、高い場所でもしっかりした足場とフェンスがあれば平気だったりします。 これらも経験や学習によって「安全である」と判断して本能を克服した例ですね。

人類は学習能力が高いので、成長するにつれて本能よりもずっと優れた習性を身に着けていくことができます。 「好きだから・嫌いだから」だけで判断していては何も成長しませんし「本能だから仕方ない」で片付けるのは言い訳でしかないのです。 学習と経験によって優れた習性を獲得していくことこそが人の成長に繋がるのです。

ただし本能を頭ごなしに否定することはストレスにも繋がります。 いくら体に良い食べ物でも不味いものは不味いですし、絶対に落ちない高所だとしても怖いものは怖いです。 本能を頭ごなしに否定するのではなく、上手く折り合いを付けていきましょう。

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