ナメクジは塩だけでなく砂糖でも退治できる
ナメクジに塩をかけると、縮んでいってやがて死んでしまうというのはよく聞く話です。 しかし実は砂糖でも退治できるのです。
なぜならばナメクジが塩で死ぬ理由は塩自体の作用ではなく浸透圧によるものだからです。 なら塩ではなく砂糖を使っても同じように退治できるという訳です。
ナメクジが塩で死ぬ理由は浸透圧によるもの
ナメクジ云々の前に、まず「浸透圧」とは何かを説明します。
「浸透圧」とは濃度が違う液体を半透膜で区切ると、均一な濃度になろうと濃度の低い方が高い方に浸透しようとする力のことです。 まあ濃度が薄い方が濃い方に混ざろうとする性質があるぐらいに考えておいてください。
さて、ナメクジの体表は体の乾燥を防ぐ粘液で覆われています。 ナメクジに塩をかけると、粘液と塩が混じって濃い液体である「塩入り粘液」が出来てしまいます。 ナメクジの体液は塩入粘液より濃度が薄いため、体内の水分が体外に引っ張られてしまいます。 そうして体内の水分を失っていき、やがては干からびて死んでしまうのです。
つまりナメクジが塩で死ぬのは塩そのものが害なのではなく、塩をかけることにより濃度の高い液体が体表を覆い、浸透圧による脱水作用が起きるためなのです。 つまりは塩でなくとも同じことが可能で、砂糖や酢などをかけても塩と同じように浸透圧で体内の水分を失って縮んでいきます。
他に効果があると言われるのは胡椒、小麦粉、片栗粉などですが…これは浸透圧ではなくこれらが持つ吸水作用の働きによるものでしょうね。 まあ結果として塩をかけた時と同じように脱水させて退治できます。
他にもビールやワインを容器に入れて置いておくといいと言われていますが、これはエサとしてちらつかせて中に誘い寄せ、溺れさせるためのものです。 なので直接かけて効果があるかは不明です。多分簡単には退治できないんじゃないかな…?
ともかく、そんな感じの理由でナメクジは砂糖、塩、酢、醤油、ソース、胡椒、小麦粉、片栗粉などでも退治できるのです。 調理場で見つけたらその辺にあるものをぶっかけてやれば大抵退治できるでしょう。
浸透圧の影響があるのはナメクジに限ったことではない
浸透圧により水分が入ってきたり出て行ったりするのは、何もナメクジに限った話ではありません。 人間、魚、野菜や果物などにも当然起こります。
例えばサウナでは皮膚に塩を塗ることがありますが、この状態で汗をかくと体表が体液よりも濃い塩水に覆われることとなります。 こうすると浸透圧によって体内の水分がより外に出ていこうとします。
まあ普通の生き物は水分を簡単に蒸発させない防衛機能を持っているので、ナメクジのように塩かけただけで死ぬのは珍しいです。 強いて言えば唇や舌などの粘膜に塗ると、肌よりも強く浸透圧による脱水作用が働きます。
淡水魚が海水で生きていけないのも、海水魚が淡水で生きていけないのも、浸透圧に依る所が大きいです。 体液より薄い淡水(=水分がしみ込んでくる)に住む魚は水分の排出、体液より濃い海水(=水分がしみ出していく)に住む魚は水分を取り込む仕組みが必要になります。多くの魚はどちらかの機能しか持たないために環境が変わると生きていけないのです。
野菜や果物に塩・砂糖をまぶして脱水するのも浸透圧を利用したものです。 そうしてできるのが漬物やジャムですね。
浸透圧は結構身近な存在なのです。