思い込みが実際に身体に作用する「プラシーボ効果」
「病は気から」という言葉があります。 たとえ健康な体でも「自分は病気」と思い込めば病気になったり、逆に「これで治る」と思えば実際に快方に向かったりするという意味の言葉です。
一見無茶苦茶を言っているように見えますが、実は科学的な裏付けもあります。 人間の体は思い込みが作用するように出来ているのです。
プラシーボ効果とは
不調を感じている人に何の効果もない偽薬を「薬だよ」と言って与えると、なぜか薬効が出ることがあります。 患者が「これは病気に効く薬だ」と信じて飲むと、本当に薬を服用したかのように不調が快方へと向かうのです。
何の効果もない偽薬を「プラセボ」、思い込みが実際に身体に影響する効果をプラセボにちなんで「プラシーボ効果」と言います。 プラシーボ効果は良い方向にも悪い方向にも働き、「自分は病気なのではないか」と思い込むと健康体でも調子が悪くなりますし、「薬を飲んだからもう大丈夫」と思い込めば病気が快方に向かいます。 まさしく「病は気から」なんですね。
海外では実際の医療においてもプラセボが処方される国もあります。 気分的なものが強く出る症状、もしくは薬が必要ない軽い症状などの場合に患者を安心させて自然治癒力を引き出すために処方されます。
これだけ読むとなんとなく胡散臭さも感じますが、人間は気分的な問題で体調が変化する生物です。 よく知られている病気を挙げますと、気分が塞ぎ込んで鬱病になったり、ストレスで胃潰瘍になって胃に穴が開いたりしますよね。
心とは大よそ脳のことであり、感情は脳内の神経伝達物質と密接な関りがあります。 心の機微とは脳の状態の機微であり、脳の状態が変化すれば体の状態も変化します。 つまり心と体は物理的に結びついているということです。
なので思い込みは実際に体に作用すると言っても過言ではありません。 あまり塞ぎ込んでいると体が本当に病気になったような状態になるので、上手く心をコントロールしましょう。
ただしプラセボやプラシーボ効果は決して万能ではありません。 効果のほどは個人差が大きく、有効な症状も自然治癒が効く範囲に限られ、必ずしも期待した効果が出るとは限りません。 何でもかんでも気合でどうにかしようとせずに、体調不良になったら素直に病院へ行きましょう。
POINT
- 気持ちで解決することもある
- 気持ちで解決しないこともある
病気以外でも効果を発揮するプラシーボ効果
プラシーボ効果があるのは何も医療に関することだけではありません。 この思い込みの力は我々の日常生活においても発揮されているのです。
例えばトレーニングや勉強などでもプラシーボ効果を取り入れたものが多数あります。 もちろん科学的な裏付けと実証がされた手法なので思い込まなくても効果はありますが、「この方法で能力が上がる!」と暗示がかかると更に学習効率が上がるのです。 逆に疑いながら取り組んでも碌な結果になりません。
またイメージトレーニングにもプラシーボ効果があります。 イメージで「成功した体験」を重ねて経験と自信を積み、本番においての成功を手繰り寄せるのです。 イメージトレーニングはスポーツアスリートが取り組むことで有名ですが、勉強・プレゼン・スピーチなど色々な事にも応用が効きます。
スポーツや競技でよく言われる「流れ」もプラシーボ効果で説明できます。 競技中に「こっちのペースだ!」「嫌な予感がする」といった状況になって、実際その通りに運ぶことも多いですよね。 これはプレイヤーのプラシーボ効果によってもたらされた結果と言えます。
例えば野球で9回裏・2死無類で守備側が3点リード、後一人抑えれば勝利という状況だったとしましょう。 そこでバッターが打ち上げてイージーフライとなるも、痛恨の捕球ミスのエラーで出塁してしまいました。…嫌な予感がしません?
この時点では全然守備側が有利な状況です。それにもかかわらず「もしかして逆転…」という気がしますよね。 この状態「もしかして」のプラシーボ効果は攻撃側にプラスに、防御側にマイナスに働きます。 そうなると守備側は実力を出し切れなかったり、攻撃側は実力以上の力を出せたりして逆転劇に繋がるのです。
甲子園での劇的な逆転劇を「甲子園の魔物」なんて読びますが、こいつの正体もプラシーボ効果なのかもしれません。 まあそう頻繁にひっくり返ったりはしませんが、それでも魔物の存在を感じずにはいられないことも多いですよね。
このようにプラシーボ効果は我々の日常と密接な関係があるのです。 気合だけで何もかも上手くいく訳ではありませんが、どうせならプラシーボ効果がプラスに働くように上手く利用した方が得です。 ネガティブ思考の人はポジティブ思考に切り替えて生きていきましょう。