海外で荷物を預かってはいけない!麻薬入りで死刑になることも!
海外へ行く際によく「他人の荷物を預かるな」と注意されます。 中に何が入っているか分かったものではなく、危険物が入っていたら逮捕されてしまうからですね。
もし預かった荷物の中身が麻薬だったらどうなるのか、どんな手口で運ばせようとするか、有名事件と共に見てみましょう。
麻薬密輸の有名事件
2009年マレーシアへの麻薬密輸容疑で死刑判決
2009年当時35歳だった日本人女性が、マレーシアにて麻薬密輸容疑で逮捕されました。 女性はスーツケース3つを所持しており、一人旅にしては荷物が多すぎると不審に思った税関が調査したところ4.7kgの覚せい剤が見つかったのです。
女性は「荷物は預かったもので中身は知らない」と供述していましたが、2015年に死刑判決が下りました。
2010年中国にて麻薬運搬罪で稲沢市議に無期懲役判決
稲沢市の現職市議だった日本人男性が、中国にて麻薬運搬罪で逮捕されました。 帰国の際に広州での荷物検査にて、預かったスーツケースから3.3kgの覚せい剤が見つかったのです。
男性はアフリカで事業をしており、取引相手のナイジェリア人から中国に招かれていました。 その際に商品サンプルとして預かったスーツケースに覚せい剤が隠されていたのです。
男性は「荷物は預かったもので中身は知らない」と供述しましたが、2019年に無期懲役の判決が下りました。
中国では75歳以上は死刑にならない
中国において75歳以上は死刑にならない原則があり、判決時に男性は76歳でした。 持ち込んだ麻薬の量から見て、若ければ死刑判決になった可能性が高いです。
密輸人は麻薬を他人に運ばせようとする
国によって温度差もありますが、麻薬の密輸は厳しく取り締まられています。 だから密輸人はリスクを避けるため、他人に麻薬を運ばせようとします。
運ばせると言っても赤の他人にいきなり「何も言わずにこれを運んで欲しい」なんて言う訳ではありません。 雑なやり方ではすぐにバラされて売人にとってもリスクが高いですらね。
麻薬を運ばせる手口
売人の手口は狡猾で、人の親切心を利用したり、信頼関係を利用したり、知らない間に運び屋になっていることもあります。 以下は実際にあった手口の一例です。
- 孫へのお土産を買いすぎてスーツケースに入らないから一つ預かって欲しいと言われる
- 泣く赤子を抱っこしてあやすからカバンを一つ持って欲しいと言われる
- 現地で親切にしてくれた人から、向こうの友人に届けて欲しいと依頼される
- 荷運びのアルバイトとして募集する
- 知らぬ間にこっそり荷物に入れられる
麻薬はほんの数kgで大金になる代物で、その輸出入は大仕事です。 それを運ぶためならこの程度のことは当たり前にするし、時にはもっと大仰で狡猾な手口を使うこともあります。
知らずに麻薬の運び屋になった「メルボルン事件」
この手の話で有名な「メルボルン事件」をお話します。
1992年、日本人観光客5名がメルボルン空港にて麻薬密輸容疑で逮捕されました。 この事件において恐ろしいのは、麻薬の運び屋に仕立てられてしまった経緯です。
7名の日本人観光客一行がメルボルン旅行ツアーに参加しました。 ツアーはまずクアラルンプールで一泊する行程でしたが、そこでの夕食中に4人のカバンが車ごと盗まれる事件が起きました。
現地ガイドの必死の捜索により何とか荷物は見つかりましたが、カバンはズタズタに引き裂かれていました。 そこでガイドは代わりのスーツケースを提供し、一行はガイドの心遣いに感謝しつつ予定通りにメルボルンへと向かいます。
しかしメルボルンでの入国審査にて、4人のスーツケースに13kgのヘロインが隠されていることが発覚しました。 ツアー客は身の潔白を訴えましたが5人が逮捕され、懲役15~20年の刑に処せられる結末となりました。
MEMO
メルボルン事件はオーストラリアにおける取り調べや裁判の経緯が問題視されており、日本においては冤罪であるという見方が強いです。 しかしツアー客の中に元暴力団員がいるなど疑わしい要素もあります。
事件の真偽は本稿の本筋ではないので、興味があれば調べてみてください。
海外で他人の荷物を預かるのは危険
もしあなたがメルボルン事件のツアー客だった場合、事件をきちんと回避できたでしょうか? 考えてみると中々難しいことですよね。
恐らく犯人はツアー客が新しいカバンを調達できる時間的余裕を与えなかったでしょう。 もう旅行は諦めるしかないというところで「皆さん、良ければこのスーツケースを使ってください。」と持ち掛けたのだと思います。
もしガイドの用意したスーツケースを拒否すれば、4人はツアーから外れることになる可能性が高いです。 そうなれば折角の楽しい旅行が台無しですし、諦めて日本へ帰国するにしても自腹で飛行機を手配しなければなりません。
こんな状況でスーツケースを拒否して帰国するなんて選択は中々できませんよね。 人間心理を上手く利用した巧みな手口だと、思わず感心させられてしまいます。
しかしこれを拒否できなければ、あなたを待っているのは刑務所や絞首台かもしれません。 外国で他人の荷物を預かるのはそれほどの危険があること、巧妙で狡猾な手口で麻薬を運ばせようとする人がいることを肝に銘じておきましょう。