現代でも元号を使っている国は日本だけ

2019年5月より、元号が平成から令和になります。 令和が発表された4月1日には号外が街で配られて激しい取り合いになり、無料紙にもかかわらずネットで1万円で売買されているようです。 貰っときゃ良かった…

元号は日本において645年から脈々と続いている文化ですが、実は現代で元号を使っている国は日本の他にありません。 元々は中国から輸入した文化ですが、その中国も1949年から西暦を使っています。

日本にいると気付きにくいですが、元号は世界にも類まれな特殊な文化だったのです。

元号とは

年を数えたり記録する時の数え方を「紀年法」と言い、大きく3つに分けられます。

説明
無限式ある年を起点に加算し続ける西暦、ヒジュラ歴、仏暦
有限式元首の即位や何か起きた際に切り替えられる元号
循環式一定年数で周回して繰り返される干支、インディクティオン

日本人に馴染みの深い紀年法は西暦と元号ですね。 西暦はキリストが生まれた翌年を起点に加算し続けるのに対し、元号は天皇が即位する際に切り替わって年がリセットされます。

元号は元々中国で始まった文化であり、漢の武帝が紀元前115年に自分の即位した紀元前140年を「建元元年」と定めたところから始まりました。 元号とは暦の支配であり、それを広く知らしめることで王朝の支配の正統性と領域を示す指標として機能しました。 そんな元号は中国からアジアの一部諸国にも広まり、日本の他にも韓国やベトナムなどで元号が使われていたことがあります。

日本で元号を使い始めたのは645年を大化元年として定めてからで、それから脈々と続いて今日に至ります。 西暦645年の大化から西暦2019年の令和までの元号数はなんと232個にもなります。(※南北朝時代の北朝の元号を含めると16個加算されます)

MEMO

元号の切り替えは明治以降は天皇一代に元号一つが原則となりましたが、過去にはおめでたいことや悪いことが起きた時にも切り替えられていました。

例えば白亀を献上されたから変えたとか、彩雲が見えたから変えたとか、疫病が発生したから変えたとか、地震が起きたから変えたとか色々あります。

そんな日本人に馴染みの深い元号ですが、現代において元号を使っている国は他にありません。 世界の多くの国は西暦を使っている他、一部イスラム国はヒジュラ歴、一部仏教国は仏暦で、全て無限式の紀年法を使用しています。

世界的に元号が廃れた理由は、やはり不便だからではないかと思います。 世が改元で沸いている時に水を差すようなことを言うのも何ですが、元号のデメリットについてお話ししておきたいと思います。

元号のデメリット

覚えにくい・使いにくい

まず元号を覚えるのが大変です。 200を超える元号を一通り覚えるだけでも難しいですし、各元号がいつから始まって何年続いていたかなんていちいち覚えてられません。 元号ごとに長さが違うのも覚えにくい一因です。

関連して計算しにくいです。 例えば紀年法の期間を計算する場合、西暦なら簡単な引き算で済みますが、元号で考える場合は一旦西暦にコンバートするか、各元号をいちいち積み上げる必要があります。 明治元年から平成末年まで何年間あるかすら暗算では難しいですし、大同元年から元暦末年まで何年間あるかなんて言われたらもう無理です。

また外国人に通じないのも欠点です。 日本の元号なんて知らないから「昭和の頃」なんて言っても通じませんし、生年月日を和暦で書いてくださいなんて言っても分かりません。

そもそも日本人にだってはっきり通じていない気がします。 昭和の終わり生まれが小学生に「戦争の苦労話を聞かせてください」と言われたなんて笑い話を聞きますが、自分の生まれる前の元号の認識なんてこの程度の人も多いのではないでしょうか。

不経済

元号制度に不満を上げている人はそれなりにいて、その中に少なくない数のシステム屋さんがいます。 なぜ元号に文句を言っているかと言えば、元号が「不経済」だからです。 あとゴールデンウィークに出勤しなければならない怒り

システム的には元号での年月計算や並び替えは面倒な処理が必要なので、データは基本的に西暦で保有して必要な時にだけ元号に変換しています。 この変換処理は新元号が出る度に改修する必要があり、改修自体は簡単でも検証はがっつり要求されるのでそれなりに大変です。

また書類や伝票なども元号変更によって表記が変わるものがあり、必要に応じて再出力&再送しなければなりません。 元号を選択するような書類には新たに「令(R)」を追加し、「平成40年」なんて書いた書類は「令和10年」に修正した上で再送しなければならず、こちらもお金がかかります。

この元号対応費用は会計上は「修繕費」として計上され、つまり損金となります。 個々で見れば大した額ではありませんが日本全体で見れば数十~数百億円ぐらいはかかり、それは回りまわって日本経済への負担となります。 労働力が余ってるなら公共自供の一環として良いかもしれませんが、人手不足の昨今では不経済でしかありません。

まとめ

元号に色々否定的なことを書きましたが、別に元号を廃止しろと言っている訳ではありません。 折角世界で唯一の元号国家になったことですし、今後も日本の文化として続いて欲しいと願っています。

しかし使い続けるにしても元号は使いにくい、通じない、不経済であることを認識して改善する必要はあります。 負担にならない範囲での運用に留めませんかといったところですかね。

日本は「伝統ある文化だから後世に残したい」とか言って何でもかんでもそのまま残そうとしますが、文化はただ残せば良いというものではありません。 自然に残った文化こそが素晴らしいのであり、無理矢理残した文化はただ負担になるだけです。 残すにしても価値観は時代と共に変遷していくので、文化もそれに合わせて変遷していくべきだと思うのですがいかがでしょうか。

最近は海外とのやり取りや外国人の訪日も活発になってきたので、和暦を廃止して西暦に統一する動きも増えてきました。 企業や行政のご担当者様もグローバル化と省コスト化のため、年月データや書類様式を西暦で統一することをご検討いただければと思います。

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