犬の笑顔は本来の習性ではない
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犬は飼い主に色々な表情を見せてくれます。 一緒に遊ぶと楽しそうな顔、撫でると満足げな顔、嫌な事があると悲しそうな顔ととても表情豊かです。
でも実は犬の表情って、人間と生活する中で学習して見せているものなんですよ。 特に楽しい時や嬉しい時に「笑う」のは霊長類の一部しか持っていない習性であり、犬は本来持ち合わせていないのです。
笑うって何?
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そもそも「笑う」とは何かと言われると哲学的な話になりそうです。 おおざっぱに考えると、嬉しい時や楽しい時などポジティブな感情の際に表情が緩んだり笑い声が上がったりすることでしょうか。
笑いは自分の感情を相手に伝えるのに有効で、相手に対して好意を示したり現状が好ましいことを伝えることができます。 ずっと真顔で相手に好意を伝えるのは難しいですよね。
笑いとは他者とのコミュニケーションを円滑にする習性と言えるかもしれません。 人から笑いを取ったらどうなるか、考えただけで恐ろしいです。
また笑いはストレスの解消や病気の予防などにも有効であることが分かっています。 笑うだけでお得なのです。
さてこの「笑う」習性、実は非常に珍しいものです。 次は他の動物の笑いについてみてみましょう。
笑うのは類人猿のみ
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人はもちろん笑いますが、他に笑う動物は思い浮かびますか? いくつかの類人猿が笑うことが確認されていますが、特に笑う動物として有名なのがチンパンジーです。 実はチンパンジーはとても人と近い関係にあるんですよ。
人は進化の過程でテナガザルと分岐し、オランウータンと分岐し、ゴリラと分岐し、最後にチンパンジーと分岐しました。 だから人間とチンパンジーは共通の祖先が比較的新しいのです。最初の人類「アウストラロピテクス」の名は聞き覚えがあると思いますが、実はチンパンジー亜属に分類される動物で、直立している以外はチンパンジーとほとんど変わりありません。
そんな種として近い両者の共通の祖先が笑う習性を持ち、そのためチンパンジーが特によく笑うと考えられています。 また人やチンパンジーほどではありませんが、類人猿の一部にも笑う習性の片鱗が確認されています。
しかしこの習性、実は類人猿以外の動物には全く見られません。 そうは言っても「犬もよく笑っているじゃないか」と疑問に思うことでしょう。 次は犬の笑いについてお話しします。
犬はなぜ笑う?
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犬は散歩の提案をすると嬉しそうな顔で吠えたり、家に帰ると満面の笑顔で尻尾をブンブン振って迎えてくれたりします。 ネットでも笑顔の犬の写真や動画がそこらじゅうにありますよね。 そんな犬をなぜ笑わないと言うのでしょうか?
答えはその笑顔は本来の習性ではないからです。 犬が笑うのは人と暮らす中で学習して獲得したものであり、本来持っている習性ではありません。 なので野生種などの人との付き合いが浅い犬は笑いません。 犬の感情表現は尻尾や体全体の仕草で表します。
犬は人と一緒に暮らす中で、人の表情をいつも観察しています。 どんな事で喜び、怒り、悲しみ、楽しみ、さらにその時々でどんな表情をするか学ぶのです。 そして犬もまるで人のように色々な表情を見せるようになるのです。
犬は相手が喜ぶことを学習して実践し、後天的な習性として昇華できるのです。 そう考えると犬のコミュニケーション能力が非常に発達していることを思い知らされますね。
猫の笑顔はフレーメン反応
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猫もしばしば笑っているかのような表情をすることがあります。 写真や動画などで特によく見かけますね。
しかしこの笑顔のように見える表情は「フレーメン反応」と呼ばれるもので、特に笑顔とは関係なく犬のように表情を作っている訳でもありません。 臭いを沢山取り込む際に「ヤコブソン器官」と呼ばれる感覚器を空気に晒そうとした結果、笑顔のような表情になるだけです。
これはウマやゾウなどの他の哺乳類にも見られる反応です。 全てが笑顔のように見える訳ではありませんが、写真で切り取るとまるで人間のように楽し気に笑っているように見えるものが多いですね。 しかし実際にネコなどの動物が笑っているように見えても、友好的な表情をしている訳ではないことは覚えておきましょう。