「差別」と「区別」の違い

discrimination

学校で「差別」はいけないことだと教わります。 男女差別や人種差別など、どんな差別も間違ったことだと授業でやりますよね。

その一方で区別は必要です。 男女の更衣室もトイレも別々ですし、女性専用車両なんてのもあります。 しかし世の中の「区別」を見ていると、中には差別とどこが違うのかよく分からないのもよくありますよね。

一体何が差別と区別を分けているのかというと、それが「不当である」かどうかです。 差異を付ける側・付けられる側の双方が納得すればそれは「区別」となり、逆にどちらかがそう思わず不当なものだと判断すれば「差別」となります。

男女差に見る差別と区別

man and woman

まずは差別と区別、2つの言葉を辞書で引いてみましょう。

【差別】

1.あるものと別のあるものとの間に認められる違い。また、それに従って区別すること。

2.取り扱いに差をつけること。特に、他よりも不当に低く取り扱うこと。

【区別】

(スル)あるものと他のものとが違っていると判断して分けること。また、その違い。

どちらも同じようなことが書かれていますが、ここで注目すべきは差別の2番にある「不当」というワードです。 つまり正当な区別は「区別」であり、不当な区別は「差別」であると言えます。

正当か不当かを判断するのは難しい話なのですが、とりあえずは「区別する合理的な理由がある≒区別する側・される側の双方が納得できる」ことと考えておけばいいでしょう。

一番身近な差別と区別はやはり「男女」でしょうか。 男女の性差による差別と区別の事例について考えてみましょう。

スポーツにおける男女区別

スポーツにおいて男女は別々に競技を行います。 これは男女の垣根を取っ払った場合、女性が活躍する余地は殆どなくなってしまうからです。

例えば日本ではフルマラソンで女子が世界で活躍する一方で男子の成績はあまり芳しくありませんが、両者を純粋にタイムで比較した場合は男子の方が10分以上早いです。 他の競技でも女性ならトップクラスの記録が男性においてはそれほどではないなんてことは珍しくありません。

もしスポーツで男女の垣根を無くして純粋に能力で勝負するようになった場合、女性の活躍する余地は大きく削られてしまいます。 そんな状況では女性が真面目にスポーツに取り込むことはなくなり、興味すら持たない人も増えるでしょう。

そんな状況は男女ともに望むところではないので「両者は明確に能力の違いがある」と「区別」して男女別々に競技を行っているのです。

会社における男女差別

会社勤めの男女を例に挙げます。 男女はともに同期入社であり、男性は順調に昇進して管理職となった一方で女性は昇進が遅れているとします。

この結果が2人の純粋な能力によるものだった場合は「能力による正当な区別」であり「区別」であると言えます。

しかし「女性だから」という理由で昇進が遅れたり重要なポストには就けなかったりする場合は「性差による不当な区別」であり「差別」であると言えます。

会社における男女差別はもう少し根深い問題なんですけどね。 次項でもう少し掘り下げてみましょう。

会社の男女差は差別?区別?

Gender discrimination

会社では女性よりも男性の方が優遇される傾向があります。 男女の格差を是正するべく提言や活動などがされていますが、未だに解消されたとは言えない状況です。

良い仕事を回したり昇進させたりは男性を優先させる事がありますし、そもそも女性を採用したくないという会社もあります。 これを「男女差別だから止めろ」と言うのは簡単なのですが、なぜ差別がなくならないのか少し掘り下げてみましょう。

男女の最も大きな違いは「子どもを産む」かどうかです。 出産や育児は後世の人間を産み育てるという、人にとって最も重要なイベントのひとつです。

しかしこの出産、会社にとっては業績の足を引っ張るイベントでしかありません。 産休だけでも2か月は休む必要がありますし、育児休暇も取る場合は最大で1年以上もいなくなってしまいます。 さらに多くの子を産む場合、その期間は乗算されていきます。

この期間の出産手当などの各種諸手当は健康保険組合などが出すので、産休や育休が直接会社の業績にダメージを与える訳ではありません。 しかし「社員が長期間穴を開ける」状況は、会社にとって歓迎できるものではありません。

例えば3人のチームで作業を行っていて、1人が産休で1年抜けるとします。 同じ仕事を2人で回すのは無理なので、採用や教育などにコストを費やして別の人を確保しなければなりません。 そして新人が仕事に慣れてきたと思った頃に産休を終えて帰ってきて、今度は余った1人をどうするか考えなければならなくなります。

また育児休暇が終わったとしても、あまり小さい子を放っておく訳にもいきません。 しばらくは定時後すぐ帰って子の面倒を見なければならないでしょうし、休日の勉強会などにも簡単には行けなくなるでしょう。 そういう事情もあってか結婚や出産を期に会社を辞めてしまう女性も少なくありません。

2か月間の出産を除けば男性でも育児は可能ではありますが、「仕事は男・家庭は女」の風潮が根強く残っており、実態として育児の負担は女性側が高いことが多いです。 会社だけでなく両親や周囲の人なども「母親なんだから」と女性に子育てを強要・推奨させるケースが少なくありません。

そういった事を全てひっくるめて、会社にとって女性はリスクが高い傾向があります。 大企業であればこういった人を回すポストやノウハウもありますが、ギリギリで回している中小企業はかなり困りますよね。 なので女性を重要なポストに付けるのを控えたり、女性の採用自体をしたくないという企業も少なくありません。

MEMO

逆に男性であることが不利になるケースもあります。 例えば飛行機のCA、秘書や受付、花屋やレストランの接客は男性だから採用されないことがあり、また男性は助産師になれないよう法律で定められています。 性差による差別を受けているのは何も女性ばかりという訳ではありません。

他にも寡婦年金が貰えない、親権で争えば負ける、主夫の社会的立場の弱さ、有給取得率が異常に低いなど色々あります。 性的ステレオタイプから逸脱した生き方が難しいという点では男性も変わりません。

他にも職場を単一の性別で固めたいケースもあります。 24時間体制で回している職場で夜間に男女を同じ場所で勤務させると…なんだか問題になりそうな気がしますよね。 そもそも女性を夜中まで会社に残さないなんて職場も少なくありません。 うちの職場でも女性は22時には帰れるけど男は仕事が終わるまで帰れない風潮があり、これも考えてみると差別なのかもしれません。

こういったことは全て「男女差別」と叫ばれ忌むべきこととされてはいますが、実態としてメリットやリスクがあるのだから控えたいという主張も分からなくもないですよね。 こういったことを全て糾弾しても建前上は平等だけど実態は全然平等じゃないなんてことになるだけです。

例えば現代日本では従業員を募集する際、一部の業種を除いて性差でふるい落としてはいけないことになっています。 しかし実態として雇用側は男女のどちらか一方を欲しがっているケースは珍しくありません。 建前上は性差で差別してはいけないので応募・面接までは行けますが、雇用者側が求める性別でなかった場合には必ず不採用となります。

こうなると「最初から採用する性別を明記しておけよ!」と言いたくなりますが、それは男女差別だからできないのです。バカバカしいですね。 ちなみにこういった求人の場合は「女性が活躍する職場です」など回りくどい形でアピールすることが多いです。

全てを差別として糾弾すると、建前と実態の間に歪みが生まれます。 スポーツのようにある程度区別として吸収した方が良いこともあるのです。もちろん不当な区別は厳禁ですけどね。 「差別」として糾弾すべきなのか、それとも「区別」としてある程度は許容すべきなのか…差別と区別は難しい問題ですね。

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