言い方次第でありふれたものも危険物質に!「DHMOの危険性」
1997年、アメリカでDHMOの使用規制を求める署名活動が行われました。 DHMOには危険性があるにも関わらず特に制限はされておらず、その結果として我々の周囲に大量に存在してしまっていることを訴えたのです。
署名を求められた8割以上の人がサインを行いましたが、実はこの署名には別の意図がありました。 あなたはその意図に気付けるでしょうか?
DHMOの危険性
DHMOの使用規制の署名に際して、以下のような「DHMOの危険性」が説明されました。
DHMOの危険性
- 酸性雨の主成分
- 温室効果を引き起こす
- 多くの海難事故死者の直接の死因となっている
- 高レベルのDHMOにさらされると植物の成長が阻害される
- 末期癌の腫瘍細胞中にも必ず含まれている
- 固体のDHMOに長時間触れると火傷のような症状で皮膚が損傷する
- 多くの金属を腐食・劣化させる
- 自動車のブレーキや電気系統の機能低下の原因ともなる
この危険な物質は世界中の工場で冷却・洗浄・溶剤としてなんの規制もなく使用・排出されており、 その結果として世界中の湖や川、果ては母乳や南極の氷にまで高濃度のDHMOが検出されているというのです。
DHMOはとんでもなく危険な物質のようですね。 さて、あなたはDHMOの使用規制の署名を求められたらサインをするでしょうか?
DHMOの正体は?
この物質の正体が一体何なのか、あなたは気付けたでしょうか?
DHMOとはdihydrogen monoxide(一酸化二水素=H2O)の略で、要するにただの水のことです。水がそんなに有害なはずはないですよね。
しかし上記の「DHMOの危険性」は嘘を言ってる訳ではありません。 水をさも恐ろしい危険物質であるかのように言っているだけなのです。
順に見てみましょう。
DHMOの解説
酸性雨の主成分
酸性雨は硫酸や硝酸などの酸性の有害物質が溶け込んだ雨ですが、主成分はもちろん水です。
温室効果を引き起こす
温室効果ガスと言えば二酸化炭素のイメージがありますが、実は最大の温室効果をもたらしているのは水蒸気です。
ただ水蒸気量は直接コントロールできないし二酸化炭素の抑制が水蒸気の抑制にも繋がるので、水蒸気をどうこうしようとは言われません。
多くの海難事故死者の直接の死因となっている
海難事故の死因の多くは溺死なので、水が直接の死因となっています。
高レベルのDHMOにさらされると植物の成長が阻害される
植物の成長に水は必須ですが、やりすぎるのは逆効果となります。
末期癌の腫瘍細胞中にも必ず含まれている
細胞内には必ず水分が含まれており、末期癌の腫瘍細胞も例外ではありません。
固体のDHMOに長時間触れると火傷のような症状で皮膚が損傷する
個体のDHMOとはつまり氷のことで、長時間触れると低温火傷により皮膚が損傷してしまいます。
多くの金属を腐食・劣化させる
多くの金属は酸素によって腐食・劣化します。
水から供給される酸素は大気よりも多く、それにより腐食・劣化が進みます。
自動車のブレーキや電気系統の機能低下の原因ともなる
多くの電気機器にとって水は機能低下や故障の原因となります。
この危険な物質は世界中の工場で冷却・洗浄・溶剤などとしてなんの規制もなく使用・排出され、結果として世界中の湖や川、果ては母乳や南極の氷にまで高濃度のDHMOが検出されている。
水は使用や排出に特に規制はされていません。 世界中の湖、川、母乳、南極の氷は全て主成分が水なので、高濃度のDHMOが検出されるのは当たり前です。
我々はどのようにしてだまされるのか
このDHMOの使用規制に関する署名は、本気で水の使用規制をするために行われたものではありません。 「我々はどのようにしてだまされるのか」というレポートにて行われた実験で、署名を求められたのも50人だけです。
ちなみに署名を求められた50人のうち43人がサインをしました。 冷静にしっかり読めば違和感に気付くでしょうが、道端で急に言われて斜め読みしたぐらいでは引っかかる人も多いでしょう。
この実験から得られる教訓は色々あります。 人は興味のないことは深く考えない、言い方次第でイメージは良くも悪くもなる、人を説得できるかはイメージ次第などなど… 何かと考えさせられる実験ですね。