「柔よく剛を制す」には「剛よく柔を断つ」という続きがある

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柔道や合気道などでは力の強い相手を技によって倒す術を教わります。 「柔よく剛を制す」と言って、優れた技を以って力を制するのが極意です。

でもこの言葉には「剛よく柔を断つ」という続きがあるのです。 なんだか身も蓋もない響きがしますね。

柔よく剛を制すの由来

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「柔よく剛を制す」は格闘技でよく使われる言葉ですが、その由来は中国の兵法書「三略」にある言葉です。 一節には「兵法書に『柔よく剛を制し、弱よく強を制す』とある」とあります。

ここで言う剛柔と強弱は軍や人の性質を表しており、噛み砕いて言えば「時に柔軟なものが硬いものを制することもある」という話です。 そして三略は剛・柔・強・弱の四つとも大事だから、全て身に着けなさいと説いています。

現代日本で使われる柔よく剛を制すの意味

現代日本において「柔よく剛を制す」は、格闘技において技(柔)で力(剛)を制する意味で使われるようになりました。 この言葉自体は剛を軽んじている訳ではありませんが、いつの間にかやたらと柔を持て囃す風潮ができたように思います。

もしかすると明治以降のグローバル化が影響しているのかもしれません。 欧米人と比べて体格に劣る日本人が、技術に活路を見出そうとした流れがあるように思います。

力や体格に劣るものが自分より大きな相手を制する様は、見ていて感じ入るものがあります。 しかし現実で柔よく剛を制すのは簡単なことではありません。

柔道でも柔よく剛を制していない

柔よく剛を制すをよく使う代表的な格闘技が柔道です。

そんな柔道では体重別に階級が定められて試合が行われます。 2016年の時点では高校柔道は5階級、オリンピック柔道は7階級に分けられています。

なぜ体重で切り分けるのかは説明するまでもなく「重い方が強い」からです。 技量に余程の差がなければこれを覆すことはできません。

稀に軽量級の体格で無差別級に出場して優勝するような人もいるにはいます。 例えば秋本啓之氏は高校時代に66kgで全国高校選手権の無差別級を制していますが、氏にはエリート柔道一家に生まれて5歳から柔道を始めたアドバンテージがありました。 これぐらい柔に差がないと勝てないのです。

無差別級の大会である全日本選手権の上位者ともなれば重い選手だらけです。 100kg越えが当たり前、中には140kg越えもいる、軽くて90kgといった具合で、小兵が入り込む余地はほとんどありません。

リオ金メダリストの大野将平氏(73kg)が2014年に出場していますが、そんな選手ですら3回戦で敗退しています。 相手の王子谷剛志氏が100kg超級で世界トップ級の選手だったので、これは仕方ないと言えば仕方ないですが。

小兵が柔で巨漢を投げ飛ばす姿は痛快ではりますが、あまり現実的ではないのです。 そこで言われ始めたのが「剛よく柔を断つ」です。

柔よく剛を制す、剛よく柔を断つ

近頃は「剛よく柔を断つ」という言葉も用いられるようになりました。 これは「力は技を破る」という割と夢も希望もない言葉ですが、「柔よく剛を制す」とセットで使われています。

「柔よく剛を制す、剛よく柔を断つ」を二つ合わせて「剛柔一体」と言い、多くの格闘技で極意とされています。 一周回って三略の言っている境地に辿り着いたのですね。

「柔よく剛を制す。剛よく柔を断つ。」これは格闘技のみならず、色々な物事に言えることです。 学業や仕事においても、その場その場で適切な手段を講じる人が高い成果を挙げています。

何事にも凝り固まらずに、時に強く、時にしなやかに生きていきましょう。

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