一秒の基準は「1日の86400分の1」ではなく「セシウム原子の振動回数」

ベルの付いた置時計

1秒の長さはどれぐらいかと聞かれたら、多くの人が「1日の86400分の1」と答えると思います。 これは大よそ正しい認識ですが、実際の定義は違います。

1秒の長さは「セシウム133原子が91億9263万1770回振動するのにかかる時間」と定められています。 こんなややこしい定義になっているのは、1日の長さが一定ではないのが理由です。

一秒の長さは「セシウム133原子の振動回数」が基準

我々は時間単位の基準を1日の長さと認識しています。 1日を24分割したのが「1時間」、1時間を60分割したのが「1分」、1分を60分割したのが「1秒」ですよね。

しかし実はこの認識、厳密には違います。 1秒の定義は「セシウム133原子が91億9263万1770回振動する時間」であり、1秒を60倍したのが「1分」、1分を60倍したのが「1時間」です。

こう聞くと「なぜそんな訳の分からないものを基準にしたのか」と疑問に思うことでしょう。 これは時間単位は1日を基準に作られたけど、1日の長さが変動していることが分かったため定義を変えたからです。

1日の長さは変化している

我々が現在使っている時間単位は、元々は1日の長さ=地球の自転速度が基準でした。 多くの動物が太陽を基準にして行動しており人間もその例外ではないので、こうなるのは自然の摂理ですね。

しかし20世紀になって原子時計が発明されると、地球の自転速度が一定ではないことが分かりました。 自転速度は地球と月の位置関係・地球内部の運動・地表の水や氷の分布などで微妙に変化し、1日の長さも微妙に変わっていたのです。

1日の長さの変化は年に5万分の2秒ほどで人間が認識できるものではありません。 しかし数百~数千年も経てば積もり積もってそれなりの差になる可能性があります。

1秒の基準を不変なものに変更

地球の自転を時間単位の基準にした場合、今の1秒と将来の1秒は違うものになります。 もし将来1日の長さが1%短くなれば、各種時間単位の長さも1%短くなってしまいます。

そんな曖昧に変動するものは単位の基準として相応しくありません。 そこで新たな基準となったのが「セシウム133原子の振動回数」という訳です。

これなら1日の長さがどうなろうが1秒は不変です。 遠い未来に1日が8万秒になったり9万秒になったりする可能性はありますが、1秒は今と同じ長さが保たれます。

自転速度と標準時の時差は「うるう秒」で調整

12時ちょうどを指す掛け時計

地球の自転速度は一定ではなく、今も24時間ぴったりで一周している訳ではありません。 そのため太陽の位置と時刻に若干のズレが生じます。

ここ50年ぐらいでは2年に1秒ほどずれており、つまり百年で50秒ずれる計算になります。 これを放置すれば遠い未来には時刻と昼夜の関係が逆転するかもしれません。

この問題を解決するため用いられているのが「うるう秒」です。 秒の挿入または削除を行って時差を解消する仕組みになっています。

うるう秒による調整タイミング

うるう秒による調整は、基本的に半期末のタイミングで「1秒以上の時差がある時、時刻に秒を追加または削除」して調整します。 何年に一度とか決まったタイミングはなく、1秒以上ズレていたら調整するだけです。

うるう秒の挿入/削除は以下のように行われます。

この調整は世界時における半期末の23時に一斉に行われます。 世界時よりも9時間早い日本の場合は、1月1日/7月1日の午前8時59分が調整タイミングとなります。

2020年までのうるう秒は全て挿入

うるう秒が始まった1972年から2020年までの48年間で27回27秒の挿入が発生しています。 挿入のみで削除がないのは、今のところ地球の自転が24時間よりも若干長いためです。

現状はうるう秒を2年に1度挿入している程度で済んでいます。 しかし遠い未来に地球の自転速度が大きく変わったら、「うるう分」や「うるう時」が生まれる日がくるかもしれません。

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