胎生と卵生の違いに見る動物の生存戦略
動物には赤ちゃんを産む胎生と、卵を産む卵生のものがいます。 哺乳類だから胎生でそれ以外は卵生ですが、種が違えばその様式も様々です。
卵生と胎生のメリット・デメリットを見比べつつ、もう少し掘り下げて見てみましょう。
動物の生殖様式
卵生
胎内で形成した卵を、卵の状態のまま出産するのを「卵生」と言います。
哺乳類を除いたほとんどの動物が卵生です。
胎生
胎内で形成した卵を、胎内で孵化させて胎児に栄養を与え、ある程度育ててから出産するのを「胎生」と言います。
哺乳類のほとんどが胎生です。なおカモノハシが哺乳類なのに卵生であることで有名です。
卵胎生
ちょっと変わった様式に、卵生と胎生の中間である「卵胎生」なんてのもあります。
卵胎生は胎生のように体内で卵を孵化させてから出産しますが、母体から栄養を与えている訳ではない=体内で卵を温めているだけなのが胎生との違いです。
一部のサメ、マムシ、春におけるアブラムシなどが卵胎生です。胎生と卵生の戦略
胎生と卵生にはそれぞれメリットとデメリットがあります。 それぞれの生存戦略を一言で言えば、卵生は「多産多死」で胎生は「少産少死」です。
卵生のメリットとデメリット
卵生は未熟な卵の状態で母体から排出するので、母体への影響は少なく沢山産むことができます。
しかし卵は赤子以上に無防備であるため捕食者に食べられやすく、全ての卵が孵化までこぎつける訳ではありません。 また卵の栄養で育つサイズまでしか成長できないので、生まれた後も捕食者に襲われる危険は依然として高いです。
卵生の動物が成熟するまで生き残れるのは、卵の数から見るとほんの一握りです。 多産多死の戦略と言えるでしょう。
胎生のメリットとデメリット
胎生は胎児に母体から栄養を与えて育てられるため、ある程度成長した状態で産むことができます。 最も弱い状態である卵~未熟な時期を胎内で過ごせるので、子の生存率は飛躍的に高まります。
しかし母体にかかる負担が大きく、母親は臨月が近づくと普段通りに動けなくなる上に多くの栄養を必要とします。 またある程度成長した子を胎内に入れておかなければならないため、あまり多くの子を一度に産めません。 少産少死の戦略と言えるでしょう。
多産多死と少産少死、どちらがいいかは動物次第
卵生と胎生は一長一短であり、どちらがいいかは動物次第です。
弱い動物であれば、胎生で悠長に育てていると母体が食べられて終わります。 またせっかく成長した状態で出産しても、子の危険度は大して変わらなかったりします。 これなら大量に卵を産んで数で勝負した方がいいですね。
強い動物であれば、母体が簡単に襲われることはありません。 また胎内で育てることで、子の生存率を飛躍的に高めることが出来ます。
もっとも動物自身が卵生/胎生を選択できる訳ではないですけどね。 ある程度は淘汰で洗練されているものの、現状たまたまこうなっているだけという面も強いです。
ダチョウは胎生でもいいんじゃないかとか、ネズミは卵生の方が向いているんじゃないかとか考えてみるのも面白いかもしれません。
世代のバトンを渡せるのは親2匹に対して子2匹
動物が産む子の数は種によって様々です。 せいぜい4匹ぐらいしか産まないものから、一度に数万個もの卵を産むものもいます。
しかしどちらにしても子が成長して繁殖にまでこぎ着けるのは、大よそ親2匹に対して子2匹です。 本当はもう少し多いし状況によって多少ズレるのですが、分かりやすく2匹としておきましょう。
何万個卵を産んでも二匹しか残らないというのは、少し考えにくいでしょうか。 その理由は簡単、大抵が成熟して繁殖する前に死ぬからです。
多産の動物は子を沢山産みますが、その分弱く死にやすいです。 卵を産んだ端から食べられ、生まれた子が食べられ、多くは成熟しても食べられます。 だからこそ沢山の子を産むことにエネルギーを使って生き残らせようとします。
逆に少産の動物は子を少ししか産みませんが、上手いこと生き残ることが多いです。 子を強い状態で生んだり親が守ったりして、それなりの確率で成熟まで持っていきます。 子を産むことよりも育てる方にエネルギーを使っている訳です。