環境に溶け込む「保護色」と、あえて目立つ「警告色」の戦略
動物の体色や模様は生存に都合の良いものになっています。 周りの景色に溶け込む「保護色」で身を隠しているのは有名な話ですね。
しかし保護色とは逆に、あえて目立って存在をアピールする「警告色」なんてものもあります。 悪目立ちしても基本良いことはありませんが、あえて警告色をしているのはなぜか分かるでしょうか?
周囲に溶け込んで隠れる保護色
被捕食者が捕食者から逃れる手段は色々ありますが、数ある手段の中で最も手っ取り早いのは捕食者に見つからないようにすることです。
か弱い動物たちの多くが捕食者に見つかりにくい特徴や習性を持っており、その中でも代表的なのが周囲の景色に溶け込む「保護色」の体です。
昆虫などの小動物は、大抵が景色と同じ色をして周囲に溶け込んで見つかり難い体をしています。 中には気合いを入れて葉っぱそっくりに擬態するコノハムシなんてのもいますが、周囲と色を合わせるだけでも見つかりやすさは全く変わります。
これによって捕食者の目を欺き、食べられる確率を下げているのです。
あえて捕食者に己の存在を知らせる警告色
動物の中にはあえて己の存在を知らしめる目立った色をしているものがいます。 それも天敵に一飲みにされてしまいそうな小さなカエルやヘビなどに多いです。
実際捕食者から見てもこの色は目立ちます。 なぜわざわざ捕食者に自分の存在をアピールしているのかと言えば、「もしも俺を攻撃したら痛い目を見るぜ」と警告しているからです。 そこから「警告色」と言います。
警告色を持つ動物は、毒ヘビ、毒カエル、ハチ、毒虫、スカンクなどの強力な攻撃手段を持っているものが多いです。 しかし圧倒的強者という訳ではなく、捕食者とまともに戦えばむしろ負けてしまう危険が高いです。
しかし捕食者側も無傷で倒せる訳ではなく、嫌な思いをしたり、手痛い反撃を受けたり、場合によっては死んでしまうことすらあります。 だから捕食者が警告色の動物を見つけても、襲わずに避ける場合が多いです。
もし警告色の動物が目立たない色をしていたら、捕食者がそれと気づかずに襲って共倒れになってしまいます。 それを防ぐためにあえて目立つ警告色で分かりやすくアピールしている訳です。
捕食者に自分をアピールするという一見自殺行為にも見える進化をして、警告色の動物は生き残ってきました。 逆転の発想というか何というか、生命って面白いですね。
ミュラー擬態
警告色はある程度似通ったパターンの色をしている場合が多いです。 これは「ミュラー擬態」といって捕食者に分かりやすく覚えて貰うためのものです。
例えばハチは黄色と黒色のシマシマ模様をしていることが多いですが、そう統一されることで「黄色と黒色のシマシマ模様はヤバい!」と相手に直感的に知らせられるのです。 警告色がみんなバラバラだったら捕食者もいちいち覚えてられませんからね。
動物に興味を持っている人は「この色の動物はヤバそう」とか「毒持ってそう」とか何となく直感で分かりますよね。 こんな感じで捕食者に覚えて貰えるよう、警告色にはパターンがある場合が多いのです。
ベイツ型擬態
警告色の動物の中には、特にこれと言った能力を持っていないのにあえて毒々しい色をしている動物もいます。 これは「ベイツ型擬態」といって、他の警告色の動物の体色を真似ることで捕食者から逃れようとしているものです。
ハチの体色に似せたハナアブなどがベイツ型擬態の身近な例ですね。 ハナアブは見た目ハチのような体色をしていていますが、毒も針も持っておらず刺して攻撃することはありません。
ベイツ型擬態は「大した力もないのに目立つ奴」なので、捕食者にバレたら食べられ放題で大変なことになりそうです。 今日まで生き残ってるのはまだバレてないヤツなんでしょう。多分。