動物が認識できる色(色覚)は?

色を認識する目

動物が認識できる色である「色覚」が人間とは違うということをご存知でしょうか。 例えば犬は人間と比べて赤色を認識できないので「赤い布を持ってこい」といったコマンドは上手くできないとはよく聞く話です。

生物は進化の過程で繁栄に都合の良い能力は向上し、そうでもない能力はなくなっていきます。 各動物の色覚がどうなっているのかを、進化の過程と照らし合わせつつ見てみましょう。

色とは?

赤いリンゴ

我々人間が認識しているところの色とは、物体に当たって跳ね返った光のパターンです。 光には赤・青・緑の三色の可視光線があり、この三光線が物体に当たってどのように跳ね返ったかで色が決まります。

網膜にある「錐体」という細胞が、長波長の光を赤く・中波長の光を緑に・短波長の光を青く認識し、それらの組み合わせによって我々は色を認識しているのです。

例えば赤いリンゴに光が当たった場合、長波長の光は跳ね返されて中・短波長の光はリンゴに吸収されます。 そして跳ね返ってきた長波長の光を我々は赤いと感じて「赤いリンゴである」と認識できるのです。

これが黄色いミカンなら短波長の光が、紫のブドウなら長波長と短波長の光が跳ね返っています。 鏡のように全て跳ね返ってきたら白、吸収されて何も跳ね返ってこない・あるいは光自体がなければ黒です。

色とは「様々な波長の光が物体に当たってどのように反射しているか」であるかと言えます。 ただし認識できる光の波長の範囲は動物によって違います。

動物の色覚を進化と併せて見てみましょう。

動物の進化から見る色覚

カラフルな爬虫類

昔々のそのまた昔、およそ5億4千万年前に三葉虫が生命で初めて「眼」を獲得しました。 それから生物は様々な進化を遂げ、それに伴って色を認識する能力も変わっていきました。

生物は最初、四色色覚だった

全ての動物がまだ海中にいた頃、魚は進化の過程で色覚を得ました。 魚は視力はそれほどでもありませんが色覚はとても優れており、赤青緑の三色の他に紫外線を認識することも可能です。

魚は長い時間の中で進化を重ねて、中には陸上へと進出する動物も出てきました。 そこから派生した陸上動物も、古くは基本三色に加えて紫外線を認識できる四色色覚のものが多いです。 ご先祖様が魚だった時代に得た色覚をそのまま受け継いだ訳ですね。

しかし今日の動物は四色色覚が主流という訳ではありません。 進化の過程で不要な色覚がなくなっていったのです。

哺乳類は二色色覚になった

哺乳類は二色色覚のものが多いです。 これは哺乳類の共通の祖先が一度完全な夜行性となり、赤い光と紫外線を認識する必要がなくなったのが理由のようです。

霊長類以外の哺乳類は多くが二色色覚のままです。 イヌやネコは人間よりも色を認識する能力が弱いと言われていますが、これは霊長類を除く哺乳類全般に言えることです。

霊長類は三色色覚になった

哺乳類は進化を続けるうちに、夜行性から昼行性へと行動様式を変える種が出てきました。 その中でも最初に昼行性へと適応したと考えられているのが、我々の祖でもある「霊長類」つまりお猿さんですね。

霊長類は日中に活動するようになって、熟した実を判別する能力が生存に有利に働くようになりました。 熟した実はおいしく栄養満点ですが、未熟な実は不味いし栄養もありません。

そこで重要になったのが赤の色覚です。 我々が今「赤いりんご」と認識できるのは赤の色覚があるからで、もし無ければ「黄色いりんご」にしか見えません。

ある時たまたま赤の色覚を持って生まれた霊長類は、食べられる実とそうでない実を簡単に判別できました。 この能力は繁栄に有利に働き、三色色覚を持つ個体が繁栄し、逆に二色色覚の個体は淘汰されていきました。

そうして時代が下ると霊長類は赤の色覚を持った三色色覚がスタンダードとなった訳です。 ちなみに赤外線を認識できる四色色覚の人間も稀に産まれていますが、それほど生きていくのに役には立たないためか主流にはなっていませんね。

他の動物の色覚事情

鳥には四色色覚を持つ種が多いようです。 人間以上のカラフルな世界が見えていることでしょう。

他の生物はまちまちで、二色色覚だったり、四色色覚だったり、色覚を持たない種もいます。

もちろん三色色覚も沢山いますが、同じ三色色覚でも見えている色が人と同じとは限りません。 例えばミツバチは青~紫外線を認識できる三色色覚と考えられています。

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