働きバチは5~8時間しか働かず、人間の方がよっぽど働きバチ
日本のビジネスパーソンがやたらと長時間勤務をする様は、世界中から「働きバチ」だの「働きアリ」だのと揶揄されています。 ちなみにアリはハチ目の昆虫であり、ミツバチよりもアリの方がスズメバチに近いと言われるぐらい近縁です。
「22時前の帰宅は甘え」「上司がいると『終電だから』以外の理由で帰れない」「月曜朝一期限の1日仕事が金曜22時に振ってくる」など、人としての権利が侵害されているとしか思えない殺人スケジュールで働かされる事も少なくありません。これでは働きバチと揶揄されても仕方ありませんね。
しかしその働きバチ、実は1日に5~8時間しか働いていません。ふざけんな!
ハチの習性
ハチの巣には3種のハチが存在します。 巣の要であり頂点である「女王バチ(一匹)」、巣の運営を担う「働きバチ(たくさん)」、女王バチと交尾する「オスバチ(少数)」です。
ハチの巣は一匹の女王バチから始まり、最初は巣作り・エサ探し・産卵など全ての仕事を女王バチが担います。 実は女王バチは一匹でも産卵が可能で、未授精の卵からはオスバチが、受精卵からはメスバチが産まれるようになっています。
女王バチは最初オスバチを産み、交尾後には受精嚢と呼ばれる器官に精子を貯め込みます。 その後はオスメスの産み分けが可能になり、以降は主にメスバチを産んでオスバチは必要な時のみ少数産みます。
メスバチは1匹のみ次代の女王バチとなり、残りは全て働きバチとなります。 次代の女王バチとその他の違いは与えられるエサで、ローヤルゼリーと呼ばれる栄養価の高いエサを与えられた幼虫のみが女王バチとなります。 巣の中には「王台」という次代の女王バチを育てるための場所があり、そこに産み付けられた1匹のメスバチだけが女王として育てられるのです。
働きバチの1日
働きバチのお仕事は繁殖を除く全ての仕事です。 巣の掃除、幼虫や女王バチへの給餌や身の回りの世話、巣の外に出てのエサ集め、巣の拡張工事、巣に近づく敵へのけん制や攻撃など多岐にわたります。
働きバチは産まれてから少しずつ仕事を覚えて自分が出来ることを増やしていきます。 やがては何でもこなせる一人前となり、巣のために色々な仕事に臨機応変に取り組むバリバリの働きバチとなるのです。
しかしこの働きバチ、人間のように休む暇もなく働きまわっている訳ではありません。 また日が落ちたら巣に戻って休むため活動時間は5~8時間程度です。
ハチが一仕事終えて「次は何をしようかな」なんて考えている頃に人間は昼食を食べる間もなく忙殺され、日が沈んでハチがお休みモードに入った頃に人間は「やっと今日も折り返しか…」と終わらない仕事にため息をつくのです。
また働きバチの活動は天気にも左右され、風が吹いたり雨が降ったりしたら巣の外に出て活動なんてできず、曇ったぐらいでも活動時間はぐっと少なくなります。 対して人間は台風が来ようが地震で揺れようがそうそうお休みにはならず、雪が降れば朝礼で「トヨタでは雪が降ると社員は普段より早く出社するそうです。皆さんも有事の際には早期出社を心がけましょう。」なんて有難くもクソッタレな話を聞かされます。
「働きバチより俺たちの方が3倍は働きバチだよ…」とは同僚の言ですが、改めて働きバチを見てみると「お前たちのどこが働きバチだ!」って言いたくなりますね。 現代日本が羨むほどの好待遇と言っても過言ではないでしょう。
なおハチが越冬するのは女王バチ1匹のみで、働きバチとオスバチは秋~冬に活動を終えて冬を越さずに死んでしまいます。 また巣を運営する機能を果たせなくなった・不要になったハチは情け容赦なく巣から叩き出されて死んでしまいます。 ハチはこういった合理的で厳しい側面も持ち合わせているので、必ずしも人間より恵まれている訳ではありません。
しかし考えてみると人間も役職が付くのはごく一握りで残りはリストラされて切られたり、成績が悪ければ情け容赦なく詰められて会社から叩き出されたりします。 ビジネスパーソンはこういった合理的で厳しい競争に晒されているので、必ずしもハチより恵まれている訳ではないのかもしれません。